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遭難から始まる国造り 魔法が使えるのは私たちだけ? 遭難して言葉も通じないけど何とかなりそう 120話保証  作者: ぐわじん
4章 ニバン国国王

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04-10 毒見役

 ニバン王城内の台所では多くの料理が作られており、数名の兵士が調理の工程を眺めている。そして理料理が運ばれる通路も兵士が等間隔に立ち、変な動作をすれば直ぐに止められることになる。

 この国はケン一人の力に依存しており、万が一毒などで殺された場合は先の五か国から攻め込まれる可能性があるため非常に警戒を高めている。


 そんななか料理が並べられているのをじっと眺めている二人の男性が居た。一人は車椅子に座っており、もう一人は片腕が無く義手が付けられていた。二人とも先の戦争で怪我を負い、兵士としては活躍出来なくなったため退役している。

 新たな仕事として毒見役を与えられた。命の危険があるがその分賃金が高い。この体ではまともな仕事もあり付けないため、二人は前向きにこの仕事に取り組んでいた。毒見役は十人程いるが今のところ誰一人毒にあたったものもおらず、問題なく日々を過ごせていた。


「おい、なあ、緊張するなー。今日はケン様が久しぶりに食事をされるらしいぞ」

 車椅子に座っている男、クルマーが後ろの方に振り返って話しかけた。


「ああ。だからこそ、毒を入れられる可能性が高くなるぞ。いつも以上に慎重に吟味しないとな」


「怖い事言うなよ、でも確かにな。この国の救世主様なんだから、毒なんかで殺させやしないさ。でもさ、なんで先に食べさせてくれないんだろう。遅効性の毒だってあるだろうし、早く食べた方がより安全になるのに」


「分からん。それでもケン様の指示だから従うだけだ」

 義手の男ギッシュは、ケンに対して絶対的な忠誠心を持っていた。そして体が不自由になっても国のために尽くせるこの仕事に誇りをもって臨んでいた。


  :

  : 


 王族たちが食事をする部屋には久しぶりに全員が揃っていた。ケン、義理の母(元王妃)、アリス、リル、カステラ、ソララである。ケンは一通り料理を眺めてから席を決めて座ると、それぞれが席に着いていく。そして、ケンはそばにいる側近の一人に声をかけた。側近は兵士達を呼び、兵士達は調理を運んだ一人のメイドを囲うように立ち、数人の兵士は台所に向かって走っていった。


「別室で待機してもらう」


「えっ? 私が何を? 何にもしてません! 知りません!」

 兵士はメイドに告げて、突然の事に驚くメイドを拘束して別の部屋に連れられて行った。そして側近が一つの料理を下げ、他の大皿に盛られた料理を小さな器に移し替えて、毒見役がいるテーブルに置いた。


 クルマーは料理の匂いを嗅ぎ、恐る恐る口に含む。良く咀嚼して飲み込む。同様に違う料理をギッシュも毒見をしていく、皿の向きを変えたり、匂いを嗅ぎ、口の中で良く咀嚼する。特に異常は感じられなかったため、食事をしても良いと判断された。


 ケンと側近だけが料理を別の皿に盛り付けて、それを配っていく。盛り付けと配膳役を限定するのは、毒を盛られることを防ぐためだ。ちなみに先ほど下げられた料理には毒が含まれており、口に含めば悪ければ死亡、あるいは体が麻痺するなどの危険性があった。

 犯人は料理人の一人で家族が人質に取られており、毒を入れたことを認めた。残念ながら家族は殺され、料理人からは有効な情報が得られず、黒幕は突き止められなかった。そしてその料理人は処刑された。


 ケンは事前に鑑定を使って中の成分を分析していた。鑑定の精度が上がり、どのような素材が含まれているのかが分かるようになっていた。ただそのことはケンの家族と側近だけの秘密であった。


 翌日ケンはフードを深くかぶり王都を護衛と一緒に国民の生活状況について視察をしていた。護衛に兵士が多数ついているため、周囲からも(いぶか)し気に見られている。ケンは物凄い行列が出てきている屋台が目につき、護衛の一人に尋ねる。


「あの屋台は凄い人気だな。何かあるのか?」


「高価な食材を比較的安価に販売している串焼き屋です。オークやボアの肉をどうやら一頭買いしているようで、一本あたり大銅貨五枚か銀貨一枚のようです」


「屋台にしては高くないか? 屋台の岸焼など大銅貨一、二枚だろ? 食材は高価だとしてもそんなに出す?」


「普通オーク肉やボア肉は、高級な食堂や肉屋に売られてしまいます。庶民は気軽に食べられないんです。だから多少高くても買うみたいで」


「まあ行列の理由はそれで良いとして、それで儲かるのかね? だとしたら仕入れの肉の代金が高いだあろうから足が出るんじゃない?」


 すると別の護衛の兵士がケンに答える。


「どうやら自分達で狩っているようで、また部位はほぼお任せとなるので、その辺が安く出来るコツのようで」


「へえぇ。よく考えているね。どれちょっと食べてみるかな」

 兵士等とともに屋台の方に歩き出す。先頭の一人の兵士が走り出して、屋台の店主に向かう。


「主が串焼きを所望されておる。優先して貰えないか?」

 いきなり兵士が走りこんできて、しかも後ろにも数十人の兵士の一団が見えたため、店主と店員は身構えた。一瞬並んでいる客が面白くない顔を見せたが、多数の兵士を見て声を出す前に顔を反らした。


「へい、承知しました。一番おいしい部位を焼きます!!」

 店主はそう宣言して、新たに串を焼き始める。ケンは声が届くくらいの距離まで近づき、兵士は屋台の周りに散会して周囲を警戒する。住人は何事が起きているのかと思いながらも、その屋台からは少し離れて、ちらちらと見ながら通り過ぎていった。


 出来上がった串焼きを兵士に渡し、兵士はギッシュ(片腕の毒見役)に串を渡そうとするが、ケンが割り込んで止めた。


「店主よ、すまないが毒見役を連れてきてなくてね。代わりにこの串を一口食べてもらえないかな?」

 ケンの発言にギッシュや兵士等は一瞬戸惑ったが、ケンが周囲に目配せして、発言を封じた。


「えっ? それはオークの背中の肉で、大変貴重な部位でして。私が食べてしまうと、そのもう提供出来ないのですが、それでもよろしければ、はい」

 店主は突然の申し出に一瞬戸惑ったものの、それを受け入れて自ら食べる事を受け入れた。皿は兵士の手に戻され、兵士から店主に受け渡そうとしたところで、店主は屋台の裏に隠していた剣を引き抜き、串焼きを持っていた兵士の足を切りつけた。兵士は体勢を崩して倒れる。店員も隠し持っていたナイフをケンに向かって投げた。兵士が咄嗟に反応して身を(てい)してそれを遮る、ナイフは兵士の首に刺さった。兵士は両膝を地面に付き、膝立ちしたまま片手でナイフの根元を押さえて、呆然としている。

 店主はケンに向かって走り出し、ワンテンポ遅れて周囲の兵士達も抜刀して店主に襲い掛かる。店主が数歩進むがいきなり視界から消えた。正確には地面に開いた穴に落ちた護衛の兵士二名と共に。

 店員はナイフをケンに向かって投げるがケンは素早く避けた。護衛の兵士は店員を背中から切りつけるが、傷つきながらも更にナイフを投げようという意思が見て取れた。護衛の兵士は剣を横なぎにして首を跳ねたところで、ナイフを持つ手に力が無くなりその場で果てた。


 ケンは首を怪我した兵士のナイフを抜き、治癒魔法を掛ける。流れた血は戻らないが、傷は塞がり命を取り留めた。穴に落ちた店主は隠し持っていた毒を飲み込み、毒のついたナイフを心臓に突き刺してから捻って傷口を広げて自害した。ケンは傷ついた兵士を全てその場で治療し幸いにもニバン側の死者は出なかった。


「ありがとうございます」

 怪我を負った護衛の兵士はケンの魔法に感謝し、また周囲の兵士も奇跡のような事象に尊敬の念をより一層強くもった。

 辺りは騒然としていたが、傷ついた兵士を治癒する姿を見て、それが国王であることに気が付き始めた。


「兵士の怪我を治したぞ! ケン様だ!」


「え!? 国王様来てるの?」「どこ?」「あの兵士の中にいるフードを被った方では?」

 更に周囲が騒がしくなり兵士が落ち着くように宥めるが人だかりが増えていく。このままだと群衆に紛れて刺客が近づく危険性が増すため、城に引き返すことになった。


 屋台の店主がどこの刺客だったのかは分からなかったが、帝国とウエウエ国の商業許可証があったことから、その辺りから来た可能性が疑われた。とはいえ、偽装工作かもしれないため断定はできなかった。ここ最近の状況からケンの命が狙われている事が明確になり、身辺警護の必要性が更にあがり、気軽に外出することが出来なくなった。

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