207話
ダンジョンから帰って来たのを迎えてくれるのは嬉しいんだけど・・・、野次馬がすご過ぎてなかなか進まない!
急遽、僕らはギルドの会議室に通される事になってしまった。
というのも、ギルドの中にまで一般の人たちが溢れていたからだ。まあ、探索者も一応一般市民だし、一緒になって騒いでたからね。
だからギルドは、僕らを隔離して騒ぎの鎮静化を図った訳だ。
扉をくぐる際に、ミラが何か言ってやれと言うので、ふざけてしまった・・・。
「今回の稼ぎに乞うご期待下さい!ダンジョンドリームを見せてやる!!」
まあ、実際僕らダンジョンで結構儲けてるしね、問題ないよね?
だけど、地鳴りの様な返事が返って来たのには驚いた。
探索者たちの叫びに、建物が揺れてたね!
「・・・あんな感じで、良かったの?」
『やり過ぎなのですよ。これは、鎮静化にしばらく時間がかかりそうなのです・・・。』
「お前・・・、本当にねらってやってないのか?まあ、広告の効果を上げるには、最高のパフォーマンスだったと言っておこうか。」
・・・どうも、「ありがとーう!」くらいでよかったらしい・・・。
分かんないって、そんな塩梅・・・。こっちは一般人なんだから。
「幸太は才能あるよ。でも、お叱りも・・・、受けるかもね。」
「その辺、日本は謎だよな?広告の依頼を出したんだし、目立つのは価値を高める効果が期待できるのにな。費用対効果が高ければ、大儲けだろうに。」
日本って、そういう所あるよね・・・。
オリンピックに出る選手が、空港で派手な格好をしていただけでバッシングしたりね。応援する気がないなら、見なきゃ良いのにね。
別室に通されるだけ通されて、なかなか職員さんが入って来ない。
仕方なく、僕らはアイテムの鑑定をしながらすごした。
ちっちゃなルーペの様な外見の鑑定アイテムなので、みんなで回しながら鑑定して行く。
「え?私からで良いの?私は最後でも構わないわよ?」
『最後は幸太なのです!1番リアクションが望めません!!まずはセクシーアデレードからなのです!』
「なるほど!撮るんだね!?」
「やるなミューズ・・・。ただ、配信出来るかは分からんぞ?」
『分かってるのです!でも、撮り貯めておけば、後日流せる可能性もあるのですよ?』
なんだこいつら・・・?
遥やミラだって疲れてるはずなのに、すでに次の配信に向けて動き出してる。
逞ましいなぁ・・・。
アデレード先輩の胸の谷間から、ルーペが出て来るところから撮り始めた・・・。
胸の揺れで、先輩の驚き具合が分かりそうな凄いリアクションに、僕は思わず目が泳いでしまった。先輩は、声を上げずに驚きを表すから、余計にそっちに目がいっちゃうんだよ!・・・たぶん。
遥君とソフィアは、声と同時に身体が動くタイプだ。
遥君は声を押さえようとするし、ソフィアは声には驚きが表れ難い。
やっぱり本命は、ミラとエミリアだった。
リアクションでかっ!?
エミリアが、装備の性能まで口走りそうになって、みんなで慌てて止めた。
「ふ〜む・・・、どうしようか。・・・なるほどね〜、なかなか良いね!」
「え?幸太それだけ!?」
「え?え?え?」
僕にしては、頑張ってリアクションしたつもりなのに、遥君が言ってくる。
他に・・・、どうしろと?
「ミューズ、あれはどうなってるんだ?」
『幸太は、あんまり驚きを表さない性格なのですよ。ミューズがレトルトカレーと一緒に温まってても、表情ひとつ変えずに、水につっこむくらいなのです!』
「っぇ!!?むしろお前が驚ろかし過ぎだろ!?」
さすがはミラだ、ナイスつっこみ!
僕も、あの時は心臓が止まるかと思った・・・。
もちろんミューズには火傷ひとつない、むしろ水道水をジャバジャバ貰ってご満悦だった。水精は強いというのを、改めて思い知った瞬間だった。
「じゃあ、今のうちに、誰が装備するか。それと、どの情報を売り払うか決めておこうか。」
「なんで、こいつこんなに冷静なんだ?納得がいかない・・・。」
ミラが、僕を見て愚痴っている・・・。
おかしいなぁ?僕も、新しい装備にワクワクドキドキしてるんだけど、上手く伝わらないのかな?
『羅刹の剣』『鬼のパンツ』『金棒』×2『小烏丸』『邪眼のマスク』『黄金の腕輪』『ポーション』その他ドロップアイテム。
『黄金の腕輪』と『ポーション』は、7階層の宝箱から出た物だ。
今回開けたのは、アデレード先輩と遥君だ。遥君の出した『ポーション』の方が値段は高いけど、腕輪は防御力があるから、パーティーとしてはこちらの方が嬉しい。
割れずに出て来たポーションに、僕とミューズは感動を隠せなかった。
何しろ、僕は3回ブラストさせてるからね!今のところ、僕のポーションブラスト率は100%だ!
『羅刹の剣』と『鬼のパンツ』は羅刹のドロップアイテムだ。『金棒』は、お供の赤鬼こと戦鬼が出した。『小烏丸』はハッキリとは分からない、何しろ、あのカラスの羽根に、埋もれる様に落ちていたらしいからね。そして最後のひとつ、『邪眼のマスク』は八咫烏のドロップアイテムになる。
「・・・さて、どうしようか?」




