128話
幸太たちが美容院に行った日の、ミラさん視点です。
幸太のスキルが、支援系である可能性はほぼ間違いないと思っていた。自分の推測に、自信があったし、状況的に間違いないと思っていた。
だけど、エミリアを助けた時、幸太は回復魔法を使った。この時、私の自信は呆気なく崩れた。支援系スキルよりも狙われる、回復系スキル所持者だ。己のスキルを隠すのは、当然の事だ。隠さない奴は、むしろ阿呆だ。
ただ、遥の奴が支援系スキルを持っていた。
彼は、それを隠す為に協力しているのだとも思えていた。いや、実際に協力していたのだろう。
だけど、まさか本人が【支援魔法】と【回復魔法】の両方を持っているだなんて、誰が思うだろうか?
この世界では、スキルは貴重なんだ。
Lv上げは命掛けなんだ!
神に愛されているとしか思えない。いや、この欲望渦巻く世界では、悪魔に愛されていると表現した方がいいのかもしれない。
希少で、貴重で、危険だ・・・。
幸太に打ち明けられて、すぐの土日に、その恩寵を体験した。
想像を絶する効果だった。
私やアデレードが、簡単に4階層のゴブリンを撲殺し。ソフィアが盾で群れごと弾き飛ばす。
普段から攻撃担当のエミリアと遥は、もはや弱点もなく、無双しているかの様だった。
強化されたアデレードは、全ての敵を弱らせ、私たちでなくとも簡単に倒せる有様だ。
遥の支援と違って穴がない!それが、圧倒的な安心感に繋がっている!
そのうえ、奴にはMP切れすらなかった・・・。
ダンジョンにいる間中、支援を維持し続けたんだ。
快感すら覚える2日間だった。
それ故に、危険の大きさも計り知れない!!
幸太は、単純にダンジョンが好きなんだと思っていた。
だけど、狂人の様にダンジョンに潜り続ける、彼の必死さを、今初めて実感した。
彼はぶっちぎると言った。
圧倒的な速さでLvを上げ、悪意ある者から、その身を守り通す気なのだろう。
彼の中では、そのプランが、すでに出来上がっているのかもしれない。
1パーティーで、『ゴブリンの集落』の陥落。
これまでの私ならば、鼻で笑い飛ばす戯れ言だ。だけど、あの2日間を体験した今では・・・、可能だと、私たちならば可能だと!そう、思ってしまう。
まるで、熱に浮かされているかの様で、冷静になれない。
「ミラ何か用?スキルの話なら、ここではしないわよ?」
私がアデレードを見つめていたのに、気づいた様だ。
私は、誰かと話したかった。
「アデレードはアレ、やれると思うか?」
「彼がやると言ったのです、ならば成し遂げるでしょう。」
「あいつは、スーパーマンじゃないんだぞ?」
「それでも、私をドン底から救ってくださいましたわ。私にとってはヒーローですから、それだけで信じるには十分ですわ。」
エミリアを助けてくれた時、私もそう思ったものだ。
それでも2人の犠牲者は出ていた。いや、余罪の事を思うと、もっと多くの女性が被害にあっていたはずだ。
完璧なんかじゃない。
「彼は、私たちなら出来る。そう言ったのよ?」
アデレードが、挑発するかの様に、笑みを浮かべながら言った。
そうだ!あいつは確かにそう言った!
レベルの差に、強さの差に、いつもその背ばかりを見せてきたあいつが、やっと、隣に立てとそう言って来てるんだ!
これに、応えない訳にはいかない!
「残り時間は僅か。それでも、やれるところまで準備を進めましょう。」
「私の、腕の見せ所だな。」
「その前に、日本語のお勉強ですけどねぇ。」
すぐに、日本語の勉強が始まった。
まったく、締まらないな!




