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114話

 ミューズと一緒にダンジョンを出たら。

 テロ事件で仲良くなった、自衛隊のお兄さんが目を点にしてた。


「あ、こんにちは。先ほどは、情報をどうもありがとうございます。」


「お、おお、おう!って一体なんだぁこりゃぁ!!?」


 なんだろうね?

 僕に聞かれても分かりませんよ。


『みゅ?これじゃないのです!ミューズなのですよ!』


 うん、ミューズが僕の頭をペチペチ叩きながら抗議してる。

 きっと可愛いに決まってる、僕も見たい。


 抗議されて、お兄さんはさらに驚いてる。


 いや、モンスターが流暢に喋ってるのが、異常なのかもしれない。

 どちらにしても、自衛隊のみなさんを驚かす事に成功した。


 そんなつもりは、なかったけどね。


『失礼なのです!ぶぅ。』


 ぶぅってなんだろう?

 頬を膨らますボーズ?是非僕も見たいんだけど、ダメかな?


「えっと・・・。」


「4階層に居る、水精の仲間らしいですよ。」


 自衛隊のお兄さんが困っていたので、僕は助け船を出してみた。


「そうなのか?」


『教えちゃダメなのです!教えちゃダメなのです!だって失礼なのです!』


「えっと、失礼しました!自分は豊田駐屯地所属、細井ほそい 輝政てるまさ一等陸士であります!先の失礼を深くお詫び申し上げます!申し訳ありませんでした!!」


『みゅ!!?』


 お兄さんは今度はバカ丁寧に、謝ってるよ。

 これは、冗談でやってるのかな?


 そんな雰囲気でもないね・・・。

 どうすんのこれ?


「ミューズ、お兄さんもこう言ってるし、許してあげて、ね?」


 僕はミューズの頭を撫でながら、出来るだけ優しく声をかける。

 子どもはこいう時、優しく言ってあげなきゃダメだ。


 まあ、頭の上にある頭を撫でてる、変な格好しながらだけどね。


『分かったのです、許すのです!』


「ありがとうございます!」


 お兄さんは、もう少し肩の力を抜いてほしい。

 まあ、水精って強いらしいからね。緊張するのも分かるけどさ。

 だけど堅すぎて、威嚇いかくしてるのかと思うほどだからね!


「ミューズはお兄さん苦手かな?」


『苦手なのです!』


 これにお兄さんは、ひどいショックを受けた表情を浮かべていた。

 このお兄さん、意外に子どもが好きなのかもしれない。



 そこからは、他の自衛隊員の方が対処してくれた。

 曰く、どんな理由であれ、モンスターを地上に出す場合には手続きが必要だと言う事だ。


 種族や管理責任者の名前、管理場所などの登録が必要だ。


 自衛隊員の人も、書類の準備だけはしてあったらしいけど、これまで1度も使った事がないとかで、少し時間を取られてしまった。


 何しろ、各国でテイマーの存在は確認されているものの、非常に稀だからだ。

 その他、研究用途での持ち出しの場合は、事前に研究所などで、書類の準備が出来ている場合がほとんどで、現場の自衛官が書類の準備をする事がなかったからだ。


 後で、ギルドでテイマー登録も必要になるって話だったけど、ギルドの方から人が来てくれた。


 普段から、仲良くしておいたおかげだろう。

 色々と配慮していただいて、助かります。


 まあ、来たのはいつものお姉さんだけどね。




「いやあ、久しぶりの出勤そうそう、やってくれるわね幸太君!」


「お姉さんお久しぶりです。お元気そうで何よりです。」


「ありがとう!でも、退勤時間間近のこの時間に、これは勘弁して欲しかった!」


「それは・・・、僕の所為ではないですよね?」


「まあね!ただの愚痴よ愚痴、愚痴を言う癖がついちゃったのね!」


 この時間に退勤っていうと、定時上がりだろうか?

 かなりの業務改善がなされたみたいだ。


 ギルドの営業時間も格段に短縮されて、ストライキまでやった価値があるってものだろう。


「それで?こちらのお嬢ちゃんなのかなぁ?こんにちは、私は舞っていうの、お嬢ちゃんはお名前言えるかな?」


 うん、安心して任せられるテンションだ。


『ミューズなのです!幸太が付けてくれたのですよ!』


「そうなの?良かったね〜、可愛い名前をもらえて。お嬢ちゃんは種族って分かるかな?」


『ミューズの種族なのです?ミューズは水精なのですよ?』


「水精って、4階層の、あの水精?」


『そうなのです!』


「ええ〜、でも、見た目が全然違うよ?」


『みゅ?形が違うだけで、全く同じものなのですよ?』


「そうなんだ・・・。」


 お姉さん、ガチトーンになってますよー。


 僕の視線に気づいたのか、何とか気持ちを切り替えて続き聞き出す。


「ミュウちゃんのご主人様は幸太君って事でいいのかな?」


『ミュウ?』


「ミューズ、きっと愛称だよ。仲良くなったりするとつけるんだ。」


『おお!?名前を幾つも付けるなんて、人間は変わってるのです!ご主人様って何なのですか?』


「うーん、契約相手ってとこかな?たぶん。」


『じゃあ、幸太はご主人様になるのですね!』


「まあ、そういう事になるね。」


『じゃあ幸太なのです!』


「はい、了解っと!あとは・・・、食べ物かな?ミュウちゃん、好きな食べ物は?」


『みゅ?』


 頭の上で、ミューズが頭を捻っているのが分かった。


「ミューズはお水好きだよね。」


『そうなのです!特に幸太のくれたお水は最高なのです!!ダンジョンのお水は美味しくないのです!』


「ああー、分かるわ〜。あれを飲料水に使えとか、本当に!腹が立つ!!」


 いきなり、同調して怒り出すお姉さんに、僕は引き気味だ。


『お水は大事なのです!』


「そうなのよ!」


『舞は分かる子なのです。』


「いやいやいや。」


 なんか、謎の意気投合をみせている。

 ミューズもお姉さんが気にいったのか、乗り出し気味に喋っている。

 僕としては、落っこちないか心配だ。


「私の飲みかけだけど、一口飲んでみる?」


『頂くのです!』


 え?ちょっと待って。


 ミューズ頭を出さないで。


「え?頭にかけるの?行くわよ?」


 ちょっとお姉さんストップ!!


『おお!?なんか、まったりしてるのです!これもいけるのですよ!』


 僕の頭の上にいる、ミューズの頭にかければ、当然それは落ちて来る訳で・・・。


「お姉さん・・・。」


「え?あっ、ごめん・・・。」


 ひどい目にあった・・・。



「後は、首輪とか、リードとか、ケージとか何だけど・・・。」


「それは・・・、犯罪臭がしますね。僕が社会的に死んでしまいます。」


「そうね。ただ・・・、何か管理下にある事を示す物が必要ね。」


「・・・バンダナとかどうです?」


「ああ!それが良いわね!私ちょっと買ってくるわ!それまでは、出来るだけ近くにいてね。」


 僕が何か返事を返す前に、お姉さんはすっ飛んでいった。

 僕なんてまだまだだと、思わせられる速度だった。

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