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177話

まだ、ミラさん!

 後衛組に装備させる、アイテムがない事を幸太は謝っていた。


『満月の羽衣』はエミリアに、『羅シャツ』『ゴブリンキングの剣』『不屈のマント』はソフィアに、余った『羅シャツ』は遥に渡った。

 ちなみに、鑑定アイテムはアデレードが預かる事になった。


『これは、あれなのです!!断然アデレードにお預けなのです!お胸の間から出て来るやつがやれるのです!!もう、これだけで数字が取れるのですよ!?やらない手はないのです!』

 というミューズの主張と、後衛に預けた方が安心だよねっていう、幸太の意見が採用される事となった。


 私としては、ドイツに売ってほしいというのが本音だ。だが、今回は幸太の私物なので、そちらの意見を尊重した。


 ギルドで話す内容ではなかった気もするが、やってしまったものは仕方ない。この短時間に、幸太はいったい幾ら稼いだんだ?性能の事だけ考えても、相当な値段になる事は間違いない。

 アイテムの情報については小声で話したし、今後、映像にも映るので、さっさと情報は金に変えるのが正解だろう。



 まあ、この日の探索は・・・、大変だった。


 エミリアと遥が入れ込み過ぎていて、前のめりに敵に突撃し、ソフィアが『ゴブリンキングの剣』の武技、『抗いし者』の単独バフで大はしゃぎだ。

 私たち後衛組は、ついて行くのがやっとだった。

 それでもパーティーが崩れないのは、幸太が中央でバランスを保っているからだった・・・。的確に指示を出し、檄を飛ばして修正し続ける。


 幸太の、ぶっちぎると言ったその言葉に、私たちは、確かに近づいていると実感する時間だった。




 次の日のパーティーには、完全武装で出席した。

 もちろん、示威的な意味合いはない。私やソフィア以外は、礼服なんて持っていなかったからだ、学校の制服っていうのも、あまり褒められた物でもないからな。

 なにしろ、あれは軍服だ。しかも、私たちの装備よりも安い。


 服の値段で、礼儀をどうこう言うつもりもないが、同じ戦闘用ならば、高価な方が礼節に適った選択だろうという判断だ。

 アデレードの装備なんて、鑑定アイテムが加わったせいで100億円を超える価値があるからな。



 この日、折り入って、ミューズとサシで会話をする時間をもらった。


『ミラ、話ってなんなのです?』


「まあ、そう焦るな。」


『みゅ〜、ミューズは落ち着かないのですよぉ、幸太かアデレード以外に乗っかっているのは。』


「じゃあ、何所かに降ろそうか?」


『それが良いのです。降りたら早速ご主人様の下へGOなのです!』


 ミューズの言葉に、私は大使館の庭に崩れ落ちるかと思った。

 私は、青々と茂った芝生に身を委ねる事はなく、なんとか体勢を持ち直す。それと共に、気持ちも持ち直し会話を続ける。


「・・・まあ、腹の探り合いをしてもしょうがないな。ミューズ、諜報員が邪魔なら、うちからエージェントが出せるぞ。」


『ソフィアのおかげで、今のところ処分は間に合ってるのです。』


 ・・・。

 ソフィアが映像に残した、明らかにおかしな連中の事だな。

 私も人の事は言えないが、ミューズもしっかりと踏み込んで来たな・・・。


「今後、家屋への侵入を試みる奴が出て来る恐れがあるぞ。備えておいた方が良い。」


『既に、何人もいるのです。みんな消えてもらったのですよ。』


 やはり、諜報員を撃退してるのは、ミューズの仕業か。

 カウンター攻撃も悪くはない。だが、手を出させないための処置も、やっておいた方が利口だろう。


「あのアパートに、盗聴や盗撮用の機器が設置される恐れがあると思うが、その辺はどうだ?」


『あ〜、さすがにミューズの知識は、機器にまで及ばないのです。』


「自慢じゃないが、我が家はそれらを仕掛けられる事が数多あるからな。おかげで私は、そういった危機意識は人一倍でな。」


『うへぇ・・・、嬉しくない環境なのです。』


 全くだ。

 そんな事を嬉しく思う奴とは、仲良くなれない。


「まあ、護衛やSPみたいに思ってくれればいい。拠点の安全を確保する為だとかな。」


『みゅ〜、そこまで行くと、ミューズの独断では決められないのです。あれで、幸太は気配には敏感なのですよ、だいたいミューズよりも先に諜報員に気づくのです。「魔眼」の悪用はお手の物なのです。』


 ああ、想定外だ・・・。

 ミューズの単独犯だと思っていたら、まさか、幸太も共犯だったなんて・・・。そりゃ、各国のエージェントでも、簡単には出し抜けないよなぁ。


 ターゲットを見張ってるつもりが、実は自分たちも見張られていたなんて、きっと彼らは気づいていなかったのだろう・・・。


『ぶっちゃけると、アパートのお隣さんがイギリスのエージェントなのです。』


 私は危うく、変な声が出そうだった。


『おかげで、他所の国のエージェントが、こぞって接触して来るのですよ。もう、諜報員ホイホイなのです!そこだけ見張っていれば、みんな顔バレなのです!』


 情報交換も良し悪しだなぁ・・・。そこから芋づる式に身バレしたら、意味ないだろうに・・・。

 各国のエージェントが消されている中、絶好のポジションを確保していて、未だに健在。

 どこの国も、接触を図っちゃうよなぁ。


『他にも、ご主人様に接近や接触に慎重な姿勢の人たちを、何人も泳がせてあるのですよ。』


 余計なお世話だったかな?

 こいつらなら、放っておいても大丈夫かもしれないな・・・。いや、しかし、もしもの事を考えれば、何らかの処置はしておいた方がいいだろう。


「ミューズは、護衛や警備には反対か?」


『そんな事ないのです。少しの事で、煩わしさから解放されるなら受け入れるのですよ。でも、この際、アデレードのお家の近くに引っ越すのはどうなのです?』


「引っ越しか?予算はともかく、あの辺はドイツ軍人のお宅ばっかりだぞ?」


『警備代わりに、ちょうど良くないですか?』


 ふむ、そういう手もあるか・・・。

 日本側が用意した、通称『豊田タウン』内に入れてしまうのはどうだ?あそこは、高級住宅街として塀で囲まれているし、守衛の代わりに軍人が警備にあたっていて、比較的安全な場所だ。

 まあ、我が家の事を考えると、絶対に安全とは言い難い訳だが、抑止力程度には機能するだろう。


『「豊田タウン内は・・・。」』


「ミューズ、意見があったな。」


『結局、その辺りが一番安全なのです。』


 今後、折を見て幸太と、お父様に話してみるか・・・。


「なあ、ミューズ。」


『みゅ?なんなのです?』


「あの2人は、いったい何の話をしてるんだ?」


『ミラが聞くと、また頭が痛くなりそうな素材のお話なのですよ?』


 昨日、あれだけかましてくれたのに、幸太はまだやる気なのか・・・。

 そうなのだ、ミューズを連れ出したこの時間に、幸太はお父様とお話ししてるはずなのだ。


 正直、これ以上は勘弁してほしい・・・。

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