189話
前半は幸太君、後半はミラさんでお送りします。
これまで1話毎に変えるのが限界で、途中で変えるって事が出来ませんでした。
その事における効果というものを、少しでも出せるといいなぁと思っております。
僕は、ただ7階層を目指して走り出した。
目的の階層まで走って移動するのは、うちのパーティーの基本的な行動だ。
だから、いつもどおりのはずなのに・・・、僕らの進行方向にモンスターの影は一切見られず、事前に僕が想定したスケジュールが破綻しそうなほど順調だった・・・。
きゅ、休憩時間を伸ばして時間を潰さないと・・・、半日で終わっちゃいそうぅ・・・。
自分の計画の杜撰さに泣きそうだ・・・。
いつものダンジョン探索を参考にして、計画を立てたはずなのにぃぃぃ・・・!?
何で今日に限って、行く先々に探索者がいて、最短距離を踏破して行く僕らの前には1匹のモンスターも残ってないのぉーー!!?
僕は、最低限の礼儀として、見かけた探索者たちに手を上げて挨拶をして通り過ぎる。
ダンジョンに入り、走り始めた幸太の前には王道が敷かれていた・・・。
私は、その後ろ姿を過負荷なく追い続けられた自分を褒めてやりたい。
『ダンジョン・フィル・ハーモニー』が・・・、いや、幸太がこの時間に、この道を行く事を知った探索者たちによる、無言のエールなのだろう!!
次の階層までの最短ルートには、多くの探索者たちが居て、私たちはその脇を無傷のまま通り過ぎて行った。
これが『神憑り』!!これがカリスマ!これが藤川 幸太なのかと、もはや私たちは戦慄を隠せないありさまだった・・・。
彼らの期待、希望、羨望、それらの眼差しに対して、奴はスッと手を上げ応えてみせる。その姿は私には眩しくて、眼が眩むほどだった・・・。
今回の探索が、どれだけ世界に衝撃を与えるものなのか、その事を皆が察して、協力してくれているのだろう。
何事も自己責任と言われる探索者の世界で、賞賛され、協力を得られ、これ程の人たちから敬意を集める事の出来る存在を、私は他に知らない。
これも、幸太がこれまで苦労して得てきた知識を、惜しみなく与えて来た結果なのだろう・・・。
私は、溢れそうになる涙を必死に堪え、彼らに応えて礼を返す。
途中でドイツの軍人を見かけた、その装備や見知った顔がある事からも、間違いはない。オランダの軍人たちはちょっと遠い所からの援護だった、だがその敬礼する姿には、もはや国の垣根などいささかも感じない、敬意が篭っている。
階層を跨ぐ階段では、中継機器を守る日本の自衛官たちが敬礼をして見送ってくれる。
ここには、国境もなく、人種の壁もなく、言葉の壁さえもない・・・。
皆がダンジョンに挑み、その脅威を知り、そして抗い、未知に挑み続ける。モンスターであるミューズでさえも知らぬ、その高みを目指して走り続ける・・・、仲間なのだ。
これはもはや国家事業ではない、ダンジョンに挑む世界の探索者たちをリードする・・・、世界事業なんだ!!
幸太君とミラさんの温度差が酷くて、風邪をひきそうです!
本当にこれで良かったのか、さっぱり分かりません。勉強不足ですね。
これにめげずに、今後も思いついたら挑戦してみます。