101話
「ヤバイ、笑えて・・・、カメラがぶれる・・・!」
「ミラ、カット!今のカットでお願いします!」
「幸太、ライブにカットは無理だよ。」
「最高でしたよコータ、まさか先日のテロ事件での戦闘で、1番印象に残った事を聞いたのに。エミリアの柔らかさと、泣き顔だったなんて、さすがコータです!」
「もうあたしは、嫁入りの準備が必要だな!」
やめてー!?
思わず、本音が出ちゃったんだって!
僕は頭を抱えて突っ伏する。
数日前、豊田ダンジョンで、テロリストによる襲撃事件が起こった。
襲撃者は、分かるところで108人と報道されている。
対処にあたった自衛隊員も、死者8人と多数の重軽傷者を出したが、奇跡的な被害の少なさだった。
犯行声明としては、イギリスの有名な動物愛護団体の名前で出していた。
もちろん、本団体はこの件を否定しており、雑な悪用だともっぱらの噂だ。
イギリスの団体なのに、襲撃に参加した人種がアジア系ばっかりな時点で怪しさ満点だ。
テロリストはほとんど死に、生き残った数人も情報を引き出し次第、後を追わせる事が決まっている。
通常の死刑囚とは違って、冤罪の可能性がないため、執行までがとにかく早い。
連中を税金で食わせるなんて、無駄だからだ。
怪我の回復を待つような事もしない。
どんな情報が引き出せたかは、もちろん報道されない。もちろんどんな引き出し方をしたかも。
僕らに対しても、簡単な事情聴取があっただけで、すぐに帰る事が出来た。
ただ、精神的、肉体的な不調があった場合は、自衛隊で対応してくれるそうで、そこの電話番号だけはしっかりと渡された。
現場に居合わせた探索者だけでも50人近いから、1人1人には、そう構っていられなかったのだろう。
この配信は、ライブで世界中を駆け巡った。
一部R指定で引っかかったものの、実際に起きた事件である為、何とか制限を潜り抜ける事が出来たところも多かった。
その後、世界中のメディアで報道されて、一躍注目の的となった。
今月の配信ランキング上位はすでに確定で、ミラはデータのコピーをあちこちに売って、今後の活動資金に変えていた。
それの追加配信として、インタビュー擬きを行なった結果が、冒頭の会話だ。
「・・・つ、次の、しつ・・・ぶふぅ!・・・む、ムリ!!」
「代わるよミラ。」
「た、・・・た、頼むぅ・・・ひっ、ふっ・・・。」
「ハルカ、ハルカ!どんなところが好きか聞いてくれ!」
「いいですね!それ行きましょう!」
「やめてー!?」




