200話
目だけ出した完全武装の自衛隊員の方たちが来て、直ぐに設置してくれると請け負ってくれた。
実際、5分も要らないらしい。
せっかく丁寧な説明をしてくれているのに、僕は生返事を繰り返してしまった。だって、この明らかにブシドーの人たちの中に、見知った動きをする人が居たんだ!
あの歩行姿勢は絶対、都築さんだ!!
おかげで、僕の中を変な緊張がよぎる。
『どうしたのです?』
僕は、ピンマイクに音が入らないようにしてコソッと答える。
(「お姉さんがいる。」)
『お姉さん?舞がいるのですか!?』
(「ミューズ!声が大きい!」)
ミューズの発言に、説明してくれていたブシドーの人が、目を見張った。この人がお姉さんに視線を向けたのはほんの一瞬だった、自制心の賜物だろう。大したものです。
僕なんて、驚き過ぎてお姉さんをガン見しちゃったからね!!
『幸太、みんなお揃いの真っ黒けっけな装備なのですよ?体格すらもろくに確認出来ないのです。本当に舞なのですか?』
「間違いないって!あんな綺麗な歩法して、『鬼』なんてめじゃない殺る気を漲らしてるのなんて、お姉さんくらいだから!!」
『もはや幸太のそれは、特殊能力なのです・・・。』
目の前のブシドーの人ですら頷いている。
ミューズに呆れられた!?
僕が、服の下の動きまで模倣するために、必死に磨いた洞察力なのに!
おかげで僕には、ここまで来てくれた自衛隊員の皆さんの顔が分かってしまう。
名前まで出て来ないのは、記憶力の問題だ!
それにしても、5階層の手前にいた草加さんが、こんな所まで来てるところをみると、それだけ中継機器を守るのも楽じゃないんだって事だろう。
不意の事に動揺した心をなんとか落ち着かせ、僕らは8階層への階段を降りていく。
階段で整列して敬礼してくれる自衛隊の皆さんに、返礼を返しながら歩いていく。
その姿は、配信映像としてはありがたいんだけど、良いのかなぁ〜と思ってしまう、僕がいる。
僕らは偉いわけでもないのに返礼してるとか、配信としてはおいしい絵だから、自衛隊による贔屓だって言って叩かれたりしないか心配なんだ。
この辺、僕は相変わらず小心者だよね。
そして、8階層に降りた直後、僕らは襲撃を受けた。
「散開!!」
襲って来たのは、『黒い鬼』だった。




