20話
『○銀2号店〜姉妹店〜』は二郎系ラーメンで有名なお店だ。
二郎系ラーメンって言ったら、汁無しなのは当たり前だと思うんだけど、相手の知識頼みにして、誤解を生む事を良しとしなかったのか。いつからか汁無しの文字が記載されるようになった。
汁無し二郎、又は汁無し二郎系ラーメンってな感じで、一目見て、どんな物が出て来るか想像出来て、誤解を招く恐れが減った。
これでラーメンにスープが入って無いって言う奴がいたら、そいつはラーメン屋よりも、頭の病院に行った方がいい。
だけど、一部で『混ぜそば』なんて名称で売り出してる奴らも出て来て、ラーメン業界の闇と熾烈さを仄かに感じる昨今だ。
細かくは何か定義付けがあるのかもしれないけど、あまりにも似過ぎている。
僕はあくまでも『二郎系ラーメン』と呼びたい。
でも『汁無し』の一文字は、ありの方向でお願いします。だって分かりやすいんだもん。
そして、ついに僕らの前にラーメンがやって来た。
見よ、この存在を主張してやまないチャーシュー!
豚バラ肉が板こんにゃく並のぶ厚さで、ドカッと3枚も乗せてある。
それから、うどんかと見紛うほどに太い麺!
普通のラーメンの麺と比べると、一玉のグラム数が全然違う!!
そして、なんといっても中央を飾るニンニクだ・・・!
増し増しにした刻みニンニクが、ピラミッドを築いているかのようだ!!
全てが素晴らしい、パーフェクトだ!
僕は当初の目的を見失いかけたけど、なんとか理性を保った。
念のため、彼女たち3人にはよく混ぜて食べるように伝えておいた。
「よく混ぜて、よく混ぜて食べる。オーケー?」
大事なことなので、2度言いましたよ。
ちびっこミラさんは、このラーメンを見て、なぜか大爆笑してるし。エミリアさんは鬼気迫る表情で、混ぜまくってる。
間に挟まれた席なのに、ソフィアさんは平然として食べ始めた。
2人のこの反応には慣れっこなのかな?
ミラさんは食べ始めたら、外国人らしいオーバーなリアクションの嵐だし。エミリアさんはなぜか恍惚とした表情で食べ進めている。
美味しいのは確かなんだけど、表現の仕方が・・・。
「コータ、どうやったらゴブリンをあんなに見事に倒せるの?」
「ああ、・・・まずは、ナイフの差かな?」
すごいなソフィアさんは、僕との間に居るエミリアさんが、こんな姿で食ってるのに、気にも留めずに会話をしてくるなんて。
ラーメンを食べてるだけなのに、なんでそんなに幸せそうなの?
向こうではミラさんが、度々ラーメンを混ぜて楽しそうだし、意味が分からないよ・・・。
「ナイフに差なんてあるの?」
「うん、僕もちょっと懐疑的だったんだけどね。地上で作られたナイフと、ダンジョンから手に入れたナイフとでは、明確な差があるよ。」
「ふ〜ん・・・。」
ソフィアさんもこの話には、やっぱり懐疑的だ。
まあ、普通はそうだよね。
同じナイフなんだし。
でもその2つは違うんだ、その事を今の僕は知っている。
だけど、どうしたらソフィアさんに伝わるのか、僕には分からない。
「後はあれかな・・・、海兵隊式格闘術とか、ナイフの使い方を動画とかで見て学ぶ事かな。」
「あー!そうだよね、そういう動画って今は結構あるもんね。」
僕としては、ナイフ本体の違いの方が大きいと思うんだけど、ソフィアさんには、動きや技の方が説得力があったみたいだ。
こればっかりは、使ってみないと分からないからね。
さっきから、ラーメンに夢中で、全く会話に入って来ない2人には。各種調味料で、味変する技を伝授しておいた。
これでまた、当分ソフィアさんと2人きりの会話になるだろう。
潜伏する事や、足音の消し方、足跡の追いかけかたなど、僕の経験から手に入れた知識を、僭越ながらも披露した。
後は、憶測で申し訳ないのだけど、せっかく3人いるのだから、上手く連携出来るといいよねって話をさせていただきました。
ずっとソロでやってきた僕が言っても、全くもって説得力がないよね。
感動してほしい、驚いてほしい。
美味しい物に出会えた時って、幸せですよね。
私はそう思います。




