190話
休憩のたびに、幸太がこの後の予定と休憩時間を宣言する。
これは、配信を意識して、私たちの予定や注意事項を視聴者に聞かせるように、私から幸太へ要請した事だ、その事を覚えていて、幸太は実行してくれているらしい。
休憩時間には、パーティーの皆んなで集まって、水分補給をしたりオヤツを少し摘んだりしてすごす。
そんな時でも、幸太の眼から紅い光が消える事はない・・・。
少し私たちの配信を見た事のある者なら、あの眼が辺りを見渡し、見張る力を持っている事を知っている事だろう。
ライブでの配信を止めている、この時間ですら幸太には油断など微塵も見られない。
ダンジョンに入ってからほとんど戦闘はないが、それでも真剣にパーティーの疲労度や水など物資の確認をする、その姿が視聴者にどんな影響を与えるのか、今から楽しみでしょうがない。
ライブで配信していないからといって、私は撮影を止めた訳ではない。ライブでの配信を見逃した人用に、使える限り休憩中の映像も編集して配信する予定だ!
特に、今日は戦闘によって立ち止まる事がない。その事によって、普段とは違う疲れが溜まっていないか、その事を幸太は懸念してるようだった。
実際、後衛の私やアデレードは長距離走り続ける事が普段はないため、足への負担がそうとう溜まって来ていた。その為、足をマッサージしたり、動き出しに歩く時間を設けて、配慮してくれた。
さすがに、『回復魔法』を試してみるかという幸太の申し出は、アデレードと2人して断った。ダンジョン内で、MPをそんな事に浪費するのは憚られた。
これ・・・、やばくない?
僕の立てたスケジュールは、ここまでの工程で1時間近く短縮されてしまっている。
主な要因は、探索者が今日に限ってやたら僕らの行く先々にいる事だろう。
常日頃から企画の説明や、探索スケジュールを伝えるようにパーティーから言われていた身としては、完全なるスケジュールの破綻は、リーダーとしての資質を問われる事態だと思うんだ・・・。
リーダーという立場に未練はこれっぽっちもないけど、パーティーから追い出されるのは、是が非でも避けたい!
だから僕は、休憩時間を返上するつもりで思考を巡らす。
コソッとミューズに助言を求める事すら厭わない!だけど、こんな時に限ってミューズは肩の力を抜けとか、当たり前の事しか言わない!
ミューズ!見捨てないで、助けてよ!?
いつもと違う所を意識して皆んなに質問し、その返答に合わせて、わずかながら時間の修正に成功するも、まさに悪足搔きという程度だった・・・。
僕、大丈夫だろうか・・・。
全く見当違いの事を考えてる幸太君でした♪