111話
重い話題を配信し続けた事を、ミラは許容しなかった。
そのおかげで、上位に居座った訳だけど、このままでは、直ぐにでも陥落するとミラは読んだのだ。
そこで、お笑い会を挟む事になった。
信じられないほど忙しい日々を送っているはずなのに、配信にまで気を向けるミラに、僕は当然、協力を約束した。
配信を丸投げした立場であり、厄介事を持ち込んだ本人だ。だから、どんな事でも協力するつもりだった。
だけど、あんまりだと思うんだ。
裁判ごっこ、ならぬ、断罪ごっこだろうか?
暗い部屋で、僕には、上からスポットライトが浴びせられて、前方にあるモニターにはエミリアに寄り添うシーンが流される。
「被告人、藤川 幸太はエミリア・シュナイダーの胸を揉みしだくという行為を行った、これに相違ないか?」
確かに傷口に手を置いた訳だけど、そのシーンを繋げてる!?
違和感なく、続いてる様に加工されてるんですけど!!
ミラの手を、何度も強引に押し退けてるように見える!?
これも加工したの!?
「ちょっ!え!?聞いてないよ!?」
『見事な加工だねミラ。』
『すごいだろう?苦労したんだ、あれくらい驚いてもらわないと報われないよ。』
『ミラ、ミラ!あたしの胸をもうちょっと盛れないか!?』
慌てる僕をよそに、撮影は続いていく。
「ふむ、あくまでも否認するか。」
「いやいやいや、早送りする必要ないよね!?」
なぜか、その場面だけが、エンドレスに早送りで写し出されていた。
僕は動悸が止まらない。
『これも加工?』
『いや、ソフィア、これはただの早送りだ。』
『なんか、すごいわね。』
「現場には、半裸の婦女子が2人も倒れていた。」
「それは、奴らのやった事だよ!!」
モザイクまみれの映像が写し出され、僕は怒りをあらわにする。
なんで、こんな映像を入れて来た!
ミラに対して、仄かに怒りが湧いて来る。
「ふむ、扇情的な光景だ。にもかかわらず!被告人はエミリア・シュナイダーに固執し!その小さな胸に触れた!なぜだ!!」
いや!胸じゃなくて傷口に触れたんだよ!?
まして、エミリアも、ぺったんこなミラに『小さな』とか言われたくないと思うよ!!
ただ、僕にも少しずつ、今回の撮影の趣旨が分かってきた。
ミラはこうやって、被害女性を視聴者の視線から逸らそうとしてるんだ。
「そ、そ、それは、その・・・。」
考えろ!考えるんだ僕!
『幸太の奴、ここで考えてるな。』
『普通の人ならここで、もっと上手く回避するんだけどね〜。』
『コータさんですし。』
「か、彼女の事が、好きだから?」
『キターーー!!何度見ても良いな!最高だな!!』
『『エミリアおめでとーう。』』
「ふむ、愛ゆえの誤ちだという事か。」
ここで、木槌が打ち鳴らされる。
「判決を下す!被告人、藤川 幸太は絞首刑に処す!!エミリア、後は好きにヤっていいぞ、私たちは席を外すからな〜。」
「幸太また学校でね〜。」
「エミリア、避妊はして下さいね。」
「おーーい!!こんなんで良いの!?」
僕は、エミリアに背後から抱きつかれ、刑にふくした。
ひどい投稿だった、僕への怨嗟のメッセージを沢山頂いた。
同じく、刑の執行を望む声も大きかった。
最後の次回予告で、アデレード先輩の登場を匂わせる内容で終わった。
魅惑の悪女現る。こんな煽り文句をミラは付けていた。
『』は後付けした部分ですね。
未知の手法に挑戦してみた訳なんですが、思った以上に難易度が高い!!
これに懲りずに、今後も挑戦して行きたいと思います。