127話
「・・・すごい。」
『すごいのです!すごいのです!まるで魔法みたいなのです!!』
ミューズの言葉に、僕も同意だ。
だけど、ファンタジーの住人に魔法みたいって言われても、お姉さんが返答に困るだろうね。
まるで、自分じゃないみたいだ。
いや、鏡越しに見えるお姉さんは、やりきった感じで、満足そうにしている。
ミューズの賞賛に、満更でもない様子だ。
切ってる最中は、ミューズの反応に一々笑っていて、心配だった。
『はぁ♪ミューズの寝床が綺麗になって行くのですぅ♪』
「ぶふっ・・・、ミューズちゃんの寝床なんだ?」
『はぁ♪ジャングルの様な視界が、開けて行くのですぅ♪』
「・・・くくっ、ミューズちゃん、大変な所に住んでたんだね。」
『足の裏をくすぐっていた毛も無くなって、最高なのです!』
「・・・ぷぷっ!この頭に乗ってすごしてたのね?」
『このガーっはなんなのです?』
「これ?これはドライヤーよ、見た事ない?」
『ないのです!』
『それは何を付けてるのです?』
「これはワックスよ、見ててねビシッと決めてみせるからね!」
「ミューズ、お姉さんの邪魔しちゃダメだぞ?」
『違うのです!ミューズは環境整備を学んでいるのです!!』
「ぶはっ!?環境整備!そっか、ミューズちゃんは、これからもこの頭に乗って生活するんだ!じゃあ、居心地の良さは大事よね!あはは!ぶふっ、あは、くくくっ!苦しいぃ!」
この時は、このお姉さん大丈夫かと心配になった。
だけど、見事に決めてくれた。
僕は鏡を何度も見て、その出来に驚きを隠せない。
カシャっと音がして、僕が振り向くと、ミューズが僕のスマホで写メを撮っていた。
「ミューズちゃん、それはどうするの?」
『これはエミリアに送るのです!ご主人様のナイスショットを送ると、エミリアがお水をくれるのです!!この間の寝顔は大ウケだったのです!』
ちょっと待とうかミューズ。
僕のスマホで何やってんの!?
これを聞いてお姉さんたちが馬鹿ウケだった。
「・・・有料サイトまでは使うなよ・・・。」
僕が言えたのは、このくらいだった。
あまり、強く叱るのは憚られたんだ。まあ、そこまで悪い事をした訳でもないしね。
ただ、肖像権だっけ?そんな物もあるし、ミューズには教えといた方がいいかもしれない。
後で問題になっても困るからね。
お姉さんと一緒に自撮りして、僕の散髪をした美容師さんとして、エミリアに紹介していた。
あの小さな手で、器用な事だ。
「そういえば幸太、他国のエージェントなんて本当に来るの?」
「うん、それらしい人が、この間、何人か見られたよ。」
「僕も気をつけた方がいいんだろうか?」
「どうかな?ソフィアが映像を持ってるから、1度見ておいてもいいかもね。」
僕は、この間あった事を、遥君に説明した。
エミリアに付き合って、ラーメン屋に行ったんだ。男性率が100%を超えそうなあのお店に。
それなのに、普段はエミリアくらいしか女性が来ない店内に。僕らを追って、来るわ来るわの大珍事、お店の人も、お客さんもビックリしてたね!
このお店に、外国人ってだけで驚くところなのに、女性が次々と入って来たら違和感あり過ぎだから!
もうちょっと下調べをして、状況判断の出来るエージェントじゃないと、怪しくて仕方がないよ。店主も、警察を呼ぶか悩んでる感じだったからね!?
ソフィアが、フレンドリーに話す振りをしてカメラを回してたのは、すごいファインプレーだったよ。
おかげで、顔が分かっちゃうからね。