217話
「岐阜新聞です!藤川さんが、何やらすごい研究をしていると小耳に挟んだのですが、そちらに関してお聞かせ願えますでしょうか?」
え?僕が研究?
そんな大層な事してた覚えがないよ?
僕が困っていると、記者の方が続けてくれた。
「スキル発現の件です。もちろん、重要性の高いものだと思いますので、出来ればで構いません。」
あー!あれか!
「いえ、構いません。会見後にでも、フィッシャー大使に相談しようと思っていたところでした。
以前の発表で、スキルの習得はアットランダムだといわれていたのですが。自分のスキル習得状況を鑑みると、この見解に疑義が生まれてしまって。友人たちに協力していただいて、習得スキルに方向性を与える試みを行ってみたんです。もちろん、僕もスキル習得のためのお手伝いをさせていただきました。」
ふう。
あれ?まだ何かあった?
「あの・・・、それをドイツに、売ろうと?」
「いえいえ!そんな、売れるほどのものでもありませんし!僕はもう満足したので、スキルを習得したい人のために役立ててもらえればと思いまして。」
あれ?まだ騒ついてる?
『ご主人様、今の台詞で全て理解出来るのは、ミラくらい頭の回転の早い子だけなのです。』
そう?
僕にしては、分かりやすく無駄のない説明だったと思ったのになぁ・・・。
『説明不足なご主人様に代わり、ミューズが説明するのです!』
ミューズが机の上に立って、ふんぞりかえっている。
ドヤ顔が可愛い!!
『ご主人様は、すでに満足する結果が出たので、この研究は終了にして次に行きたい訳なのです!!でもせっかくの成果なのです!協力してくれたお友達のためにも、役立ててくれる所で使ってほしいと、そういう意味なのですよ!』
うちの子可愛い!超可愛い!!
わしゃわしゃと、ミューズの頭を撫でる。
「スキルの発現ですよ!?どの程度の進捗具合なんですか!途中で投げ出すのは無責任ではないですか!?」
『みゅ・・・、理解の遅い子がいたのです・・・。』
仕方ない、仕方ないよ。ミューズは悪くないからね。
残念そうな顔のミューズを、僕はしっかりと撫でてやる。
『投げ出してなどいないのですよ。当初は3ヶ月を目処に活動を開始したのです、だけど、参加者の全員が、すでにスキルを習得済みなのです。スキル習得率が110%に迫る勢いだったので、この研究はもう十分だと判断して、打ち切ったのですよ!!だけど、研究発表としては被験者の数が足りず、公式な発表は出来ないので、研究を引き継ぐ人材の紹介を含め、フィッシャー大使にご相談なのです!!これが世に出れば、協力してくれたお友達に、重要な研究に参加したんだという名誉が、お礼として届けられるのです!ご主人様は慎ましいのです!恥ずかしくて口に出来ないのですよ!!』
ストップ、ストップ!!
めっちゃ恥ずかしいから!?
それに、そこまで深くは考えてないからね!!?
終わったんだよって伝われば、それで良かったんだって!
僕は、ミューズを抱きしめて上気した顔を隠す。
会場は騒然となってしまった、無理もない。
幸太による、情報の飽和攻撃を受ければ、大抵はこんなもんだろう。
「遥はこの事、知っていたか?」
「ん〜、知らなかったと思うよ。」
会見中だというのに、私は思わず隣に座っている遥に質問してしまった。
「そんな事はないだろう?クラスのLINEに載っていたぞ?」
「あー!安田くんや武藤くんのあれは、そういう意味だったのか!?スキル習得の喜びの声だと思っていたよ!」
「そうだな、後はコウタすげぇってコメントが多過ぎるからな。」
お前らのクラスは、一体どうなってるんだ!?
「仲の良いクラスなのですね。」
ソフィアはいつもどおりだな。
「それに、コータさんは普通に口にしていましたよ?」
「いつだ?」
「明日は菊池さんたちのスキル習得をお手伝いしに行って来る〜って、そんな感じで、エミリアに浮気疑惑を持たれないように、普段から色々と気を遣っておられましたよ。」
いかん、そのセリフには覚えがある。
・・・レベル上げを手伝って来るとか、ダンジョンに遊びに行って来るの、別バージョンのセリフだと思っていたよ・・・。
まさか、そのまんまな意味だったとは・・・。
幸太は隠してすらいないのに、気づかなかった!!
「あっ!今野さんそろそろ時間ですよね!!」
幸太は、やり切った笑顔で会場を後にした。
今回もやってくれたなぁ、幸太ぁぁぁぁぁ!!?
幸太くんが、なんとなく検証している情報による、飽和攻撃でした。
現実では、研究機関が色々とリードしているのでしょうね。
でも、それではお話として面白くないので、幸太くんによる検証がなされた事にしました!
さすがに、ミューズちゃんを愛でながら、なんとなくスキルの検証とかする幸太くんでは、お話に出来ないので、こんな形になりました。
ほのぼのとし過ぎだからね!




