158話
なんちゃって、忍者教室。
もちろん、僕が考えた配信だ。
パーティーの中で、こんな頭の悪そうなネタを考えるのは僕くらいだ。
でも、何かやりたかったんだよ?
僕だって、パーティーのメンバーなんだし。
夏休みだから、小さな子にウケるかなぁって思ってね?
「でわ!水蜘蛛をつけずに水上歩行から行きたいと思います!という事で、4階層にやって来ました!!」
『わー!パチパチ!!』
「「え?」」「「は?」」
うん!仲間たちの反応が冷たい!水上だけに!
のってくれるのは、ミューズだけだ。
カメラは、ミラの代わりにミューズに頼んでる。撮影上、その方が色々と撮れると思ったんだ。
「幸太待ってよ、水蜘蛛ってあれだろ?いわゆる忍者が足に着けて、水の上を歩いてる・・・。無しでどうやって歩くの?」
「はい!遥君、良い質問ですよ!まず用意するのは・・・、ミューズ!はい、それだけで〜す!他には何も要りません。」
『ミューズなのです!』
うん、みんな目が点だ。
それでも、カメラは回ってるんだけどね。
テンポ良く、テンポ良く。
「じゃあ、まずは湖を歩くところから行ってみたいと思います!ミューズよろしくね〜。」
『任せるのです!』
まあ、ミューズを頭の上に乗せて、水面を歩くだけだ。
本当に、工夫も何もあったもんじゃない。
それでも、驚くよね?
仲間たちが、僕が水面を歩く姿を、顎が外れそうな顔で見ている。
僕は、しばらく歩いてみせて、仲間を呼び寄せる。
「じゃあ、みんなもどうぞ〜。」
「おおぉぉぉ!本当に・・・、歩いてる。」
「どうなってるの?」
一様にみんな驚きを隠せない。
アデレード先輩なんて、座り込んで足元を触って確かめてる。
とっても嬉しいのですが、刺激が強過ぎると思います。
胸元の開いた服で屈んだら・・・、ねえ?
後で、自衛隊の方から、厳重注意を受けるかもしれない。
ソフィアだけが、なぜか足首まで沈んでいた。
「あれ?ソフィアどうしたの?」
『ソフィアは重過ぎるのです!さすがのミューズも浮かせませんでした!!』
ああ、鎧が・・・。
それは、考えなかったなぁ。
「鎧が重いのです!私は重くないですよ!?」
おっと!まさかの事態だ!
僕はちょっと配慮が足りなかった。
いや、言ったのはミューズだけどね?
「すぐ脱ぎます!」
「ああ、待って、待って待ってソフィア!」
女性が脱ぎますって、いや、そこじゃなくてね?
一応、ミラが画策してるみたいだし。こんな馬鹿な企画で壊したら、後で、どんなに怒られる事か!!
僕の懸念を理解したのか、みんなも止めてくれた。
「底についてる訳じゃないんだよね?」
「もちろんですよ!!」
「じゃあ、申し訳ないけどこのまま行こうか。ミューズ、奥に行って予定通り撮影しよう。」
『了解なのです!』
僕らは、湖の中央に向かって移動して、撮影を続けた。
「オーケー!この辺で良いよ!ミューズ、ミューズの華麗な技を見せてあげて!!」
『任せるのです!!』
僕の頭から飛び降りたミューズは、そのまま、縦横無尽に泳ぎまわった。
水上を立ったまま移動したり、水中に潜ったり。見た目をちゃんと考慮して、円の動きを意識して動いてみせた。
時に、僕らの下を通過する姿は、なかなか見応えがあった。
スピードをつけて、イルカみたいに、僕らの上を飛び越えてみせたりもした。
集まってきた水精が、ミューズの真似をしだして、想像以上にすごい映像になったのではないだろうか?
まあ、おかげで僕らは水びたしだけどね。
せっかく、水上にいたっていうのにね。
途中で指示も出してる。
エミリアには、ミューズを撮ってもらって。
ソフィアには、ゆっくりと周りの状況を撮ってもらった。
これで、自分好みの映像が楽しめただろう。
ビュンビュン動いてる、ミューズのカメラだけじゃ酔っちゃうからね!
『みんな!協力感謝なのです!!』
「ありがとうございました〜!」
水精たちにお礼を言って、今日の撮影を終了した。
「いや〜、すごかったなコウタ!!」
「これなら、注目間違いなしですよ!」
「まだ、足元がふわふわする・・・、幻想的な光景だったぁ・・・。」
良かった良かった。
女性陣には、しっかりとウケたみたいだ!
本当は、壁登りならぬ、木登りもやりたかったんだけど。
僕らのステータスだと、簡単すぎるんだよね。
想像を絶する高い木でもあれば、面白い映像になるかもしれないけどね!
「・・・ヤバイ。・・・ミラが参加出来なくて怒ってる・・・。」
遥君が、スマホを見ながら、教えてくれた。
そんなぁ!?
理不尽だよぉ!ミラが居ないから、僕が頭をひねったのにぃぃぃ!!?




