150話
ここで、少し寄り道します。
『ゴブリンの集落』潰滅の前日です!
最近、ゴリゴリ、ゴブリン狩ってるし、今日くらいはミューズとのんびり4階層を流しに行きます。
美しい水面を眺めながら、のんびり歩くには4階層はぴったりだよね。
時々襲ってくるゴブリンを、湖に放流したり、倒したりしながらマッタリとすごす。
「はぁ〜♪のどかだね〜。」
『そうなのです?さっき湖に投げ込んだゴブリンが、まだ溺れているのですよ?』
ちょっと、バチャバチャと水音が気になるかな?
どうしよう?せっかく投げ込んだのに、トドメをさしに行く?
まあ、いっか!
静か過ぎるのもね。
「ミューズと会ったのもこの辺だっけ?」
『そうなのです!そこの石辺りなのです!!昨日の事の様に思い出せるのです!』
「うん、まだ最近だからね。」
まだ、2か月経ったかどうかだよ?
その割に、色んな事があったけどね・・・。
「ミューズは、この湖が恋しくなったりしないの?」
『全然しないのですよ?』
そんなキョトンと言われてもね。
まあ、僕も、あまり実家に帰りたいとは思わないけどね。
「湖にいた頃は、何をしてすごしてたの?」
『みゅ?流されてましたよ?』
・・・。
これは、どういう意味だろう?
「えっと・・・。湖には、ほとんど流れはないよね?」
『そんなことないのですよ?表面上は穏やかですけど、水中は激流なのです!』
うっそ!?そんな話聞いた事がない!
『何しろ、水精たちが好き勝手にお水を操って動いてるので、流れがすごいのですよ!!』
お前らの所為か!?
『気づいたら水底に転がってた、なんて事はしょっちゅうです!!』
しょっちゅう水底を転がってたの!?
『それくらいしか楽しみがなかったので!流されるか、寝てました!』
すごいな!?
生き方も、物理的にも、流されまくってるな!
フリーダムな生き物だな水精たち!
「えっと、じゃあ、今幸せ?」
『はい!ご主人様のおかげで、毎日笑い転げてます!!』
よし、こいつリリースしようか!
『ミューズの腹筋が割れたら、ご主人様の所為なのですよ?』
そこまで!?
「そんな笑える毎日をすごしてないよね!」
『そんなことありません!エミリアとご主人様のバトルを、いつも楽しく拝見してるのです!!肉食エミリアに対して、ご主人様はいつまで逃げきるのか!?もう!ハラハラドキドキが止まりません!!』
よし!1回湖に投げ込んでやる!!
水精だし、大丈夫だよね?
『うびょぉぉぉぉぉぉぉぉ・・・!?』
僕は、久しぶりに全力投球をした。
「痛っ、Lvが上がっても、全力で動くと痛いんだね。防御も上がってるけど、力も上がってるから、身体への負荷はなくならない訳だ。」
それにしても、見事に飛んでった。
今、着水。
飛び過ぎて、着水の音が聞こえてこない。
「・・・おぉ!?」
ミューズが、水面を滑る様に移動して戻って来た。
いったい、どうやって?
『ひどいのです!ひどいのです!!急に投げるなんて、ご主人様は非道なのです!』
「急じゃなきゃいいの?」
『そうです!そういう遊びもあるのです!!人間の子どもは楽しそうでした!ミューズには・・・、微妙な遊びですね。いえ!地上の湖ならイケるかもしれません!!』
「やめて、湖のお水飲み干さないで。みんなが困るからね。」
『ちょびっとにしとくのです、ちょび〜っと!』
絶対に嘘だ!
いや、この子はちゃんと言う事を聞いてくれる。
だから、嘘ではない。
ふざけているだけなのだろう。
可愛いミューズの頭を、クリクリと撫でてやる。
穏やかな時間だ・・・。
きゃーきゃー言って、ミューズが喜んでる。
「でも、4階層に来ると、宝箱の事も思い出すよね。」
『そうなのです!ご主人様が見事にブラストさせましたからね!!』
「ごめんね、でもわざとじゃないよ?」
『わざとじゃないからこそ笑えるのです!!あれこそ配信・・・、ご主人様落ち着くのです!お水を飲み干さないでぇ!!?』
僕は、持って来たペットボトルを一気飲みしてやった!
『あんまりなのです!!ひどいのです!ミューズもグレてやるのですよ!』
ミューズはおもむろに、僕のお昼のおにぎりを頬張った。
プルプルと泣きながらも、口に押し込んで行く。
ミューズには、やはり美味しく感じないらしい。
とっても辛そうだ・・・。
「・・・ミューズ、無理するな?」
『ぶえっ・・・。』
ミューズが、吐き出したごはんを回収する。
小さな子は、苦手な野菜なんかでよくやるんだよね。
もったいないし、僕がいただいておく。
『・・・グ、グレるのも、大変なのです・・・。』
ミューズをソッと抱き上げて撫でてやる。
「僕も大人気なかったね、ごめんね。」
『ミューズも、からかい過ぎたのです・・・。』
こうして僕たちは仲直りする。
『さっきの話しで思い出したのです。』
「さっきの話し?」
『水底を転がってた時に、宝箱を見かけたのです。』
マジで?