113話
僕と彼女の間に何かが走り、繋がった気がした。
彼女もビクッと何か感じた様なのに、気にした様子も見せずに僕の身体を登って来る。
何がしたいのだろうか?
僕の頭を抱え込む様に抱きつき、号令を発する。
『さあ、行くのですよ!ダンジョンのお外へ!!』
どうやら、彼女は僕の頭に乗っかって行く気らしい。
僕は、黙って歩きだした。
彼女が落っこちるといけないので、最初はそろっと動き出す。
ゴブリンなんかが出て戦闘になると、きゃーきゃー叫んで喜んでいる。
これなら、落っこちる心配はなさそうだ。
出口に向かって歩きながら、気になった事を聞いてみる。
「そういえば、君に名前はないの?あっ、僕は幸太、藤川 幸太だよ。よろしくね。」
『みゅ?水精なのですよ?』
「それは種族名でしょう?個人を表す固有名詞の事なんだけど・・・、ないのかな?」
『みゅ〜ん、みゅ?』
「ほら、人間とか、ゴブリンとか、ウルフとか、あるでしょう?それじゃなくて、自分を表す名前だよ。」
『ないのです!』
「そっか〜、・・・ないんだ。」
『ないと、何か問題なのです?』
「いや、えーっと、呼びにくいなって思ってね?ほら、湖にいた子たちの中から、君を呼びたい時とかに困るでしょう?」
『困らないのですよ?探せばいつか見つかるのです。』
・・・時間の感覚がない?
ダンジョンの中では、陽も季節も動かないのは常識だ。
もしかしたら、モンスターは永遠の命を持っているのかもしれない。
半永久的な命ってやつだ。
アンデットなんかに、よく使われてる概念だ。同じモンスターであり、同じダンジョンに生息している事を考えると、何ら不思議ではない。
もしくは、モンスター全般ではなくて、水精という種族的な特性なのかもしれない。
どうしたものか・・・。
『でも、呼び難いのなら、何か名前をつければ良いのです。』
「うん、それもそうだね。どんな名前にする?」
『みゅ〜ん。考えた事もなかったから、思いつかないのです!幸太が何か名前をつけるのですよ。』
「僕がぁ!?」
『みゅ?嫌なのです?』
「そ、そうじゃないけど・・・。」
せ、責任重大だ!
変な名前を付けて、この子がイジメにあったりでもしたら!僕は耐えられない!!
無難で、出来ればみんなに愛される名前を付けてあげなければ・・・!
・・・ポチ、タマ・・・、犬猫の名前じゃないんだから!?
もっと、こう、人間らしい名前を・・・。
エミリア・・・、いや、ダメだろう!
穂波とかは?
どこに水精に妹の名前をつける奴がいる!?
都築さん、和名じゃん!むしろ苗字だし!知り合いだし!!
もっと、水精っぽいやつを・・・。
「ねえ、ローレライとか、セイレーンとか、ミューズなんかどお?」
『みゅ?みゅ〜ん。』
「ああ、ローレライやセイレーンは、ちょっとイメージが悪いね。ミューズが良いと思うんだけど、どうかな?」
『分かりました!今から私はミューズなのですよ!』
僕の頭の上にいる所為で、興奮して喜んでる様子が見えないのが残念だ。
ジタバタしてる様子だけが、頭越しに感じ取れる。
ダンジョンを歩いてる間も、すれ違う全ての人がこっちを見ていた。
やたら見られていた。
だけど、ダンジョンを出ると、さっきまでの比ではなかった。




