13話
素手ゴブリンを倒した僕は、前方の女性たちがナイフ持ちのゴブリンと戦っているのを見学している。
ゴブリンが二手に分かれたんだから、しょうがないんだけど。元々僕の追っていたゴブリンと戦闘して、女性が傷つくと後味が悪いから、危なそうなら参戦する予定だ。
ゴブリンが彼女たちに接近する前に、声をかける事も出来たのに僕はそれをしなかった。自分が安全にゴブリンを狩れる事を優先して、声をかけなかったんだ。
だからこれは、僕の自己満足だ。
優しさなんかじゃない。
「このぁ!ゴブリンのくせに武装するなんて生意気な!」
「いえ、ゴブリンでも武装くらいするでしょう?」
「ソフィア冷静なツッコミは要らない、これはきっと気分の問題だから。」
「そうなの?」
「そうそう!あたしのラーメン代になれ!!」
ああ、前に会った3人組の人たちだ。
魂のこもった叫びとともにゴブリンを斬りつけているのが、一番背の高いモデルさんだ。
じゃあ超美人がソフィアさんかな?
ゴブリンと戦ってる最中なのに、賑やかだな〜。
それに、華やかだね。
・・・ジト目さんが、ジト目じゃない!?
あれ、普通に目を開いてるよ、なんで?どういう事?
あっ、モデルさんの振り回したナイフがゴブリンに当たった。
これはもう、決まりかな?
一応、挨拶だけして帰ろうかな、その方が気分が良いよね。
人の戦闘をじっくり見ていて、黙って消えるのは感じ悪いし。もしかしたら、気にする必要はないのかもしれないけどね。
僕がやられたら、気になって嫌だしね。
あれ?ゴブリンの奴たいして出血してないぞ?
3人とも ナイフを当ててるのに・・・。
『ゴブリン・ナイフ』じゃなくて、市販のナイフなのか!?
結構違うものなんだな。
僕は、変なところで『ゴブリン・ナイフ』の性能を実感していた。
え?逃げた?
「あっ!ゴブリンがまた逃げた・・・。」
「ラーメン代が!?」
「・・・もう、またぁ。・・・そこのあなた逃げて!」
おっと、ゴブリンがこっちに向かって来る。
悠長に見学してる場合じゃなかった。
これ、やっちゃって良いよね?
殺っちゃうよ?
良いよね?
ごっつぁんです!
ナイフをメチャクチャに振り回しながら走って来るゴブリンを、僕は脇に避けながら、すれ違いざまにナイフを叩き込んだ。
勢いがつき過ぎて、僕の手までナイフがゴブリンの腹に沈み込み、一撃でゴブリンを黒い煙に変えた。これには、僕自身が1番驚いた。
「すごい・・・。」
彼女たちも驚いた顔をしてる、驚いた顔も綺麗ってのはすごいな。
僕は混乱した頭で、バカな事を考えていた。
何しろ、僕が1番驚いてるからね。
「あなた強いんですね。」
超美人の、推定ソフィアさんが話しかけて来た。
「・・・いえ、たまたま、当たり所が良かったんでしょうね。」
ちょっとつっかえながらも、僕はなんとか応えを返す事が出来た。
足元にナイフが落ちている、さっきのゴブリンがドロップしたのだろう、僕はこれ幸いにと話を繋げる。
「運が良いですね、ナイフが出ましたよ。どうぞ。」
僕は、ナイフの刃を持って彼女に差し出す。
下手すると、横殴りでギルドに警告を受けるかもしれないから、これぐらいは妥協しないとね。
僕としてもラーメン代、もとい5000円は惜しいけれど、今回は彼女たちの獲物だろうと思っているから、そうした。
こういう時、ドイツ人はどんな反応をするんでょうね?
実際には分からないので、適当に書きますね。




