126話
家でやった会議の後、遥君はその場で美容院に電話して予約してくれた。
ミラたちがいない、月曜日の放課後すぐの時間帯だ。
1度帰って、着替えて、すぐに美容院まで直行した。
ダンジョンで稼げていなかったら、確実に断っていたお誘いだった。
だけど、それなりの収入を得る事が出来ていて。なおかつ、エミリアに少しでも良く見られたいという、思惑もあって、受け入れたんだ。
普段なら、1500円カットの床屋に行くところなのに。
オシャレな美容院だよぉ・・・うぉぉぉ・・・。
シックな外観、おしゃれで綺麗な店内、なんだかキラキラして見えるよ・・・。
ここに入るの?マジで?
遥君は中かな?
それとも、まだだろうか?
入るべきなんだろうか?ここで、待ってた方がいいのか?
「幸太早かったね!僕の方が家から近いから、遅れる事はないかと思ってたよ。ごめんね、待たせた?」
「いや、緊張して、早く来ちゃっただけだから・・・。」
『ミューズも、これでモサモサから解放されるのです!どれほどこの日を待ちわびた事か!!』
「あははは!昨日の探索では、オールバックにしてたもんね!」
あれな。ミューズに水をぶっかけられて、ぺったんこにされながら戦闘してたな。
アデレード先輩には受けてたけどね。
みんなして、他人の頭をどうするか話してるんだ。
最終的には、ソフィアがアフロにしましょう、とか言い始めて、みんなして笑ったものだ。
もちろん、アフロにする気はない!
入店すると、華やかな挨拶の声が飛んで来た。
外から見るよりも、より一層、華やかでオシャレだ。
僕、メッチャ場違いな感じがするんですけど・・・。
「予約の皇です。今回は無理を言って申し訳ありません。」
「いつも、ご利用ありがとうございます。大丈夫ですよ、お友達のご紹介は大歓迎ですよ。お連れ様の美容師は如何致しましょう?」
「今回は、僕の方に誰か他の人をつけて下さい。」
「畏まりました。では、その様に準備させて頂きます。直ぐにお呼びします、かけてお待ち下さい。」
なんか、清潔でエレガントな感じの女性が出て来て、遥君と話して去っていった。
待合席に座ると、視線が上を向いて、一段と豪華な様子が目に入って来る。
下品にならず、空間が上手く区切られている。
所々に配置されてる植物が目に優しく、優雅な感じがする。
いや、わかんないけどね!!
僕の感覚なんて、あてになんないから!
「お待たせ致しました。皇様とお連れ様ですね。申し訳ありません、お名前頂いても良いですか?」
「・・・あ、藤川です、藤川 幸太です!」
「畏まりました、では藤川様。ご案内致しますね、こちらにどうぞ。」
メッチャメッチャ綺麗な人が出て来た!!?
ソフィアで見慣れてなかったら、とても返事が出て来ないレベルの綺麗さなんですけど!?
え?美容師さんだよね?
何でそんなに綺麗なの!?
今から、この人に髪切ってもらうの?
訳がわかんないんだけど!?
言われるまま椅子に座り、床屋の椅子より豪華な事にまず驚いた。
また、空間の使い方が贅沢だ!
「本日はどの様になさいますか?」
「・・・え、えーっと・・・。」
僕にシートを被せながら、お姉さんが聞いてくる。
近いから、近いから!
「ああ、姉さん。姉さんの感覚でこざっぱりさせちゃって、出来るだけ長くない方が良い。」
「良いの遥?本人に聞かなくて?」
あれ?姉さん?
遥君のお姉さんか!?道理で綺麗な訳だ!
お姉さんの口調が急に砕けたから、きっと間違いないね!
『やっちゃうのです!!ズバーッとやっちゃうのです!もうモサモサは耐えられないのです!!』
「・・・えっと、この子は?」
足元に走り寄って来たミューズに、お姉さんが困惑顔だ。
「あ、僕のテイムで、水精のミューズです。ミューズの言う通り、やっちゃってください。僕には髪型とかよくわからないので。」
ミューズが来てくれたおかげで、ちょっと緊張が解けた。
おかげで、何とか自分でお願い出来た。
「そお?じゃあミューズちゃんやっちゃうわね?」
『はい!お願いするのです!!』
こうして、僕の散髪は始まった。