141話
さて、日本初のダンジョンの生配信を終え、貴重なアイテムの鑑定を終えた僕たちは、どうしたかというと。
僕の部屋に集まっていた。
ギルドにいても、いやに周りからの視線が気になるし。
しょっちゅう話しかけられるし、これからの相談を出来る雰囲気じゃないんだよね!
だから、1度ギルドから離れたんだ。
その結果が、僕の部屋って訳だ。
「よし!とりあえず、お疲れ様。今回の収支報告としては、収入は真っ黒なほどなのに、運用したいアイテムが多過ぎて、活動資金自体は減ってしまっているという。前代未聞の珍事だ。」
ミラの言う通り、良いアイテムは売らずにパーティーで運用したい、その方が効率も良いし、おかしな事ではない。
高価なアイテムは売れない、だから現金の方が減っている、そういう事だ。
「支出としては、遥の小手とエミリアの槍が修繕不能で廃棄だ、これが160万くらいだ。それから、みんなの装備の修繕費な?これが、30万くらいだ。1人だけ、一撃も攻撃を受け付けなかった、どっかのキチガイみたいなのがいるけど、これは考えるだけ無駄だから、気にするなよ。」
ひどい!?
大変な戦闘の中、頑張って避け切ったのに!
「それから、一応ポーションも開封した事になってるから、そのつもりでいろ。1度開けたポーションは転売は出来ないからな?」
「詐欺が頻発したから、だったか?」
「そうだ。減ってはきているみたいだが、未だなくなりはしないな。」
エミリアの質問にも、スムーズに答えている。
「ドロップや、要らないアイテムの販売で入ってきたのが、173万だ。残したアイテムが『羅シャツ』『リザードマンの鉾』『ダイヤモンドの指輪』『骸骨の杖』の4つだ。『骸骨の杖』は性能上アデレードで決まりだろう、『羅シャツ』はどうする?」
『骸骨の杖』
高位シャーマンが愛用した呪いの杖。
魔法攻撃力:+13%
攻撃力:13
デバフ成功率上昇
魔法:ダイレクトペイン使用可
凄まじい性能だった。
ただ、安定のゴブリンドロップだ、見た目の悪さも凄まじい・・・。
頭蓋骨から背骨が伸びていて、肋骨まである杖だ。
しかも紫色した、いかにも呪われそうな品なんだ。
いくら、これが『ゴブリン・キング』のドロップだからって、女性である、アデレード先輩に持たせるのは気が引ける。
「アデレード先輩、お願い出来ますか?」
「幸太、気にしないで、この程度の見た目なんでもないわ。みんなで『ゴブリン・キング』を倒した証しを私が預かるのだから、誇りに思うくらいよ。」
あれが、トロフィーか・・・?
正直、遠慮したいな。
先輩が受け入れてくれた以上、僕がグダグダ言ってもしょうがないな。
さらに良いものが出るまでは、我慢してもらうとしよう。
「『羅シャツ』はエミリアかソフィアがいいと思う。遥って手も考えたけど、遥はあまりパワータイプってガラでもないしね、パーティーの長所を伸ばすのに使った方が、効果的だと思う。数があるなら、みんなで着ても良いけどね。」
「ふむ、防御力、攻撃力を考慮して、エミリアに使ってもらう事にしようか。」
誰からも、異議は出なかった。
「後の懸案事項は、遥の小手をどうするか。それと、情報の売却だな。どの程度の情報を売るつもりだ?」
「うん。遥の小手は2ー2だっけ?」
DEF:2、MDEF:2の意味だ。
「いや、2ー1だな。そうだったよな?」
「うん。」
遥君の装備には、お金をかけてる。
正直、2ー1減ったくらいなら、支障も出ないほどだ。
それでも、いざという時の事を考えると、早めに何か用意しておきたい。
「ノルウェー産のグローブは如何でしょう?見た目の派手さはありませんが、安くて同程度の防御力だったはずです。」
「ああ、ソフィアが言ってるのは、革の小手みたいなやつの事だな?あたしのアームガードほどゴツくないし、良いんじゃないか?」
最近、ギルドのショップを見ていなくて、思い出せない。
確か・・・、1ー1だったか、2ー0だったか、そんな性能だったはずだ。
「遥、それでいいか?」
「もちろん。僕の装備は、ほとんどパーティーの資金で出来てるからね。文句なんてあるはずないよ。」
「「遥」・・・遥、それは違うよ。みんなでやっていくんだから、自分が思った事を言って良いんだよ。」
ミラも注意しようと思ったのだろう、だけど今回は僕に譲ってもらった。
「遥、私がもらった『ダイヤモンドの指輪』の値段、ご存知でしょう?」
「あたしの槍もだな。」
「私の杖も忘れないでね?」
みんなで高額なアイテムをあげた、どれも1度手放せば、手に入るかどうかわからない逸品だ。それゆえ精算のしようもない。
それを、自分たちが持ってるのに、そんな事を言うのかと、みんなは言ってるんだ。
「ご、ごめん。・・・それなら、黒いグローブが、前ギルドショップに売ってたよね?あれが良いんだけど、いいかな?」
「ちょっと薄手の生地で、柔らかそうなやつだな?ソフィア、あれなんだっけ?」
「確か、カナダ産の『サーペントグローブ』?そんな名前でしたよ?1ー2でしたね。蛇ですよ?大丈夫ですか?」
「いや、まあ、グローブになっちゃえばね、蛇といえども何ともないよ。」
ソフィアが変な所を気にしてる。
遥君は蛇が苦手なのか?今度聞いてみるか?
まあ、いいか。
「・・・う〜ん、あれだと予算が厳しい。また今度って事になるけど、いいか?」
「うん!構わないよ。それで、気に入った物が手に入るなら。」
「よし!この話はこれでいいな。後は情報売却の話を詰めておこうか。」
この後も、話し合いはしばらく続いた。