198話
はい、ミラさん出番です♪
「・・・この先に、8階層への階段を見つけたんだ。」
幸太の発した言葉に、私たちは驚愕を隠せない。
アデレードは両手で口元を押さえているが、エミリアや遥は大口を開いて驚いている。せめて淑女として、私は口元を閉じる事に成功した。
『さすが幸太なのです・・・。』
ミューズのつぶやきには、そこはかとない呆れで満ち溢れていた・・・。
幾百万の言葉から、やっとの思いで絞りだしたのが、この言葉だったのだろう。沢山の思いがこもったこの言葉は、私たちの心中を余す事なく表していた・・・。
「僅かな時間だけでいい、8階層を撮影して帰ろう。」
今日、何度目だろうか?
心の底から湧き上がる恐怖を感じて、私たちは震え上がった。
カラスの群れも、アデレードさえも、比較にならないほどの脅威。
それは、人畜無害そうに目の前で笑顔を見せる、この怪物だ・・・。
私は、死を意識して、配信しておく事を提案した。
せめて、行方不明ではなくて、世界の頂に挑んで戻れなかったという。足跡を残したかった・・・。
配信すると、日本の自衛隊が、予備の中継機器をまわしてくれるという。
そこから先は・・・、記憶も曖昧だ。
8階層に入り、緑の鬼を超えるモンスターと死闘を繰り広げ・・・。
気づいたら、5階層で空を見上げ、崩れ落ちる様にして転がっていた。
僕はミラの要請に応えて、生での配信をし、これから8階層に潜る事を告げると、ギルドから待ったがかかったんだ。
直ぐに予備の中継機器をよこすので、待ってほしいというのだ。
撮った映像は、後日配信すると言ったのに、ギルド・・・、いや、国かな?何にしろ今回の企画の関係者は、今、生で配信する事に価値があると判断した様だ。
こっちの負担も考えずに、7階層で待てって、ふざけた事を言って来た。
当然リーダーとして、パーティーメンバーの安全を考え、1度は断った僕だけど。自衛隊員の到着を待とうと言う、ミラや遥君の提案を受け入れた。
到着を待つ時間、どれだけMPの消耗を抑える事が出来るかが、問題だった。
僕は、皆んなを護るため、手札を1つ切る事を決断した。腰から普段は使わない『草薙剣』を抜き放つ・・・。