159話
「おっ?『幽鬼』登場!おかえり幸太君!」
探索が終わり、ギルドに戻って来た僕に、都築さんが声をかけてきた。
最近ギルドで見ないと思ってたけど、別に異動になった訳ではないようだ。
「なんですか、それ?」
『ご主人様の事なのですよ?』
え?そんな、さも当然そうに・・・。
あれ?僕が分からないのに、なんでミューズは分かるの?
「最近時々、6階層を彷徨っているんだって?噂になってるわよ?」
「そうなんですか?」
『普通の人は、ご主人様の長時間探索に耐えられないのです!だから、休養日が必要になるのです!そうすると、ご主人様が暇になる訳です!!』
「・・・暇だから6階層に潜ってるの?冗談よね?」
・・・やばい、お姉さんに正気を疑われてる・・・。
僕よりも強いお姉さんに、正気を疑われのは納得がいかない。
「・・・その、5階層は、飛行系の悪魔に手が届かなくて・・・、ですね?」
「だから奥に行くって事?ミュウちゃん、大丈夫なの?」
あ、僕じゃなくて、ミューズに聞くんですね。
グレようかな?
『大丈夫じゃないのです!!この間、ガッツリ迷子になったのですよ!ミューズのお水が無くなってから、何時間彷徨った事かっ!霧をなめちゃいけないのです!!』
どうやら、霧の中を彷徨って歩く、僕の眼の紅い光が、『幽鬼』と言われる原因だったようだ。
最近、ネットで結構叩かれてもいるので、あんまり見たくないんだよね。
ミューズ曰く、そんな物は一部で、嫉妬塗れのそれらを気にする必要はないとの事だけど、そういう悪口の方が、心に残っちゃたりするんだよね。
だから、あんまりね・・・。
「そう、大丈夫ならいいわ。」
『大丈夫じゃないのです!この年で迷子ですよ!?ミューズは笑い死ぬかと思ったのです!』
をい!
笑い事なのかよ!?
『挙句の果て!宝箱に蹴つまずくのですよ!?爆笑なのです!!カメラが必要だったのです!ミューズとした事が!!一生の不覚なのです!』
「あっはははははははっ!!」
お姉さんが、腹を抱えて大爆笑だ・・・。
よく見ると、隣の窓口のお姉さんも、口を押さえて笑ってる。
皆さん、窓口は叩くためにあるんじゃないんです・・・、突っ伏しちゃったお姉さんまでいるよ!?みんな聞き耳立てすぎだから!!
お姉さんの笑いが収まるまで、しばらくかかった。
「いや〜!霧の6階層は伊達じゃないわね!『ジェリーフィッシュ』には会わなかった?」
「会いましたよ。でも、全力でやれば、何とかなります。」
『幸太!!・・・喋り過ぎなのですよ・・・。』
しまった!
耐え切れない羞恥心に、思わず喋り過ぎた!
「へぇ、まだ先があるんだぁ、面白いじゃない。」
お姉さんがニヤリと笑った。
思わず後ずさりそうになった。
ミューズですら、頭を引っ込めるほどの、凄味のある笑みだった。
「一度、道場で見てあげようか?」
「本当ですか!?お願いします!」
願ってもない申し出だ!
もちろん!お願いする!
「うんうん!素直でよろしい!話を通さないといけないから、日にちがどうなるか分からないけど、良い?」
「はい!夏休み中なら、こちらが合わせます!」
当然!そのためなら1日くらい、学校を休んだって構わない!!
あっ!そうだ!!
『カメラが要るのです!!』
ミューズに言われた!?
見直すためにも、撮っておきたいところだ。
「・・・う〜ん。私の映像が出回るのはマズイのよね・・・。私を映さなければ、問題ないわ。」
それは、何とも・・・。
「分かりました。他は撮って配信しても良いですか?」
「多分、大丈夫だと思うわ!じゃあ、準備が出来次第連絡するわね!」
「はい!」
「あっ!そういえば、ドイツのダンジョン大使館から、『ダンジョン・フィル・ハーモニー』宛に招待状が届いてるわよ?どうする、今日渡す?みんなが揃ってる時の方がいい?」
何それ?
聞いてないよ?
・・・ここはひとつ、先送りで!!
「みんなが揃ってる時に、お願いします!」
全力=『草薙剣』の武技までフル活用した時です!
この武技は、今度説明します!