165話
切るところが見つからなかった・・・。
長いです。
昨日アデレード先輩との約束も果たし、午後からはのんびりとダンジョンを徘徊していた。
帰りがけにギルドで、都築さんと出会い道場の利用が3日後に決まった。
その後には、豊田のドイツ大使館にも行かなければいけない、忙しい数日間になりそうだ。
今日はダンジョン配信の日なので、みんなとまた4階層に来ていた。
ミラも明日には帰国、いや、日本にやって来るので?
表現が難しいな・・・。
ドイツに一時帰国って言ってたから、再来日になるのかな?
まあ、日本に戻って来る。
そこからの企画は、遥君とミラがしっかり練っているようなので、お任せだ。
だから今日は、もちろん僕の企画だ!
「という事で!前回大変好評をいただきました、なんちゃって忍者企画、第2弾!!をお送りしたいと思いま〜す!!」
『わ〜!パチパチ!!』
「幸太、企画内容の説明もなしに始めるのやめない?」
「思いつきで始めるのがコウタらしさだぞ、遥。」
「そうですね。配信される側も、私たちが何も聞かされてないとは、思ってもみないでしょうね。」
「普通は、最低限の説明くらいあるものでしょうねぇ。」
配信が始まってるのに、みんなが拍手しながらディスってくる。
でも、説明し過ぎて、わざとらしく驚いてみせてる芸人さんとか、僕は飽き飽きなんだよね。
みんなの、驚く様子が見たいんだよ!
「今回も!ミラの代わりにミューズがカメラを装着してま〜す!」
『ちょんまげなのです!!』
うん!ミューズの希望で、頭の上に固定したからね!
「じゃあ、ソフィアは定点からカメラで!エミリアは自由に撮って!後はミラと遥が編集してくれるから!!」
「早くもコメント沢山ありがとうございます!本当に聞いてないので、何をやるのかも分かりません!」
遥君がスマホを見ながら、ソフィアの隣で音声を入れてる。
「まず用意するのは・・・『ミューズなのですよ!』・・、うん、ミューズもいるね!もしもの時はよろしくね。」
僕はミューズをわしゃわしゃと撫でる。
「えっと、気を取り直して!じゃーん!今日はこれを使いま〜す!」
僕は、服の裾からペンダントを出した。
腕に巻きつけて持って来たんだ。
先日、6階層で迷子に・・・、もとい、6階層で探索していたら手にした、ドロップアイテムだ。
霧がすごいし、ツタや植物が邪魔で切り払っていたらドロップした。
どうも、植物型のモンスターが混じっていたらしい。僕が気づかずに通り過ぎて行ったのを、ミューズが拾って届けてくれたんだ。
しょうがないんだって!切り払った植物の欠片にしか見えなかったんだよ!?
見た目だって!
細い蔓に、モフっとした草がくっ付いてるアイテムなんだ!
「これは、オプションアクセサリーの、『エアープラント』っていうアイテムなんだ!」
うん、パーティーのみんながキョトンとしてる。
僕も、これを手に入れて初めて、『オプションアクセサリー』なんて言葉を知ったからね。
ショップにも並んでいない、貴重なアイテムなんだよ?
「まずは、『オプションアクセサリー』の説明からしちゃうね!『オプションアクセサリー』とは、アクセサリー枠を使わないで、外付け出来るアイテムの事なんだ!その代わりに効果も特殊だね!」
大丈夫だ、ギルドで鑑定した時に、ちゃんと『オプションアクセサリー』って書いてあったから、間違えようもない。
「コ、コウタ?これは配信してしまっても良かったのか?」
「え?なんで?」
「コータさん、これはすごい発見だと思うのです。」
・・・。
しまった!?その可能性は考えてなかった!
てっきり、出回ってないだけだと思ってた!?
『お、お、お、お腹が・・・、捩れるのですぅ・・・、ぶふっ!』
ミューズが、僕の頭の上でピクピク痙攣してる。
笑い過ぎでしょうこいつ!
「・・・まあ、もう止めようがないよ幸太、腹を括って、このまま発表しちゃおう。早くもアクセス数がすごい事になってるから・・・。」
遥君は冷静だね、僕はなかなか心の整理が出来ないよ。
それでも、なんとか遥君に促されて、先を続ける。
「えーっと、続けますね・・・。」
昨日、弟君たちに賞賛されて、いい気になっていたようだ。アデレード先輩との約束もあったし、緊張して頭が回っていなかったようだ。
もうちょっと、考えてから動くべきだった。
「見ててね?」
そう言って、僕は跳んでみせる。
そして着地前に宙を一回蹴って、落下速度を落としてから着地してみせた。
「分かったかな?」
「宙で一回止まりました!」
「ソフィアもそう見えたか!?あたしの目の錯覚じゃないよな!」
アデレード先輩は、驚いて声も出ない様子だ。
よしよし!驚ろかす事には成功した。
「そうだね、これが出来ると・い・う・事・は?もう、気づいたよね?」
遥君に僕は視線を送る。
おーい!遥君!驚いてないで、スマホを見てよ!
さっきは、あんな見事な復帰をしてみせてたのに!
そんなに衝撃的だった?
まあ、驚いてくれて僕は嬉しいよ。
「遥〜、どう?気づいた人いた?」
「え?え?あ、えっと・・・、2段とび?2段跳び!!?」
やっぱり、気づく人は気づくよね〜!
「当ったり!じゃあ、やって見せるね!」
僕は跳んで、頂点で強く蹴り出し、さらに跳んでみせた。
【支援魔法】も掛かってる僕の身体能力は、すでに垂直跳びで3m近く跳べてしまう。そこから、さらに跳んでみせたので、結構な高さまで上昇してる。
なので、降りる時も一回宙を蹴って、速度を落として着地する。
みんなの感嘆の声がする。
これで天狗にならない様にしないと、また、やらかしちゃう・・・。
でも、嬉しいんだよね〜。
「面白いでしょう?ただ、このアイテム少しだけディレイがあって、連続って訳にはいかないんだ。僕の感覚では、2秒未満だと思うんだけどね、そのタイミングを見誤ると落っこちるから、気をつけて使って下さいね!」
一応ここでみんなを見回し、溜めを作ってから次に行く。
「じゃあ、今、僕に出来る最終段階行きますね〜!ミューズ、落ちたらよろしく!」
『任せるのです!』
僕は湖に向かって走り、翔んだ。
バランスを崩さない様に気をつけなが、タイミング良く宙を蹴って、空中を跳び回る。
「はい!こんな感じで〜す!」
戻って来た僕を、みんな拍手で迎えてくれた。
「じゃあ、えーっと、エミリアやってみる?落っこちたら、すぐにミューズを派遣するからね。」
『あい、きゃん、ふらーい!なのです!』
おう、投げられるのを希望するの?
この間は、微妙って言ってなかった?
・・・まさか、芸人魂?
「あっ、ソフィア、音声拾ってくれる?」
「はい、どうぞ。」
「ちなみに、このアイテムなんだけど。脚力っていうか、素早さがないと跳べないんだよね。だから、誰にでも使えるって訳にはいかないと思うんだ。まあ、その辺は使う人次第かもね。今後の研究に期待しちゃうね!」
エミリアは初めてだっていうのに、湖に向かってダッシュして、4歩目を失敗して落ちた。
「ああ!コータ早く!エミリアは泳げないんです!」
「はぁ!?」
『幸太急ぐのです!!』
だったら、何でいきなり湖に向かって跳んだんだよ!
驚いて、固まってしまっていた僕は、ミューズの言葉に慌ててミューズを投げる。
エミリアは、ミューズに抱きつく様にして帰って来た。
もちろんずぶ濡れだ。
それ以上に、息も絶え絶えだ。
「無理するなよエミリア。」
「あたしだって、飛んでみたかったんだ・・・。」
当初の予定では、この後、遥君の予定だったけど・・・、どうしたものか。
「僕の番だよね?」
さすがに、分かってらっしゃる。
初めてで失敗する映像は、これが危険性をはらんでいる事を、分かりやすく伝えてくれるはずだ。
僕はエミリアから受け取った『エアープラント』を、遥君に預けた。
「頑張って。」
配信があるので、本音はともかく応援しておく。
遥君は、にっこり笑って受け取った。
かなりの助走をつけて・・・。
「遥、いっきま〜す!」
湖に向かって跳んだ。
初手から体勢を崩し、3歩目を湖に向かって蹴ってしまい、盛大な水しぶきを上げた。
わざとやったのなら、表彰もののダイブだった。
心配するアデレード先輩と、爆笑するミューズやエミリアの温度差がひどかった。
もちろん、僕も笑う側だ。
日本人の多くは泳げるからね。
それでもミューズを投げてやる。
『ご主人様、バックスピンなのです!バックスピン!』
「了解!遥をよろしく!」
ミューズはくるくると回転しながら飛んでいき、小さなスプラッシュを上げて着水した。
見事な飛び込みだ。
ミューズは遥君をサーフボードの様にしながら帰って来た。
こいつら、芸人魂が育ち過ぎてない!?
この後、エミリアと遥君がもう1回づつ挑戦し。各々、跳べる歩数を一歩増やして落下した。
意外に、ボディーバランスとは器用値の分野なのかもしれない。
「アデレード先輩、見てるだけでは飽きてきたでしょう?」
「え?でも、私は素早さに自信がないし、その・・・。」
興味だってあるはずだ、さっきまで夢中になって見ていたからね!
どうやってアデレード先輩を誘うかも想定済みだ。
「昨日のお礼に、僅かな時間ですが空中散歩なんて如何ですか?」
「・・・はい!」
僕は遥君から回収した『エアープラント』を腕に巻いて、アデレード先輩をお姫様抱っこして湖に向かって跳んだ。
「きゃー!きゃー!!わ、飛んでるー!?」
ミューズがすかさずポジションを取り直し、アデレード先輩の様子を撮っていた。
跳んでる僕の上で移動されると、バランスを取るのが厳しいのですが・・・。
このまま、落ちてみせるか迷ったけど。
ミューズは、そんなつもりでポジションを変えた訳ではないだろうと思い、やめておいた。
ある程度、高さなどを体験してもらい、楽しんでもらったのを確認して、僕はみんなの元に戻り、今日の生配信を締めた。
「今日の配信はここまで!楽しんでもらえたかな?またの配信をお楽しみに!じゃあね〜!!」
・・・うん、この後も大変だった。
ソフィアを抱っこして跳んだり、エミリアと遥君が幾度となく挑戦したりと、体力の限界まで2人は跳んでたよ・・・。
僕は、配信をさっさと終わらせて、狩りに行きたかったのに・・・。
これを見て、ミラが文句を言う所まで書きたかった・・・。
でも、ダラダラした文章って嫌いなので、カットしました。




