213話
ミラさん視点です!
ふと思うと、遠くまで来たものだと感じてしまう。
父の仕事の都合で、極東の島国までやって来た。
その事に不満などはない。
むしろ、世界的な懸念材料であり、経済的に注目の的でもあるダンジョン、そんな重要な案件に携わる仕事を国から任された父を、誇りに思っている。
その仕事を、ささやかながら手伝えるのは喜びだ。
そのダンジョンを知る事、それにストレス発散を兼ねて潜っていたのが、事の始まりだった。
まずダンジョンを知る事、そして探索時の問題点を洗い出し解決する事を考えていた。
実物を知らねば、良い補助は出来ない、助言なんて以ての外だ。
だから、すでに軍の人たちがやっているだろうと思いながらも、ダンジョンを見に行ったんだ。父もそうしていたから、特に迷いもなかった。
そこで始めて見たものは、聞いていた通りの未知と、感じていなかった重圧感だった。
ここで知れたものは大きかった、これを知らずして、軍人たちとその家族の不安に寄り添う事は出来なかった。ただ無責任に大丈夫を連呼しても、不審を深めるだけだっただろう。あの不気味な灰色の境界線、悪意の塊の様なゴブリンの醜悪な顔、天候も気温も明るさすら変化しない環境。知って、共感出来なければ、私の言葉は上滑りをして、何の意味もなさなかっただろう。
彼らは、それら全てを乗り越えて先に進んだんだ。そんな理解があるからこそ、私の言葉は、ちゃんと皆に届いた。アデレードの件も、そんな仕事の1つだった。
夫の帰還を待つ間の不安に耳を傾け、ダンジョンの近くに住むことの不満に寄り添って来た。
ダンジョン内の旦那に手紙をコッソリ届けてやったり、重症者などが出ていないか聞いて、ご家族に話してやったり、私なりに、ダンジョンに潜っては、出来る事をして来たつもりだ。
国の面子も分からなくもないが、本国の政治家共の無茶な要求に、軍の高官が無理をして応えていて。現場の悲鳴が届いていなかった。
だから、早晩破綻するのは目に見えていた。
不謹慎だが、自衛隊のストライキは、現状を把握し見直すのには良い機会になった。
元から、無理をさせるなと本国に伝えていたお父様は、ここぞとばかりに、無理をさせた政治屋共と高官共を叩き、失脚させて、野党を敵に回してしまった。
今でこそお父様は、首相との繋がりを持てて安泰の立場だが、あの頃は危なかった。
失脚した大使に働きかけたのも、野党の連中だろう。
ストライキの後は、ダンジョンの配信と探索に集中出来た。
まあ大方、幸太に振り回されていただけだとも言うけどな!
それでも、充実した毎日を送っていて、楽しかった。
これから記者会見の場に向かうというのに、私は今日までのせわしない時間を思い返していた。
回想というんでしょうか?
誰かに、激動の時間を振り返らせたかったので、色々と活躍してるミラさんを選びました。
記者会見の前の、一瞬の間、ふと振り返るそんな瞬間を切り取ってみました。
書いてみると、彼女の意識の高さに驚かされます。
設定はそうだけど、自分の高校の頃とか・・・。比べたくないですね〜。




