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格差
あれから、もう二年の月日が経つ。
僕らは今二十七歳。
親思いの彼女は、両親の勧めに従って
既に他の男と結婚してるかも知れない。
あの後、アオイは僕に何度も電話して
来た。でも、僕は電話に出なかった。
LINEもメールも既読にせず破棄した。
僕は直ぐに大阪に引っ越して携帯番号
もアカウントも変えた。
彼女のことはキッパリ諦めようと思っ
たからだ。
両親の反対を押し切って結婚しても、
幸せになれる訳がない。
アオイの幸せのためには、僕が身を引
くべきだと思った。
大体、僕と彼女の家柄には格差があり
過ぎた。アオイがお嬢様育ちだったの
に対し、僕は母子家庭で、幼い頃から
借家住まい。
母親と貧しい暮らしをして来た僕は、
毎日ご飯が食べられるだけで幸せだと
思ってた。
家を買うとか家族計画とか、具体的な
将来の展望なんて、考えたこともなか
った。
何の才能もキャリアもない僕は、真面
目に一生懸命仕事をしていれば、人生
何とかなると思ってた。
たぶんアオイの両親は、そんな漠然と
した僕の生き方に、不安を感じたのだ
ろう…。