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テレフォン
僕は諦め半分で携帯に手を伸ばす。
性懲りもなく、また非通知で彼女の
携帯にコールする。
「プルルル、プルルル…」
五回ほど呼び出し音が鳴った時だった。
「はい、もしもし…」
懐かしい声が僕の耳に響く。
「…アオイ」
彼女が息を呑むのが分かった。
「…ケイタ?」
心地良い声が僕の鼓膜を震わせる。
「…うん」
僕は頷いた。
「…ケイタ、電話してくれて…ありが
とう…私…嬉しい」
彼女が涙声で言った。
「…今までごめん、僕が悪かった」
「…ううん、お互い様だよ」
僕たちは二人とも泣いてた。
たったこれだけの会話で、不思議と
お互いの気持ちが分かった。
僕たちはまだ縁が切れてなかった。
今でも僕らは両想いだ。
電話ごしに泣き合って、僕らは暫く
まともに会話が出来なかった。
やがて彼女が訊いた。
「…今どこにいるの?」
「海」
「…えっ?」
「…先週、東京に戻った。今あの海岸
にいる」
「あなたに会いたい」
「僕も君に会いたい」