176話
続けて、ミラさん。
皆さんからご指摘いただいた、唐突なスキル暴露に対して168話を修正してみました。
もしよろしければ、ご覧になってください。
幸太の言葉の衝撃に、遥が挙動不審になってしまっていた。
怒鳴りつけるやり方は、悪手だろう。
見た目上は落ち着いても、内心の不安を加速させるだけだ。無能な教育者や上司が、やりがちな手法だな。さて、幸太ならどうするかな?
「わっ!!」
「わぁ!?もう、脅かさないでよぉ〜。」
「ごめんごめん。」
なんて事だ・・・。
意表をついて声を上げただけ、たったそれだけで、幸太は遥を落ち着けてしまった。
声を出した事、出させた事、そして何よりも、不満を口にさせた事が、遥が落ち着いた何よりの理由だろう。
すでに完全にいつも通り、とはいかなくても、話が頭に入って来るくらいには、遥も落ち着けた事だろう。お互いの信頼関係があっての事とはいえ、見事なものだ・・・。
幸太も、リーダーが板に付いて来たな。
含みのない笑みで、遥に謝ってみせている。
「話を戻すね。」
皆がピリッと、話を聞く体勢を整えた。
「レベル差があるとはいえ、そろそろ2人の素のステータスは僕を超えて来てると思うんだ。特に、前衛が必要としている項目はね。僕が2人に勝るのは、器用値くらいじゃないかな?」
・・・・・・。
「・・・いや、そんな事言われても。あたしは、コウタに勝てるビジョンが見えないんだが・・・。」
「僕も、エミリアに賛成だ・・・、全く勝てる気がしない。」
・・・うん。
私も、エミリアや遥が、幸太以上の働きをしてみせる姿が思い描けない。
「まあ、今はね。でも、これから現れる強敵には、きっと2人の成長が必要不可欠になってくるんじゃないかと、僕は思うんだよね。」
幸太は、一拍おいて2人の表情を確かめた。
2人とも、良い表情だ・・・。
元が良いだけに、男女を虜にしてやまない。
おかげで、周囲が喧しい!
『まあ、ご主人様は、暇な時に「ゴブリンの集落」をソロで壊滅させる様なキチガイですけどね!頑張って超えるのですよ?』
・・・なあ幸太、エースってなんだろうな。
皆の表情が引き攣っている、無理もない事だろう。
『ご主人様はまたレベルが上がって、スキルを得て強くなったのです!つい全力を試すのに丁度良い「ゴブリンの集落」を潰してしまったのです。おかげで大儲けなのですよ?』
ミューズお前は、せっかく覚悟を決めた、2人の心をへし折るなよ!!
『2人ともナイスリアクションなのです!!この映像はいけるのです!今回こそはミューズがもらったのですよ!』
「いやミューズ、撮影してないからね。2人とも机に突っ伏しちゃったけど、カメラ回ってないから。」
『えぇ!!?ミューズの会心の一撃を撮ってないのですか!?せっかくのネタが、まさかの空振りに終わるなんてぇぇぇぇ!!・・・芸の道は厳しいのですぅ・・・。』
ミューズに芸の肥やしにされた2人は、未だに戻って来ない。
アデレードは祈りを捧げそうな勢いだし、ソフィアは無邪気に驚いている。
私は頭が痛いよ!!
「えっと、みんな大丈夫?」
「諸悪の根源が何を抜かす。」
「ミラ、ジト目ビームが痛いよ・・・。」
「知るか!それで、本当にやったのか?」
「うん。ドロップ・・・『ドロップ運が良かったのです!これは行くしかないって、本命のアイテムのついでに潰して来たのです!!「ゴブリンの集落」がついでなのです、これがご主人様クオリティ!!』
ダメだ、私まで突っ伏しちゃいそうな破壊力だ・・・。
「こらっ!ミューズ僕にも喋らせてよ。くすぐってやる!このこのこの。」
『きゃははは!きゃは、きゃははは!うぅ♪きゅ、きゃははは!』
幸太は、ミューズを頭の上から手元に降ろしてくすぐっている。
2人とも、とっても楽しそうだ。
ミューズがもっとやれと、期待の眼差しを向けているが、エミリアと遥も復帰して来たので、抱きしめて頭を撫でるにとどめている。
もう、完全に新米パパだな幸太は。
「別に、2人にそんな事をやらすつもりはないよ。第一、一度潰しちゃうと、再生したって話は今のところ聞かないからね。」
そうなのだ、一度潰した『ゴブリンの集落』が再生したという情報は、今のところ確認されていない。
一度っきりのモンスターなのか、それとも放っておけば再び出現するのか、それとも、何か他の要因が必要なのか。ダンジョンに関しては、まだそんな事すら分かっていないんだ。
「じゃあ、3階層の集落はもう打ち止めかな?今後は、跡地として利用して行く事になるのかな?」
「どうかなぁ・・・。」
跡地も、比較的強いゴブリンが出やすいと言われている。これは、すでに東京のダンジョンなどで確認済みで、ほぼ間違いがない。
後は、休憩地点や中継地点に使ってる場合もある。腐っても家屋って訳だ、ダンジョン内の施設を有効利用しない手はない。
今頃、軍や自衛隊が、どうするか協議を重ねている頃だろう。
半分くらい、一般の探索者に残しておけば、不満も出難く利用出来るのではないだろうか?
まあ、本当に色々あったからな、今回は慎重になるのも仕方ないけど、頑張ってほしいものだ。
「それで、せっかく集めて来たアイテムを、みんなで使おうと思って取っておいたんだ。」
ああ、お前はそういう奴だったな・・・。
「じゃじゃ〜ん!!」
『さあ驚くのです!!これが・・・、ちょ、ご主人様!?きゃははは!くすぐっちゃ、ダメなのです!きゃははは!ミュ、ミューズの、出番なのですよ!まだ喋るのです!』
また、ミューズと遊んでいる。
『ご主人様は、出す役をやるのです!解説はミューズなのです、役割分担しましょうね。』
『ゴブリンキングの剣』
ゴブリン族の長が、その証しとして持つ剣。
攻撃力:24
武技:抗いし者使用可
『不屈のマント』
決して諦めない、不屈の精神が込められたマント
DEF:6
MDEF:6
体力+3
『満月の羽衣』
ジュリーフィッシュを織り込んだ服、透けない。
DEF:6
MDEF:4
熱耐性、寒耐性
『こんな感じなのです!』
「後は、毎度おなじみの『羅シャツ』が2枚に、鑑定アイテムだね。」
『以上なのです!!』
・・・まて、流そうとするな!!?
「まてコウタ、今サラッと鑑定アイテムとか言わなかったか?」
『「気づかれた。」のです!』
『みゅ?ミューズが言うのですか?仕方のないご主人様なのです。宝箱をぱかっとやったら、出て来ちゃったのですよ。ご主人様だから仕方ないのです!』
幸太クオリティ半端ねえな・・・。アデレードの指輪とか首輪とかはまだ良いとして、確実にメモか何かに残しておかないとな。
ジェシカさんたちと別れた後の探索です。
ミューズが50億って言ってたやつですね。実際にはもうちょっと上かなって思ってます!