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187話

 夏休みも残りわずかとなったこの日、8月の終わりに僕らの最後の挑戦が始まる。



 ダンジョン内から生配信出来る、最後の日だ。

 僕らはこの日まで、ギルドで受けた依頼を引っ張ってきた。今日の夜7時までに勧誘広告を入れないと、僅かながらも違約金が取られる。

 気の早いパーティーはすでに終わらせているし、念のために複数回配信したパーティーすら存在する。今後の活動を見据えて、よくよく準備の良い事だ。


 まあ、ミューズに言わせると『うちが最終日に発信するって宣言してるのですよ?その日を外して配信しておくのは当然なのです!』という事らしい。


 ミラの言ってた各所ってのは、ギルドや自衛隊だけじゃなくて、視聴者や同僚の探索者たちも含まれていたらしい。

 なんとも手回しの良い事だ。




 朝の6時にギルドが開き次第、倉庫から装備を出してもらって更衣室で着替えを済ませ、ダンジョン前の広場でウォーミングアップをしているところだ。


 ダンジョン内の生配信は、原則7時からだからだ。


 今は自衛隊の皆さんが必死になって、中継機器を各階層の階段まで運んでいるはずだ。

 国も自衛隊もどうやら今回の試みで、7階層を配信したいと言って来るパーティーがいるとは思っていなかったみたいだ。

 普通なら、無理だと言われるはずのところを、ミラが()()()()()を取り実現してしまった。国の力ってのは恐ろしい!


 日本はドイツからの圧力に屈し、自衛隊の皆さんには要らぬ負担をかけてしまった。

 心苦しい事だ。

 僕の思いつきで、本当に申し訳ない!


 今日は、ダンジョンに入るところから、目的地で勧誘広告を入れるところまで配信する予定だ。生配信でしか出来ない、完全リアルタイム配信だ。

 休憩時間以外は、全部垂れ流す事になっている。まあ、休憩時間には用を足す必要もあるからね、さすがにそこは切らないと怒られるしね。

 やだよ?僕のアレが電波に乗ってどこまでも発信されるなんて!



 それにしても・・・、今日はやたら広場に人が多いな。


『魔眼』を発動させてないので、身体を動かしながら辺りにキョロキョロと目を向ける。『魔眼』を発動すれば、顔さえも動かさずに周りを確認出来るっていうのに、出来ない。ダンジョンの外でスキルを発動させているのは、現代ではマナー違反にあたるからね。

 僕が、大使館で大立ち回りをみせたのが良い例だ。まあ、バレない程度にみんな使ってるけどね!


「ねえ遥、なんか今日は人が多くない?」


「え?・・・そりゃあ、僕らの応援に来てくれてるんだよ。」


「は?」


 遥君の返答に、僕は驚いてしまった。


『うちのご主人様は、未だに自分の立ち位置が分かっていないのです。遥、何とかフォローしてやってほしいのですよ。』


「了解、任せておいて!」


 ミューズが、申し訳なさそうに遥君にお願いしている。


 だけど、僕はそれどころじゃない。

 こんな朝早くから、わざわざダンジョンの前にかなりの人集りが出来ている。良く見ると自衛隊の皆さんが、忙しいなか人集りの整理をしてくれている。

 おかげで、僕らに近づいて来られる人はいないようだ。


 嘘でしょう?

 これが全部、僕らを観に来た人たちなの?


 急速に高まって来る緊張感に、僕は意識が遠のいて行くのを感じた・・・。




(『幸太、深呼吸するのですよ。』)




 コソッと聞こえるミューズの声に、僕は縋り付く様にして従い、何とか意識を保つ事に成功した。


 ザワザワとした周りの騒めきが未だ遠くに聞こえる中、ミューズの優しく撫でてくれる手の感触だけが、僕の心を落ち着けてくれる。

 しばし目を閉じ、ただその感触だけに身を委ねて、体調の回復に努めていた。


(『時間なのです。』)


 ミューズの声で、僕は自分の役割を思い出した。



「『ダンジョン・フィル・ハーモニー』はこれより、最前線に向けて進撃を開始する!!」


「「「「「『おう!』」」」」」

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― 新着の感想 ―
『進撃のダンジョン・フィル・ハーモニー』〜 進撃開始と同時にあのop曲紅蓮の矢が演奏されるのを妄想しました。
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