144話
ミューズに、電流よりも早く全身を駆け巡る物質の存在を示唆された。
それは、仮称『魔素』。
ミューズの仮説では、別ルートを通って全身を駆け巡っている訳ではなく。
今ある神経を伝って、脳細胞の隅々まで行き渡るのではないかって、事だった。
要するに、覚えた事が、キチンと脳に残るって事だ。
それも、常人の何倍ものスピードで学習が可能だ。
何しろ、電流よりも早く脳を駆け巡るんだから!
そこに、さらに従来の、記憶術を掛け合わせた、『ミューズ式勉強法』なるものを絶賛実施中だ!
『エミリアは泣いていた!』
「そこ、ナンシーだっただろ!?なんでエミリアにしてんだよ!」
『エミリアにした方が、幸太の覚えが良いからに決まってます!!それより、さっさと英訳するのです!まったく、幸太はどんだけエミリアが好きなんですか!?この頭は、どれだけエミリアが詰まっているのです!?』
ミューズが、ペチペチと僕の頭を叩きながら聞いてくる。
「・・・9割?」
『9割!!?そんな事になったら、人間は生きていけないのです!!せめて2%くらいにしておくべきなのです!幸太には生存本能というものがないのですか!?』
2%って少なくない?
もうちょっとあると思うんだよね。
『常識的な知識や、見た映像の高低差の認識。そういった普段何気なく使ってる脳の部分にまでエミリアに侵されてたら、まともな生活は送れないのです!!』
そうなんだ・・・、知らなかったよ。
『その時、アデレードの胸は揺れた!』
「1603年?」
『それじゃあ、江戸幕府が開いちゃうのです!あれ以上胸元を開いたら、アデレードでも溢れるのです!!でも、良いですよ!その調子なのです!!』
それより、本来の問題文はなんだったんだろうか?
アデレード先輩の映像だけが、頭に残って困るんだけど・・・。
大政奉還の年号の問題だったのかな?
1867年?
あっ、ゴブリンシャーマンだ!
『呪いの指先』を出せ!このやろう!
遥君の装備代にしてやる!
『彼女の胸はとても柔らかかった!』
「she・・・、誰が言うか!?」
『ゴブリンに、持ち逃げされるのです!』
ミューズに指摘されるまでもなく、僕の『魔眼』はそいつの姿を捉えていた。
だから、ミューズにツッコミを入れるとともに、僕はゴブリンに刀を突き刺した。
『どちらにもツッコムなんて、高度なギャグなのです!!』
「ついだよ!つい!」
「それよりも、こんなんで覚えれるの?」
『実際に、幸太には効果が出ているのですよ?まあ、記憶術の一つなのです。他の記憶とともに脳に入れておくと、何かの拍子にスルッと出て来るのですよ。ミューズとしては、「記憶の宮殿」とか「鈴なり式」って言われる方法だと思っているのです。』
・・・うん、ごめん!
ミューズが何を言ってるのか、全然分からない。
えーっと・・・、記憶術の、名前?
『テストの前に、明日のドイツとの情報の取り引きを注意した方が良いのです!』
確かにそうだ。
いくつか、状況を想定してみた。
最悪なのは、個室に通されて、そのまま拉致って場合だろうか?
相手が、すでに情報を持っていた場合も、嬉しくないね。
ただ、恥をかきに行くだけって事になってしまう。
他には、どんな可能性があるだろうか?
値切られた場合?
こちらを、怒らせて来るなんてどうだろう?
それこそ、アデレード先輩みたいな、お色気担当とかいたらどうしよう!?
いや、半数以上が女性のパーティーに、そんな事する馬鹿はいないね。
暗殺とか!ないね。
自国の大使館で暗殺って、両国の関係性にヒビが入るってレベルじゃないよ。
あとは・・・。
あとは・・・。
あとは・・・。
『静香みたいな役割の人に、注意が必要なのです。』
「ああ〜、なるほどね。こちらの情報が、根こそぎ吸い上げられちゃうね。」
『そうなのです!』
武技なら、魔眼系スキルだし目が光るよね?魔法だと厄介だなぁ・・・。
「もしかして、鑑定ってレジスト出来る?ミューズその辺わかる?」
『みゅ?ミューズは、鑑定された事がないから分からないのです!』
うん、レジストは出来そうだ!
僕は、ミューズと出会ったその日に鑑定しようしたはずだ。
ただ、アイテムのレジストは難しいかもしれない。
極力隠して持って行くしかないか・・・。
・・・大使館に武装していくのか、捕まらないかな?
でも、探索者だし。武装してても、おかしくはないよね?
ギリギリかなぁ・・・。
部屋に、盗聴機が設置されてる可能性も高いんだっけ。
ミラがそんな事を言ってたね。
ふぅ。
自分で提案しといて、気が重くなってきたよ・・・。
「それにしても、今日はドロップが多いね。」
『サッサと教科書の内容を覚えないと、ドロップアイテムを置いて帰る事になるのです!!』
えぇ!!?
休憩中に見直せって事じゃないの!?
リュックを圧迫するために、持ってきたの!?
鬼なの!?




