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ラブコメ・恋愛

妹キャラでキャラ作りします


「お兄ちゃん、わたしの友達が妹キャラしたいっていうから協力してあげてくれない」


 部屋に来た妹は、かく語りき。


「ついに、俺にも妹がっ!」


 キタコレ。きっと「おにいちゃーん」と愛しらしく接してくれる優しいキャラクターに違いない。やっと俺の妹とはかくあるべしを享受できる日が。


「わたしは、妹ではないと」


「いいかね。妹三原則という国連で決議された原則があってだね。まず、妹はお兄ちゃんが大好きでなければならない。妹とは子どもの頃の思い出がなければならない。妹は可愛くないといけない」


「わたしの知ってる国連とは別ものそう。それで、上の二つがダメなわけだ。てか、血縁はいいの……」


 妹はボソリと付け足した。


「残念ながら、俺とお前は、思い出なんて皆無。俺は、一人日本でいたし、お前は親と海外だ」


「いいじゃん。高校は日本も悪くないかなって。すし、テンプーラ、フジヤマ」


 髪を指先でいじりながら、ドアの横の壁に背を預ける。


「やめろ。ペラペラの日本語を外国人風にするな」


「まっ、その子も今年から高校一年で入るから。よろしく」


 ん、なんか実は相手するのがめんどうで俺にぶん投げた海外の友達じゃないよな。まさか、典型的な日本文化をアニメで学びました的な……。

 いやいや、妹。されど妹。

 ずっと、妹が欲しいと思ってきた。

 大丈夫だ。サバサバクール系ではなく、ハムスターのような妹キャラ萌えアニメオタ女子が来るはず。


 冷静になって、後から考えると、俺、何を考えていたんだろう。

 妹との共同生活に疲れていたせいだな。慣れないよ、異性がいる生活。血が繋がってるらしいが、久々という言葉は物心つく前に置いてきた関係だし。

 


 ◇ ◇ ◇




「おはようございまーす。よろしくお願いします」


 金髪の妹ができた。

 金髪で胸の大きい妹。妹界隈では異端のようでいて、意外となんか妹ポジションに座りがいい。


「お兄ちゃん、この子はお兄ちゃんの妹っぽい後輩というポジションで設定を合わせていってね」


「日本、業の深追いの国です」


「いや、業が深いのは、このシスコンを拗らせたバカだから」


 本物の妹は辛辣だった。妹力が足りない。

 そんなのだとシスコンもシスコンできないぞ。

 ツンデレを守備範囲に入れる努力をしよう。頑張ろう。


「もっとウキウキで妹キャラしたーいかと思っていたけど、違うのか」


「わたしが、清く正しい帰国子女のパターンを説明してあげたの」


「まさか日本は、いつのまにかサブカルが本物のカルチャーになってるなんて」


 本物妹さん、なんか押し付けられたキャラを感じるのですが。

 キャラの押し付けはよくないって、なんか最近の学校では注意されそうですよ。


「この子、なんか勘違いしてない」


 俺はこっそりと妹に耳打ちする。


「いえ、日本は年功序列、年上の先輩の一人をお兄ちゃんと呼ぶのは常識じゃない。家制度も現代的に変化したねー」


「どこの世界線の日本なんだ。面白がってないことないこと吹き込んでいるな」


 嘘は嘘と見抜ける人につかないとダメなんですよ。


「そこまでしてないよ。ちょっとメディアでは報道されない学園生活の実態を教えてあげただけ」


「そんな実態ないから報道されないんだよ」


「チッチッチ、今やフェイクニュースと陰謀論の時代。裏日本を説明しておかないと、面白くおかしく」


 都市伝説を広めそうなことを言う妹を放っておいて。

 この妹、海外で何を勉強していたのか。


「安心して。ヤンデレ系妹については説明してないから。刺されたりしないように。本当は日本女性は包丁をいつも常備しています、ぐらい教えたかったけど」


 刀のように帯刀させようとするなー。


「友達失うぞ、そんな嘘ばかり教えてたら」


「大丈夫。女は嘘を着飾って美しくなるらしいから」


「悪女にならないように」




 しかし、妹キャラで金髪帰国子女。

 基本的に、サブヒロイン寄りなのに、さらにサブヒロイン属性を追加している。

 日本ラブコメは清楚系おとなしいメインヒロインに明るい活発なメインヒロインをぶち込むという形で化学反応の親和力を作るのが作法。その周りに、ギャルや妹系、病弱系、不思議ちゃん系といくつかの彗星が煌めく。外国人・ハーフ系も同列。


「sisterの契りを結ぶんですよね」


 それは別のマリア様が入ってきてないか。

 きょうだい、みな兄弟だけど。そんな儀式は日本にはない。


「それはどういう儀式なんだい」


「朝起こしに行って、もうまた寝坊してるー、みたいなやりとりを9回繰り返すという」


「ふむ。土下寝のような三跪九叩頭の礼。だが、断る」


 無駄な業務が多すぎるよ。そこ、予算カットして別のことに時間を使おう。命短し、歩けよ妹キャラ。


「目覚まし時計に、起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろーっ!!と吹き込むことで勘弁しようじゃないか」


 文明開花の音がする。


「今はハイテクハイカラの時代なんですね」


「科学が進歩すれば必然、妹キャラも進化する。なぜなら科学の進歩に合わせて、心も張り合って同じくらいの小難しくしないと思想とは廃れるから。できる限り、妹という思想を維持するために、喧喧諤々しないといけないんだ」


「理解できません。日本人難しいです」


「大丈夫。わたしも理解できてないから。半分、いや9割聞き流していいから。理解しようとしたら負けな言葉だから。問題はね、理解しようとしなければ消えるんだから」


 妹さん、もう少し久しぶりなお兄ちゃんのことを理解しようと努力してみる気はないかい。

 どおりで、何を言っても、生返事なわけです。


「まず、妹は、自然に腕を組んでくる。その練習から始めようか」


「妄想の妹ね。わたしはそんなことしないから」


 金髪帰国子女に、視線を向けられ、否定する妹。


「えーっと、妹キャラの実演をお願いしたいです」


 妹がすごい嫌な顔をしている。演技でもやりたくなさすぎる感が溢れている。

 キッとにらんで、腕をひったくる。


「こんな感じ」


「いやいや痛いって。もっと兄を労わる豊穣な膨らみで包み込むようなーー」


 妹の目が怖いので中断。


「いや、まー、スキンシップはおいおいということで。妹キャラに必要なもの、その2。たまに昼飯を一緒に食べる」


「妹とはお昼を一緒に食べるものと」


 この子、確実に何も知らないし、妹キャラに興味もなさそうなんだが。復唱できてえらい。

 普通に、無知シチュで楽しんだ方がよくないか。

 俺は、妹キャラと外国人金髪キャラを天秤にかけた。

 だいたい本物の妹が一応いる。要、再教育が必要だが。お兄ちゃんの彼シャツを着たいというぐらい。まぁ、教育は嫌いだから、好きに自由に生きればいいが。オタクとは自由である、と、かの俺も言っていた。

 

「妹よ、俺は決めた。妹はお前で諦める、ぐはぁああっ!!」


「お兄ちゃん、お兄ちゃんで諦めているのはどっちかな」


 見事だ。お前に教えることはもう何もない。暴力系ヒロインはこれだから。鳩尾にはいった。急所で受けるという兄の技を

見たか。美しいだろう。


「君は、君の道をいけ。自然体の君を妹にしよう」


「それ、わたしに言うセリフじゃない」


 本物の妹が拗ねている。そして、もう一発おまけに、足を踏まれた。


「いえ、精一杯、妹キャラを引き受けます。理想の妹像をご教授ください」


 教授なんて難しい言葉を使うじゃないか。


「しかし、なぜ妹を知りたい?」


「だって、妹キャラをしてれば、わたしと、姉妹ですよ」


 妹と金髪ちゃんが抱き合っていた。

 まぁ、一方的に片方が抱きついていたのだが。


「妹よ、百合の間に挟まると死ぬという噂があるが」


「大丈夫大丈夫。この子、そんなこと気にしないし。あっ、今日から、一緒に住むから」


 妹キャラは同棲はしないものなはずなのに。

 海外の友達だもんね。そうだよね、ステイホームだよね。我が家は一人で住むには広すぎるからね。


「よし、まずは、どっちが姉か決めるかー」


「それは、もちろん、姉より優れた妹はいませんから、わたしが妹です」


 金髪ちゃんは元気よく答える。


「俺の実妹がそんなに優れているはずがない。遺伝子がそう言っている」


「お兄ちゃん、はいこれ」


「なんですか、これ」


 一枚の紙。


「ふむ。父親は一緒。母親は……」


 さて、妹に釘を刺しておくか。


「夜這いはしないでくれよ」


「お兄ちゃん、もぐわよ」


 ヒュンとした。


「なるほど、ゴールデンボールを夜中に襲うっと」


 そこ、間違った知識を得ないで。



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