188話
困ってなくても、ミラさん視点!
この日ために、ここ数日無理をしてまでダンジョンに入ってLvを上げて来た。
近づくどころか、さらに離された幸太とのLv差を埋めるために!
連日、霧の6階層まで行って、視界の利かない恐怖に怯えながらもやってきた。
のほほんとしている、幸太とミューズを何度吹っ飛ばしてやりたいと思った事か分からない!だって、あいつら6階層に着いても、自宅に帰って来たかの様に落ち着いてるんだ!
こっちは、魔境に足を踏み入れた心境で怯えてるっていうのに!なんか、理不尽じゃないか!?
見慣れぬゴブリンとモンスターに戦々恐々な中、奴らは苔を毟って喜んでるんだぞ!?おまけに怯えたアデレードに抱きつかれて、幸太は鼻血を流すありさまだ!
まあ、それを見て皆んな落ち着けたし、アデレードは苛つく私に怯えていたそうだが・・・。
・・・何にしろ、私たちは今日この日のために準備をして来た訳だ。
珍しく、幸太から大まかなスケジュールの通達もあった、後は・・・、キメるだけだ!
ウォーミングアップをする私たちの周囲は、野次馬に埋め尽くされ、もはや囁きが強大なノイズの様になって辺りを覆い尽くしている。
マナーのなっていない野次馬に、私が苛立ち始めた頃、唐突にノイズが鎮まっていった。
訝しく思い、辺りを伺ってみると・・・。
幸太が、祈りを捧げる様に、瞳を閉じて空に向かって顔を上げていた。
先程まで煩くてかなわなかったノイズは、完全に消え、辺りは急速に緊張感を高めていった。
その時、幸太が瞳を開いた、その音までが聞こえるかの様だった・・・。
「『ダンジョン・フィル・ハーモニー』はこれより、最前線に向けて進撃を開始する!!」
「「「「「『おう!』」」」」」
事前に決めていた、だが練習した訳でもないのに私たちの声は完全に同期していた。
前を歩いて行く幸太に、私は引き摺られて行く様にただ歩みを進めてダンジョンに入っていった。
『神憑り』
私たちは、正にそれを体感していた。
脳髄から全身を駆け巡る痛み、快楽にも似た感覚が私たちを突き動かしたんだ!
藤川 幸太。
その人に付き従い、群衆の歓声を浴びてダンジョンに行軍を開始した・・・。
うん、ミラさんと幸太君の感覚の違いを感じて頂けたら幸いです!
・・・やばいほどかけ離れてますよね。




