16話
ちょっと翻訳機のせいで、無駄な時間をかけてしまい、早くもギルドに到着してしまった。
結局、自己紹介くらいしか終わっていない。
悪い事をした。せっかく、僕が何か教えてあげられるところだったのに・・・。
「じゃあ、僕ちょっと換金して来るね。」
「ええ、待っていても良いですか?もう少しお聞きしたいので。」
「え?・・・あ、ああ、良いよ。急いで戻って来るね!」
なんて事だ、こんな幸運に恵まれるなんて!
僕は、慌てて買取用のカウンターに、さっきゴブリンが落としたナイフを持って行った。
ああ、自己紹介は終わってるんだ。
背の高いモデル体型のラーメンさんが、エミリア・シュナイダーさん。
超美人で話しやすいのが、ソフィア・ミュラーさん。
小ちゃくてジト目の似合う彼女は、ミラ・フィッシャーさんだ。
翻訳機の翻訳ミスがなければ、もう少し話が聞けたのに・・・。
「今日も来てたんですか?ちゃんと休まないとダメですよ?」
「あはは・・・、どうせ大した時間潜ってる訳でもないので。」
「それでもです。探索者にとって、休むのも仕事だと言ったでしょう。」
窓口のお姉さんが、ここでまさかのお説教タイムだ・・・。
綺麗なお姉さんだし、心配して言ってくれてるのは分かるんだけどね。
高校が始まるまでは暇だしって、言っても分かってくれないんだよね。
嫌な訳じゃない、むしろ別の日なら2時間でも3時間でも、僕は付き合う覚悟だ。だけど、今日は勘弁してほしい・・・。
「・・・えーっと、鑑定室って、今空いてますか?」
「こら、話をそらさないの!」
「いえ、その〜・・・、人を待たせてて・・・、急いでいるものですから。」
心配してもらってる事が分かるだけに、話を遮るのが心苦しい・・・。
でも、ソフィアさんたちを待たせるのは、申し訳ない。
「え?そうなの?じゃあ早く手続きやっちゃうわね。でも、身体も労わりなさいよ。」
「はい!」
「はい、良いお返事です。えーと、鑑定室は・・・、今なら空いてるわね!」
初日に入った、仕切りの向こうをお姉さんが確認してくれる。
あれに、鑑定室って名前がついてるのを知ったのはつい最近の事だ。
ネットの情報に載ってたのかもしれないけど、僕は覚えていなかった。
「じゃあ、お願いします。」
「いいの?10分で千円もするのよ?」
「はい、Lvが上がった気がするので、どうしても見ておきたくて。」
この世界は、Lvアップの告知がある親切仕様じゃないから、こうしてたまに確認しないと、自分でも気づけなかったりするんだ。
僕のも、ただの勘に近い。
ゴブリン相手に、手ごたえが変わった感じがしたから、間違いないと思うけどね。
「それじゃあ、仕方ないわね。昼1番からは長時間の予約が入ってるから、今のうちに行ってらっしゃい。」
「はい!行ってきます。」
若干不便だけど、ギルドで確認出来るし、このくらいなら良いよね?
便利過ぎてもなんだし、不便なのはもっと嫌です。
いい塩梅って、難しいですね〜。




