04-11 スズタナ王国の王都
「ケンの新刊出てたから買ってきた」
コウハは孤児院の兄弟たちに顔の横で本を振って見せた。
「「「「コウハ兄ちゃんお帰り!」」」」
「早く見せて!」「俺が先だよ!」「私も見たい」
コウハは久しぶりに孤児院に顔を見せたので皆喜んでいるが、ケンの新刊も凄く気になっており奪い合いが発生していた。
「ケンカせずに仲良く見ろよ」
コウハは兄弟達に注意した後シスターにはお土産の食糧を渡した。コウハは錬金術士見習いとして住み込みで働いており、週に一度の休みは郊外で狩猟や採集をするか孤児院に帰宅することにしていた。
ケンとアリスが海で遭難と聞いたときには孤児院全体が悲しみに包まれたが、その後ルイーサが海神様から生存の話を聞けたことで悲壮感は無くなった。そして港町カンナで始まったケンの人気は王都にまで伝わっていた。
吟遊詩人に歌われたり、演劇になったり、ケンを題材にした本が何十冊と出版されている。出ている本はほぼフィクションであったが、それでも皆喜んで読んでいた。一番人気の作品は、新大陸に着いたケンが盗賊に襲われている人を助け、その後騎士団にスカウトされて出世するという話だ。最新刊では中隊長にまで出征していた。
「ねぇコウハ兄ちゃん! ケンは向こうで中隊長にまで出世したかな?」
兄弟の一人に話しかけれラれて、少し考えた後に答えた。
「ケンは優秀だからな、中隊長くらいにはなっててもおかしくないな!」
「そうだよね!」「うん!」「ケン兄ちゃん頑張れ!」
皆ケンが活躍することを疑っておらず、出世すると信じていた。
「ねえ。イルザはどう思う?」
子供の一人が傍で見ていたイルザ(孤児院のシスター)に問いかけた。
「どんな環境であっても無事でいてくれたら、それだけで良いですよ。仮にそれがただの村人や門番だったとしても」
イルザや孤児院の面々は、遠く離れた大陸の様子を知りようもないが、ケンは既に国王になっていた。
「みんな元気してた?」
ルイーサが久しぶりに孤児院に訪問した。ルイーサは孤児院出身でケンの五歳年上であり騎士団に所属している。
「だれ?」
「さぁ」
ルイーサは小さな子とは面識がなかったり、数年訪れていなかったので顔を覚えている人が少なかった。
「おかえり」
イルザはルイーサを見つけると、優しく抱きしめて帰宅を歓迎した。
「ただいま」
ルイーサもイルザを抱きしめて再会を喜んでいた。
「おかえりルイーサ姉」
「ただいま。コウハも遊びに来ていたんだね」
しばらく歓談した後、ケンの話題になった。
「ケンには抜かれちゃったなぁ」
「でも小隊長だって凄いよルイーサ姉」
物語上ではケンに抜かされてしまったが、ルイーサは小隊長にまで出世していた。龍神様と会話したこと、新大陸の情報を得たことも若干昇進に考慮された。
「ところで、ケンには念話通じた?」
コウハはルイーサに尋ねた。
「いや全然だめだ。想定されている距離はこの大陸の端から端までよりも倍ある位遠い。過去に出土した世界地図の情報が正しいとすればだがな」
スズタナ王国がある大陸はオーストラリア大陸程度の大きさで、ケン達が漂流してたどり着いた先の大陸までは六千キロほど離れている。とても念話が届くような距離ではなかった。
スズタナ王国は新大陸の情報も気にはなるが、船を派遣しても無事にたどり着いて戻ってこれるとは思えず、南西にある開拓地の開発に重点を置いていた。新大陸はスズタナ王国がある大陸と比較して二十倍はあるような大きさであり、新大陸側にも国があるとすれば、その距離を船で侵攻するのは現実性がないため優先度はかなり低くなっている。
「ところで、今度はどこに赴任するの?」
「北部の方だね。まあ、一年、二年だから、そのあとはどこになるんだろうなあ」
ルイーサは一、二年に一度くらいの割合で赴任地が変わる。これは騎士団の基本的な方針であり、第一騎士団以外は定期的に配置換えが行われている。最前線を除いて基本騎士団は半分に分割し、別々の地域に派遣される。
スズタナ王国がある大陸は、形は横に長い長方形のような感じで、
大きさはオーストラリア大陸くらいかな。
そんな大きさでも、まだ統一された国家になっていない。
中央が高い山脈で、かつ強い魔物がいるので、そこを迂回する必要がある。
魔物が居なくて、中央が平地だったら、状況は違ってただろうなあ。
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暇な間は過去作とか読んでくれるとなおうれしい。
一度読んだ人でももう一度読んで。
異世界転生しそこなったけど、スキルは貰えたので現実世界で楽に生きたい
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