12話
僕が世間の厳しさに戦慄している傍ら、高校の入学説明会も終わり、制服が手元に届いた。
まあ、僕はこれ以上お父さんに負担をかけない為に、近所の売買サービスで卒業生の制服を安く譲ってもらった。
僕には若干大きくて、少しぶかいけど、背に腹は代えられない。
通常は1万5000円〜2万円くらいするところを、たったの1500円だ。文句を言ったら罰が当たるってもんだね!
連日ダンジョンに通い通して、1日1ゴブリンを目標に今日までやってきた。
だけど、入学式まで残すところ後3日と迫って来ている。
いい加減そろそろ、Lvアップを経験してみたいものだ。
学校が始まれば、放課後と土日しかダンジョンに潜れない。
そうなる前に、是非とも僅かな達成感を得たい今日この頃なのです。
ちなみに、ギルドの綺麗なお姉さんにはしょっちゅう会えていますが、ダンジョンでお会いした3人組は、遠くから見つけたくらいで、あれからはお話し出来ていません。
まあ、そんなもんでしょうね。
ちょっと残念なだけで、悔しくはありません。本当ですよ?
何しろ、個人的にはバインバインのお姉さんが・・・!ゲフンゲフン・・・、忘れて下さい。
「・・・2匹か、殺れない事はないけど・・・、どうしようかな。」
1匹はナイフ、もう1匹は得物を持っていないようだ。
1階層には時々いる、素手での格闘が強いって訳でもなく、単純に武器すら持っていない個体だ。正直狙い目な獲物なだけに、僕は諦めきれないでいた。
僕はすすきの陰からチラリと覗き、ゴブリン共が隙を見せないかと虎視眈々と狙いを定める。
ナイフ持ちを先に襲ったらどうなるだろうか?
素手の奴に躍りかかるのはどうだろうか?
僕は頭の中で、シミュレーションを繰り返す。
結果は、怪我をする確率が50%を超えると判断、僕は渋々撤退を選択した。
まあ、僕の適当なシミュレーションだから、本当にそんな確率なのかは分からないけどね。でも、自信がない時は退いた方がいいんだ。
何しろ、自分の命がかかってるからね・・・。
「・・・、・・・?」
ん?何か聞こえた。
僕は動きを止めて、ゴブリン共に気づかれないように頭を下げる。
「・・・そんな事言っても、・・・、・・・!」
「まあまあ、・・・熱くならずに・・・・・・。」
女性の声だ。
だんだんと、こっちに近づいて来てるみたいだ。
僕は若干焦りながらも、ゴブリンの位置と声の聞こえてくる方角を確認する。
都合の良い事に、声の主は真っ直ぐこちらに向かっている訳ではなくて、僕とゴブリン共に対して平行に前進しているようだ。
上手くやれば、ゴブリン共が声の主に引きつけられたところを、背後から襲える絶好の位置だ。
僕は湧き上がる嬉しさを必死に抑え、声の動きとゴブリンの動向に注視する。
ゴブリン共も声に気づいたようだ。
ナイフ持ちが素手ゴブリンに、何か指示を出している。こんなところ僕は初めて見た、ゴブリンが連携を取って動こうというのだ。
ゴブリン共が何を言っているのか、僕には分からないけど。その動きから、挟み討ちを狙っているんだという事は分かった。
ナイフ持ちが側面から攻撃して、素手ゴブリンは背後に回るつもりのようだ。
僕は素手ゴブリンの後をソッと尾ける。
「もう直ぐ学校が始まるね、クラスメイトと馴染めるか少し心配だわ。」
「社交的なソフィアなら何も心配ないよ、これがあれば言葉も通じるしね。それよりも今日のお昼はどうする?ラーメン屋に行かない?」
「・・・またラーメン?エミリアどんだけ気にいったの?」
「この間は豚骨ラーメンだったじゃない、今日は二郎系にチャレンジしてみたくてね!」
豚骨に二郎系か、結構ガッツリ派の人たちだね。
個人的には、僕も今日は二郎系の汁なしラーメンをガッツリ掻き込みたい気分だよ。濃いめ、ニンニク増し増しでよろしく。
おっと、声の主の後ろ姿が見えて来た、そろそろ・・・殺りますか!
僕はおもわずニヤリと笑い、素手ゴブリンに背後から急接近して、一気に決める!!
「ッ・・・グッ・・・ァ。」
スマートに一撃って訳にはいかないけど、逃げる事も、戦う事もさせずに、一方的に倒しきった。
思い描いていた通りに倒せた、僕にしては上出来だろう。
2匹倒す事は出来なかったけど、僕は満足だ。
前方では、声の主の女性たちが、ナイフ持ちのゴブリンと熱い戦いを繰り広げている。
Lvが上がってなくても、少しずつ強くなってる姿が描けたかなっと思っております。
Lvとステータスだけが全てだと、小説としてつまらないですからね。