168話
連続婦女暴行殺害事件なんて世間で言われてる事件が、豊田ダンジョンであった。
1回目のリーダー格の3名の被告は、今も裁判を待っている。
その傍ら、取り巻きの連中は保護観察期間の最中に、再び犯行を犯し、多くは駆けつけた僕らによってあの世に送られた。
その後、最初に捕まった3名以外はみんな死に、彼らも判決を待つばかりの身だ。
この事件の被害者で、生き残りの白石さんに再び声を掛けられたのは、最近になっての事だ。
ミューズが、探索者のお姉様方に、バシャバシャとお水をプレゼントされてる間に声をかけられ、お礼とお詫びを受け取った。
白石さんと後藤さんの2人が、探索者に復帰する事を聞いて、僕も何か手伝えたらいいなと思って、少しだけLv上げを手伝う事にしたんだ。
今日は、その2回目だ。
「幸太君こっち!」
「・・・おーい、こっちだよ〜。」
『みゅ〜!!』
2人に、ミューズが元気良く手を振り返している。
小ちゃな手を懸命に振る姿が、なんとも愛らしい。
この姿が見えるようになっただけでも、『魔眼』が使えるようになった価値がある。
なにしろ、僕の頭の上にいるからね、魔眼でも発動しないと見えないんだよ。
そんな可愛いミューズを撫でながら、2人と合流した。
「おはようございます。お待たせしましたか?」
「いや、私たちが早く来ただけだから。幸太君は時間通りよ!」
「・・・待ちきれなかった〜。」
前回のLv上げで、1つLvが上がったせいかな?
なんにしろ、期待してもらえるのは嬉しいものだね。
だけど実際、あの時は悩んだんだ・・・。
僕は、彼女たちが、こんなに早く社会に復帰出来る事に驚いたし、その強さに憧れた。応援したかったんだよ!!
遥君の時と同じだったんだ、眩しかったんだ。
安全圏だと思われるLv10には、まだ到達していない・・・。
だけど、すでに自分の身を守れる程度のめどは立って来た。あの『ゴブリン・キング』にすら勝ったんだから・・・!
一歩踏み出しせたじゃないか!
だから・・・、もう一歩だけ・・・!
怖いよ・・・。
今でも、この判断が正しかったのか、不安でしょうがない。
「えっと・・・、ジェシカさんは何故ここに?」
声を出して、心を落ち着かせたかった。なので、2人と一緒にいた、ジェシカさんの用件を聞いてみる。
「1人では危ないからね、組んでダンジョンに潜らないかって誘われてたの。幸太君、彼女が一緒でも良い?」
「別に構いませんよ。」
なるほど。
臨時で、あちらこちらでパーティーを組めてしまう、ジェシカさんのコミュ力に脱帽だ。
僕じゃあ、とても真似出来ない・・・。
「・・・まさかジェシカを知っているとは、ジェシカ美人だもんね、幸太君も男の子。」
「いや、お隣さんですから、知ってて当然ですよね?」
後藤さん、それは誤解です!
しかも、挨拶する程度の間柄でしかないです。
僕は、首を振って否定しておく。
「よろしくね幸太!でも、今朝も随分早くに出かけて行ったわよね?何処かに寄り道でもしてたの?」
お隣さんだもんね、出かけた時間なんてバレてる。
ボロアパートなので、音とか筒抜けなんだよね。
「いえ、さっきまで暇つぶしにダンジョンに潜ってました。」
『これがご主人様クオリティなのです!ダンジョンに潜る前に、暇だからダンジョンに潜る!!意味が分かりません!そのうちダンジョンに住み着くんじゃないかと、ミューズは心配です!!』
「ふむ、それも面白そうだね。」
あれ?
女性陣が呆れてる?
「えーっと・・・、さっそく行きましょうか。」
このまま続けるのは何かマズイと感じて、僕はダンジョンへ避難する事を選択した。
さすがの幸太君クオリティ!