表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
211/455

210話

 僕は、フィッシャー大使と握手をして、やっとの思いで席を勧めた。


 何故か同席しているルカ情報官、それに今紹介された日本の情報官とオランダの情報官、はっきり言って名前すら頭に入って来ない。


「彼らも情報が欲しくてね。沢山あるようなら、折半して支払う事も念頭に入れてるよ。何しろ、支払われるのは国の税金なのでね、お互いに安く済ませたいのさ!」


 情報は共有とはいっても、完全に共有出来るはずもなかった訳だ。

 それを、情報料を節約する為とはいえ、協力体制を敷いてみせるとは、お友達大国ドイツの面目躍如ですね。


「映像を垂れ流してしまったので、どこまで売れる情報があるか分かりませんが、それでよろしければお話ししましょう。」


「君は、どこまでも奥ゆかしいね!」


 いや、本当に!

 スキルやステータスの話は論外だし、そうすると、アイテムの情報くらいしか思いつかないんだけど。



 大使がキリッと表情を引き締めた。


「これは・・・、ここに居る皆が、いや、きっと全ての人が気にしてる事だと思うんだが。『眷属召喚けんぞくしょうかん』とは、何かな?答えてもらえるだろうか?」


 思わずミューズと目を合わせたけど、特に隠す理由も思いつかなかった。


「『眷属召喚けんぞくしょうかん』は、見たまんまですよ?一部のモンスターが使ってくる技で、いや、魔法かな?どっちでも一緒か・・・。取り巻きを創り出す、スキルの事ですね。」


「・・・取り巻きを創り出す・・・スキル。」


 何だか、みんなザワザワとし出した。

 考え込む人や、近くの人と囁き合う人、多くの人は困惑している様な感じだ。


 変な気分だ。

 ゲーマーには常識なのに・・・、こんな事を真面目に説明する日が来るなんて。


 ・・・迷うところだけど、正直に言おう。


「この、眷属けんぞくなのですが、あまりにもアイテムのドロップ率が高過ぎます。何か依代よりしろとなる物が必要なのではないか、と推測されます。」


 まあ、推測じゃなくて事実だけどね!僕が使えるから!

 そんなことは、絶対に話さないけどね!


 ザワザワと騒めきが大きくなってる。

 だけど、気にせずに続けます。だって、僕ら疲れてるんだよ。


「今回の探索で言えば、『金棒』と『小烏丸こがらすまる』がそれにあたるのではないかと、僕は考えています。まあ、ただの憶測ですけどね。」


 こっちは本当に憶測だ。戦鬼が落とした『金棒』はほぼ決まりだけど、カラスの大量虐殺現場から出て来た『小烏丸こがらすまる』は、八咫烏やたがらすなんて見た事のない個体の近くに落ちていたという、現場証拠だけが根拠となっている曖昧なものだ。

 あの場で、カラスの種類を見分ける事なんて出来なかったからね!

 八咫烏やたがらすの存在に気づいただけでも、僕は良くやったと思うんだ。


「取り巻きが落とす!『羅シャツ』の原理が働いてる訳だね!?そうか!だから他のホブゴブリンは落とさないんだ!!また1つ、謎が明らかになったね!」


「ルカ情報官・・・、まだ推測の域を出ませんよ。・・・それより、その話はここでしてしまって良かったのですか?もう伝えたというのなら、僕もそのつもりで話しますけど。」


「ああぁぁぁ!!?」


「ルカ・・・。」


 ルカ情報官が悲鳴をあげ、大使にたしなめられてる。

 どうやら、未だ共有してない情報を漏らしたみたいだ・・・。この人が情報官で、ドイツは大丈夫なのかな?


「・・・続けますね。この原理が確かならば、宝箱が消える理由も分かりますよね。」


『宝箱の中身が依代よりしろなのですか!?』


「ミューズ・・・。まあ、うん、そういう事だね。」


 まさか、ミューズが1番に反応するとは思わなかった。

 憶測とはいえ、最近頭脳ではめっきり敵わなくなったミューズを驚かす事が出来て、僕は嬉しい。


 パーティーのみんなも驚いていて、部屋中が騒がしくなってしまった。


 まだ、もう1個続けたいんだけど・・・。これじゃあ、叫ばないときこえないよ。

 ミラに助けを求めようにも、ミューズと激しい議論の真っ最中だ。


 手でも叩こうか?

 そんな事をボーッと考えていたら、周りが急に静まり返ったので、訝しくは思ったけど、僕は気にせずに続ける事にした。


「そうすると、ダンジョンにとって宝箱とは、罠攻撃をするモンスターだって扱いになると思うんだ。」


 幾つか、不思議そうな顔が浮かんでる。

 どうやら、話の繋がりが見えていない様だ。


「宝箱はモンスターだから、当然スキルを使用する。これが宝箱の発見に、著しく偏りが出る事の原因だと思うんです。」


『みゅ?』


「そうか!?宝箱は己の存在を隠しているんだな幸太!!?」


「正解だよミラ。といっても、何か証明する手段がないと、仮説止まりだけどね。」


 これもまず間違いない、僕が使えるからね。

『認識阻害』って言うんだ、武技なのか魔法なのかはサッパリ分からない。ただ身動きを止めている間だけ、発動出来るんだ。

 ミューズには効かないけどね。そのせいで、効果の確認には時間がかかった。

 そして当然、これも教えるつもりはない!


『これが、幸太が宝箱を見つけまくってる理由なのです?』


「それは違うよミューズ。思い出してみて?確かに僕は、宝箱に近づいているのかもしれない。だけど、宝箱自体を見つけてるのは、圧倒的にミューズの方が多かったでしょう?」


『みゅ?そうだったのです?』


「うん。きっと、宝箱の『認識阻害』はミューズには通用しないんだ。だから、僕が稼げてるのは、ミューズのおかげだよ。」


『みゅ〜〜〜〜〜〜〜っ!!そんな事言われると照れるのです!照れるのですよ!!』


 ちっちゃな身体をクネクネさせて、ミューズが照れてる。

 メッチャ可愛い!!うちの子、超可愛い!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
他の方のコメントで気づく 宝箱に座るのは伏線だったのか… 看破できる相手に見合うレベルの罠が仕掛けられてそうですね… 偶然見つけた宝箱にも
こんばんは。 宝箱もモンスター枠、且つ隠れ身を実施している…面白いですね。まぁ隠れられる人間側からしたら迷惑極まりないですが(笑) しかし隠れたトレジャーですか……色んなゲームにそういう要素有ります…
だから気付かず宝箱に座るなんてことがあるんですね。 面白かったです。応援してます。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ