102話
ダンジョン外の生配信は、僕を一躍時の人にまで押し上げた。
ダンジョンや学校はともかく、近所のスーパーや食事処ですら、知らない人に声をかけられるありさまに、少々辟易している。
やっぱり、こういうのはガラじゃないんだよ。
おかげで、気配を消すスキル外スキルに、磨きがかかってしまった。
『ゴブリンの集落』に行った時に、これだけ出来ていれば。あのホブゴブリンに、悟られずに済んだかもしれないのに・・・。
何事も、上手く行く事ばかりじゃないね。
配信は、1回2〜5円とそこまでのお金にはならない。
だけど、売った映像データは結構な大金になって、パーティーで装備の更新に使おうとか話している。
やっと、みんなの姿を視聴者に覚えてもらった所だ、急な見た目の変化は望ましくない。
特に見た目のキャラが出来上がっている、ミラとソフィアは、変えるなら装備変更特集くらいやらないと、もったいないので。アクセサリー系を考えているようだ。
ちなみに、ソフィアがヘルムを外してる映像は未だに流れていない。
ミラは、みんなが慣れた所に、このネタを投下したいみたいだ。
僕が、雑に始めた配信のはずだったのに、彼女はどんだけやる気なんだろうか?
遥君なんか、金額が大きくて真っ青になってた。
1人家1軒は無理だけど、みんなで1軒くらいなら買える値段だ。
それを、ミラは全部、装備の更新に使おうと言っている・・・。
もちろん、それだけあっても、世界最高峰の装備には到底届かない。
鑑定アイテムなどの、スキル付きアイテムなど億の単位になるし。存在するだろうと言われている、【支援魔法】や【回復魔法】が使えるアイテムなら、100億単位の値段になると言われている。
どちらも、今のところ見つかっていないと言われている。
「う〜む、配信のメインは一応は遥なんだよな?いや、こだわる必要はないな。幸太の装備に変更がなければ、遥の装備の方を変更して・・・。」
ミラが、ガチだ・・・。
おかげで、僕らも迂闊な意見が言えない。
「ミラ、あたしはアームガードが欲しいんだ、出来れば良いやつ。鎧を着るとコウタが悲しむといけないからな!」
「そう、・・・ぶふっ!・・・。」
ミラは、未だにあの配信から抜け出せないらしい、今も必死に笑いを堪えている。
いい加減、そのネタは引っ張らなくていいと思うんです。
ソフィアはウンウン頷いてるし、遥君はミラの背中をさすって介抱している。
ねぇ。
何で、そんなに自然と女の子に触れられるんですか?
僕なんて、清水の舞台から飛び降りる覚悟で、エミリアを抱きしめたんですけど。
正確には抱き止めたが正しいけど、僕にしては頑張ったので、抱きしめた、でお願いします。
まあ、今の僕が清水の舞台から飛び降りたって、着地して終わりだろうけどね。
あの程度の高さ、怪我のしようもないよ。
「私は今回のお金で、この鎧を買い取ります。そうでなくては、皆さんと一緒にやっていけませんからね。」
「ソフィアは真面目だね。」
ソフィアの意見はおかしくはないけど、パーティーとしては難しい判断だ。
というのも、タンクというのは、最高峰の防御力を目指してもらわなければならない。少なくとも、ゲームではそうだ、そして、この世界でもそうだ。
むしろ、やり直しがきかない、この世界の方が、防御力は高い価値を持つ。すなわち、値段が高い。
だから、その真面目さは美徳だけど・・・。
「はぁ、はぁ、はぁ、・・・ソフィア。それは今回は置いておこう。」
「うん、僕もその方がいいと思う。」
ミラの意見を、僕はすぐさま支持する。
ソフィアが心苦しいのは理解した上で、それでも、あえてそちらを選ばなければならない。
パーティーとしてさらに前進するには、マイナスにしかならないからだ。
「それは、なぜですか?」
「ソフィア、ちゃんと自分で考える癖をつけろ!このままでは・・・。」
「そうですか、考えてみます。」
珍しく、ミラがソフィアを遠ざけた。
これが僕には、すごく不思議に思えた。だから記憶に残ったんだ。
結局、遥君用に、一式揃える事に決まり、遥君は卒倒した。
残りで、エミリアの装備も買った。
残金は次回持ち越しとした。
ねぇ。
何で、そんなに自然と女の子に触れられるんですか?
爆発!はもういいですよね?
なので、今回はやめておきました。