11話
初めてダンジョンに行った日から、僕は毎日ダンジョンに通っている。
初日に会った美女にまた会いたいとか、ギルド窓口のお姉さんが綺麗だったとか、下心があった事は否定しない。だけど、僕は毎日ダンジョンに通ってゴブリンを狩り続けたんだ。
15才の春休みが、これほど殺伐とした日々になるとは、以前は夢にも思わなかった。
背丈の高いすすきに身を隠し、1匹で行動しているゴブリンを背後から襲う。
一撃必殺とか、大きな成果は望まない。ただ最も大きな的に目がけて突進して、ブスッと突き刺すのだ。これなら大して技術は必要ないし、素人の僕でも効果は得やすい。
名付けてヤクザアタック、なんちゃって。
まあ、ギリギリまで慎重に近づいて、ゴブリンが気づいたら腰だめにナイフを構えて突進し、身体ごとぶつかる感じだ。
刺さったら、ナイフを捻る事も忘れない。
これで、内臓がかき回され、傷口が広がること請け合いだ。
後は、しばらく放っておいてもゴブリンは死滅する。
だけど、なるべく早くドロップアイテムが欲しいから、隙あらばトドメをさすけどね。
もはや、探索者というよりも暗殺者になった気分だ・・・。
初めてドロップアイテムが出た時は、喜んだものだ。
それがたとえ、『ゴブリンの腰布』であってもね。
『ゴブリンの腰布』というのは、まあ、あれだ。
ゴブリンが股間を隠してる毛皮の事だ。
もう、見るからに、以前この階層で見たウサギの毛皮だ。こんな物、売れるのかと悩んだけど、一応ギルドに持っていくと、300円で買ってくれた。
数日、命がけで頑張って300円だ。
僕はフラフラと眩暈を抑えきれなかった。
高所得の探索者なんて、本当に一部の人だけの事なんだと。この日、僕は痛感した。
なのに、僕は次の日もダンジョンに向かい、ゴブリンからナイフを出して持ち帰った。
これが1個で5000円もするのだ。
僕は、自分の常識を書き変えるのに苦労した。
ダンジョンって物価がおかしい・・・。
その日から、僕は父さんに買ってもらった型落ちのスマホで、ドロップアイテムの相場を調べて回った。
はっきり言って、相場なんてあってないようなものだった。
サイトや企業によって、買い取り値段に幅がありすぎるんだ。
おまけに、調べていくと詐欺に注意しろっとか出てくる。
安心なのは、ギルドとギルドのオークションくらいのようだ。それらはどっちも背後に政府がいるから、表示値段だけ見ると他よりも安いけど、騙される事だけはないのだとか・・・。
ネットオークションの闇だとか、個人売買の危険性を嫌というほど理解させられた1日だった。
ダンジョンのアイテムって、そう簡単に価格が落ち着かないよねって事で書いてます。
MMORPGでも、アイテムの相場ってあってないようなものだったと、思い出しながら書いてみました。




