19話
外国人女性をラーメン屋に案内する自分。
それも3人も、しかも皆さん結構な美人さん!
なんだか、自分がすごく滑稽な人間に思えるんですが、これって気のせいですか?
発券機に、日本の電子マネー『yen』が使えるかお店の人に聞いて、発券する。
良く考えたら、僕ってギルドの売買マネーの『yen』しか持ってなかった。
ギルドで売買しても、現金が手元に入る事はないという事実に、今更になって気づいた。
生活費は、親が口座に振り込んでくれているけど。現金なんてダンジョンに持っていく物じゃないし、クレジットカードはいまだに18才からだ。
まだまだ社会のルールと、今の生活に慣れていない事を痛感する出来事だった。
『○銀2号店〜姉妹店〜』はダンジョンに近いせいか、ちゃんと『yen』が使えるお店だからよかったものの、まだまだ浸透してない電子マネーの使用は、使用出来ないお店も多くて焦る。
冷や汗をたっぷりかきました。
・・・まだ始まったばかりだった。
よく考えたら、ラーメン屋って男の園だよね、しかも二郎系ってそれに輪をかけて男性率が高いよね、メチャメチャガッツリ系だからね!
それなのに、その中でも近所で有数のガッツリ店を僕は推してしまった。
『麺屋しず○』なら、もう少し大衆向けのお店なのに!?
僕のバカぁ・・・。
案の定、周りのお客さんはみんな男性だった。
こちらは3人も女性を連れている、しかもかなりの美人さんがご一緒している。
彼女たち3人以外は、店員さんも含めて男性100%の店内です・・・。
気のせいだと思いたい。
周りのお客さんの視線が、突き刺さるように痛い・・・。
新たなお客さんが、お店に入って来る度に驚いてこっちを見るんだ。そして、僕が彼女たちの連れだと分かると、殺人光線の如く視線を突き刺してくるんだ。
僅かな時間で、僕は100万回呪われたんじゃないだろうか。
「こだわりは如何致しますか?」
「濃いめ、ニンニク増し増しで。チャーシューって炙ってもらえますか?」
「出来ますよ。」
「じゃあ、炙りでお願いします。」
僕は謎の緊張感に負けて、素で答えてしまった。
女性と一緒に来店しておいて、ニンニク増し増しって・・・。
「コウタ!これはどうすれば良いの!?」
ええ!?エミリア他のラーメン屋でも聞かれるよね!?
自分の好みで・・・、もしかしたら、他店では聞かれなかったのかもしれない。
日本人にとっては普通だけど、外国人には言葉が通じないって困る事も多いもんね。
「味付けの濃い薄いと普通が選べるんだ、後は麺の固さと、ニンニクの量だね。エミリアはこのお店初めてだよね。だったら、お店のスタンダードな味付けから試してみたらどうかな?」
すごい勢いで聞いてくるエミリアに、僕はなんとか答えた。
「最後に言ってた炙りってのは、あのチャーシューを焼くって事だな!?」
「うん、そうだよ。まあ、好みだけどね。」
「う〜ん・・・。」
すごい絵面だ、モデルばりのスタイルの美人が、ラーメンのオーダーで必死になって悩んでる。
エミリアがフッと顔を上げた。
決心がついたようだ。
こんな姿まで無駄に美しい。
ラーメンのオーダーで、決心って何だよとか、僕はセルフツッコミに忙しい。
「スタンダードで!」
「かしこまりました!!」
店員の反応も心なし元気だ。
僕の時よりも、嬉しそうな大きな声が出ている。
被害妄想だろうか?
「じゃあ、私もスタンダードで。」
「はい!ありがとうございます!!」
ソフィアのオーダーを取った後の返事は、明らかに僕の時と違っただろ!!
「濃いめ、ニンニクましまし、炙りで。」
「ありがとうございます!」
意外な事に、ミラさんが僕と同じオーダーをした。
僕とは比べるまでもないけど、彼女は3人の中でも賢そうだから、何か意味があるのかもしれない。
「ところで幸太さん。」
「何ですか?」
「ニンニクは分かるんですけど、『ましまし』って何ですか?」
・・・。
翻訳機に仕事しろって言うべきか、分かんないのに頼んだのかよってツッコムべきか悩むところだ。
ラーメンは日本の文化!
外国人を出すならこれに触れない訳にはいかない!!




