99話
豊田ダンジョンに併設されたギルド内で、テロリストと自衛隊による銃撃戦が幕を開けた。
僕はエミリアに顔を見せてもらって、心を落ち着け。
銃を持った、テロリスト共との戦いに挑んだんだ。
我ながら、どうなってるんだと思うところだけど、エミリアの顔を見てると、不思議と落ち着くんだ。『ホブゴブリン』の時もそうだった。
きっとエミリアは、マイナスイオンでも出してるんだ。
遥君は、最高の支援をここで引き当ててくれた。
おかげで、銃弾なんて、どうという事はない。
今の僕は、遥君の【ダンス】と【支援魔法】の2重がけだ。素早さが超人級に上がると同時に、動体視力も鍛えられてる。
飛んで来る銃弾が見えるんだから、弾けばいい。
凸凹のないフロアが、僕の拙い足運びをフォローしてくれる。
お姉さんが見せてくれた足運びを、お姉さんが見せてくれたこのフロアで再現する。
相手に、リズムや呼吸をつかませず、手当たり次第に切っていく。
銃を切り、腕を切り、足を切って、首を刎ねる。刀を突き刺したテロリストの身体を盾に、銃撃の向こうに飛び込んで行く。
「・・・さすがに、避けきれないなぁ・・・。」
弾いたつもりの銃弾が、僕の身体を掠めていくんだ。
身体の中心に刀を置いて、外に弾いてるつもりなのに上手くいかない。不満が残る。
「少年!大丈夫か?」
鑑定室の陰から、自衛隊員さんが声をかけてくれた。
「はい、大丈夫です!仲間たちの保護をお願いします。」
「ああ・・・、分かった。助力に感謝する、だが、無理はするなよ。」
「はい。ギルドの入り口とショップの方が、まだ激しく撃ち合ってますね。僕はそちらに周りますね。」
「え?ああ・・・、頼む。」
まだ、制圧したのは鑑定室の前だけだ。敵はまだまだ沢山いる。
また、チラッとみんなの顔を、正確にはエミリアの顔を見て、僕は行動を開始した。
ステータスの押し上げによる全能感、フロアの足場の良さ、切れ味抜群の相棒に僕は酔っていた。
せっかくの環境なのに、敵が物足りない。
どいつもこいつも、銃を向けて喚くばかりで、戦う気がないのだろうか?
これなら、ゴブリンの方がよっぽど殺りがいがある。
銃を向けて喚いている奴を切る、弾切れして焦ってる奴を切る、あとずさる奴を切る、逃げ出そうとした奴も切る、何か連絡を取ってる奴も切る、両手を上げた奴も切り捨てる。
まるで、的でも切ってるみたいだ、何て手ごたえのない。
おっと!危ない。近づいて来た、自衛隊員さんまで切ってしまうところだった。
いつかの、強面の自衛官さんだった・・・。
「失礼、大丈夫ですか?」
「あ・・・、ああ、おかげで助かったよ。」
「幸太く〜ん、ありがと〜う!」
ショップの奥から、静香さんが手を振っているので、振り返しておく。
「外でまだ戦闘が続いてるみたいだ、一緒に行ってくれるかい?」
「ええ、もちろんですよ。」
自衛隊員さんの言葉に、僕は即答する。
どうせ、この後行くつもりだったからね。
この自衛隊員さんは、ギルド内部の残敵掃討と、民間人の保護を指示して。僕と一緒に、銃声鳴り止まぬギルド前の広場に出て行った。
ギルドの入り口を盾にして、外の自衛隊と撃ち合ってるテロリストを、僕は背後から切って外に出る。
「君は躊躇がないなぁ。」
「そうですか?テロリスト何て、ゴブリンと変わりませんよ。」
ゴブリン以下だと言うのは、さすがに自重した。
あれでも、一応、同じ人間だ。
「はっはは!そりゃそうだ。でも、ゴブリンが持ってない武器もあるから、気をつけろよ。」
「はい。」
なるほど、それは考えなかった。
先ほどまでは銃ばかりだったけど、外からは、もう少し派手な破裂音も聞こえている。
先ほどの、テロリストの真似をして、僕もギルドの建物を盾に外を覗き見る。
互いに、車を盾にして撃ち合ってる姿が見える。
映画みたいに、弾丸1つでドッカンとはいかないらしい。だけど、たまにノロノロ飛んでく弾が車に当たると、盛大に爆発するんだ。
おそらく、あれが、かの有名なRPGってやつではなかろうか?
攻撃魔法の方が速い分よっぽど怖い。あの程度なら、今の僕には避けられてしまう。死角にだけは気をつけよう、さすがに見えなきゃ避けられない。
「うわぁ、まるで戦争だなぁ。」
自衛隊員さんが、まるで他人事のように呟いた。
この人も大概大物だね。
「それで、どこから潰せばいいですか?」
「そりゃあ、あっちの右側の連中だろ、数が少ない。弱いところから攻めるのは戦の基本だ。」
「了解です、それでは行って来ます。」
僕はそう言って、ギルドの建物から飛び出した。
「そっちは、左だぁ!!?」
しまった、また、間違えた・・・。




