04-16 疫病01
「ゴッホ、ゴッホ」
「マストをゴッホ、ゴッホ、誰かマストをゴッホ、ゴッホ」
甲板長の指示で体調に問題が無い船員がマストの向きを変えた。イタアからライトに向けて帰国中の船の中では、咳きや発熱により、ダウンしている者が多かった。
イタアから出向した翌日には咳をする者が現れ、三日後には十人、四日後には四十人と増えて、一週間でほぼ百人全員が感染した。初期に感染したものは既に回復したものもいるが、既に五人ほど亡くなっている。
「みんな後五日だ、頑張れ!」
船長は皆を励ますが、死者は少しずつ増えていった。その後なんとかライト王国に帰還した際には死者の数は二十人まで増えていた。
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ライト王国の王城会議室内では、今回の疫病の対策会議が行われていた。既に港町では疫病が蔓延し、手が付けられない状態となっていた。また周辺の村や街にも広まっていた。
感染地域を遮断し封じ込めを実施したが、感染者がそこから逃げ出し、封じ込めが失敗し、被害地域が増えつつあった。
「くそ! イタアから疫病を持ち帰るとかなんてことだ、まったく。しかも封じ込めも失敗するとは。状況はどうなんだ?」
王の質問に宰相が答える。
「はい。東部地域は感染を免れないと思います。他の地域全体には警戒態勢をとるように指示し、外との接触は行わないように致しました。
東部の人口百万の内、三%程度が今回の件で亡くなるかと思われます。回復したものは、再度この病気には掛からないようですので、回復したものに死体の処理や看病を指示しています」
「三万、三万だぞ! くそ! 農産物の収穫量も増え外貨も僅かながらでも稼げるようになったのにだ!」
会議室に緊急の伝令があわただしく入室した。
「王都内でも感染者が発見されました。感染者を家の中に戻し、兵士が家の前で誰も近づけないようにしております」
更に西武地方から早馬に乗った伝令が到着した。
「西部地域でも複数の村や街で多数の感染者が発見されました。感染者は自宅から出さない方針で、かつ感染した場合は自宅から出ないようにと繰り返し指導済です」
「これはもう封じ込め失敗だな」
「申し訳ございません」
王の言葉に宰相他、会議参加者全員が頭をさげて詫びた。
「…。もうどうにもならんだろう。南部と北部は引き続き人の出入りを禁ずる。西部はニバンへの出国であれば許可する。今回の被害を避けたければニバンに逃げるように伝えろ」
「え? それではニバンに疫病が蔓延してしまいますが」
「良いだろそれで。うちの国だけが人口が減ったら、攻められるリスクが高くなるだろう。他の国も同様に被害を被れば、攻める余裕がなくなりリスクが下がる。道理だろ?」
国王の発言に嫌悪感を感じる者もいたが、同意する者もいた。
「西部の地域には、ライト国内の他地域への移動は禁ずる、東部、北部、南部に向かう者は感染の有無にかかわらず、処刑すると伝えます」
宰相は覚悟を決め、王や他の参加者もその方針を是とした。
~一か月後~
ニバン王城では疫病の対策会議が行われていた。ライト国から多数の難民が押し寄せ、その中に疫病感染者が含まれており、瞬く間に疫病が広まっていった。交通の便が良くなったことで感染拡大の速度があがっていた。
「封じ込めはもうできないと思います」
「今のところ、ポーションを飲んだものは症状が軽くなるとの報告が複数ありました」
「死亡率は一%程度と見込まれます」
ニバンの人口は約一千万であるため、全国に拡散した場合は十万人が死亡すると思われた。
「分かった。ポーション作成は私とソララも手伝っているが、このままだと材料の薬草が不足するため早急に手配を頼む。それと直ぐに使うことになるから陶器の壺も多数用意してくれ。
元気が出る、体力が付くポーションの結果はどうなった?」
「はい。そちらも効果があるようで百人に飲ませて、症状が軽くなったという報告と今のところ死者が出ていません」
「とのことなので、どちらの材料でも良いからとにかく集めてくれ。材料さえあれば製作は頑張るから。あとポーション作りの工房と指導も遅ればせながら始めるから人の手配をお願い」
ケンとソララは全力でポーション作りを行い、単純作業はメイド他手の空いている者にも手伝わせている。今後はポーション制作者の育成も行うことにした。
「ライトへの抗議はどうなっている?」
「疫病を理由に一切取り次いでもらえません」
「くそ! ライトから蔓延が始まったのは間違いないのに! 引き続き抗議しろ!」
「ライトからくる難民はどうしますか?」
「街の中への入場は禁ずる。街の外のどこかに待機してもらって。食料は提供して、畑を荒らされる方が問題だ。テントや医薬品なども提供しろ。
自治組織を作るように促して。我々は自治組織に対して食料や医薬品などを提供し、炊事なども自治組織でやってもらう。なので薪などの燃料も提供して。
ライトの行いは許せないが国民が悪いわけではない。いずれ俺達の国民になる者だと思って対応しろ。
イーチバン、ウエライト、オオキナウエーノ、レフート、ヒダリオークの各国にも疫病が蔓延していることを伝え、我が国に入国しないように。今年の賠償の支払いも落ち着くまでは延期する旨も併せて伝えろ。また国外への出国も禁ずる」
「私からもひとつ。食事は色々な食材を食べて。食材には栄養素というものがあるから。あとで整理してメモを渡すね。
具体的にはタンパク質として豆か鶏肉のどちらかと、ビタミンCとしてブロッコリーとキャベツのどちらか、ビタミンBとしてニンジンとジャガイモとひよこ豆とブロッコリーのどれか、ビタミンAとして、えーとつるむらさき(緑黄色野菜)、ニンジン、カボチャのどれか」
「アリスありがと、栄養素の事を忘れてた。後で一緒に整理しよう。食べ物には体に良い、健康にするような成分が含まれているんだ。何も考えずに食べるよりも疫病に備えることが出来る」
身重のアリスも会議に参加しており、栄養素の事は医療関係の一つとして覚えていた。栄養素はケンの出身国で知識として広まっている。
「あの、モリンガは奇跡の木と呼ばれていて、葉や根、種、は健康に良いと言われています」
文官からも食べ物に関する内容として意見が出される。
「いいね。後で誰か実物を持ってきて。実際に見てみたい。他にも体に良いといわれる食物があったら教えて。それと現物も確認したいから話題に上がった食材は別途寄こして。
それと体に良い食事を描いた用紙の裏面にはポンポ様の教えも書いて国民に配布しよう。特に難民には食事のたびにポンポ様に感謝することも伝えて」
会議参加者は他国の国民も自国と同等に扱う、他国に対する気遣い、他国国民も国民になるという未来を見据えた発言、色々な知識を有していること、そのようなところがあらためてケンやアリスに対して尊敬の念を深めていた。
船の中では逃げ場無いし、栄養も不足するし、不衛生とか、
波とかで揺れて体力を消耗するなどで、死亡率が地上に比べて高いっぽい。
疫病はインフルエンザの一種みたい。
全然伸びないよー。他の人の目に触れる機会が少ないみたい。
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