15話
ギルドに向かって歩きながらのQ&Aだ。
「幸太だよ、藤川 幸太。藤川が姓で、幸太が名前だよ。幸太の方で呼んでほしい、その方が呼ばれ慣れてるからね。」
「分かったわコータね。」
「いや、ソフィア。幸太だって。」
「え?コータでしょう?どこか違う?」
おう、自動翻訳機も固有名詞の発音までは調整しかねるようだ、まさかの弱点だったな。
それにしても、ジト目さんはすごいな、発音が完璧だ。
耳が良いってやつだろうか?
何ヶ国語も話せる人なんかがそうだっていう。日本語には存在しない、濁音や半濁音が聞き取れて、発音出来る人たちだ。
まあ、確かに聞き取れなきゃ、発音出来ないのは当たり前だよね。
「大丈夫ですよソフィアさん。十分に通じますから、気にしないで下さい。」
ソフィアさんは、いまだ何が違うのか気になってる様子だ。
本当に、気にしないで下さい。
なので、ちょっと別の所に話を投げてみる。
「ミラさんは、とっても耳が良いんですね。」
ミラさんってのは、ジト目さんの事だ。今日はジト目してないけどね。
頑張って笑顔で話してるつもりだ。
緊張しっぱなしだ、もしかしたら笑顔が引きつっているかもしれないけど、許してほしい。
外国人女性に囲まれて話す経験なんて、今までした事ないからね。しかも、美人だよ!?
いや、日本人女性でも囲まれる事なんかないけどね。
僕はアホな事を考えていた。何か彼女たちが困惑している様子で、返答を返してくれなかったからだ。
どうしたんだろう?さっきまで普通に喋っていたはずなのに。
ミラさんが耳を隠して、少し赤くなっている。
「コータは耳フェチなの?」
「はぁあ!?」
うん、変な声が出た。
僕は慌てて弁明した。
翻訳ミスなんだろうけど、それはないだろう!
翻訳機!ちゃんと仕事しろよ!!
「ああ、そういう意味ね!まさかのカミングアウトに、私驚いちゃったわ!」
「あはは・・・、翻訳機も万能じゃないし、しょうがないよね。」
僕の方が死ぬほど驚いたわ!!
「ああ、なるほどね。ソフィアやエミリアより私が良いなんて、特殊で危ない性癖の持ち主なのかと思ったわ。」
毒が強いなミラさん!
ちゃんと翻訳出来るじゃないか翻訳機、なぜさっきだけミスった!?
「そういう事言わないの、ミラにもきっといい人が見つかるわ、ね!」
ソフィアさんに急に同意を求められて、僕は慌てて頷いておいた。
コメントし辛い所だったので助かった。
「まあ、あたしたちも彼氏なんて居ないけどな!居たら女3人でダンジョンなんて潜ってないだろう?」
「それもそうね!」
そうか、2人にも彼氏は居ないのか・・・。
2人は美人だし、僕には全く縁がないだろうけど、ちょこっとだけ、ちょこっとだけ嬉しい。
それが、顔に出ていたのだろう。
「少年、頑張れ。」
ミラさんが、ジト目で言ってきた。
いや、少年って、お前さんいくつのつもりだよ?
通訳、翻訳、変換あるあるですよね。
アメリカ人とか、よくloveって使うんだけど、直訳すると意味不明な文章になったりするんですよね。
ニュアンスって言うんでしょうか?その辺の機微が、上手く噛み合わないんですよね〜。
難しいものです。