01-08 ファーム
日没まであまり時間がない。ケン達は野営覚悟でファームの捜索に向かっている。砦から道沿いに東へ二kmほど進んだあたりで北側に向かって森の中を進む。ゴブリンの大群が歩いた痕跡が顕著に見えたからだ。またゴブリンとの遭遇頻度が高く、近くにゴブリンが居るだろうと思われる。
ぽーーーという音と共に、空を見上げると青い発光が見えた。青と白は特に決まった意味が無いが、今回であればファーム発見の合図だ。
「あーー、先を越されたか残念。とはいえ向かうだけ向かおう」
皆同じ気持ちであったため、ダンダに同意して、発光信号が上がった方向に進んだ。しばらく歩いたところ、既に数十人が集まっており、他からも人が集まってきているのが分かった。森の中は暗くそろそろ日没が近い。
どうやら東側から森に入った兵士たちによって発見された。二十mを超える石壁で入り口とおもわれる場所がふさがれており、これでゴブリンが出てくることは無いが、内部ではゴブリンがたまり続ける事になる。別途討伐隊が組まれてファームを壊すことになるであろう。
「もう、ここでする事は無いか。皆砦まで戻ろう」
ファームの内部を見てみたかったが、こうなっては諦めるしかない。ダンダの指示に従い砦に戻った。
「遺物見つけたかったなぁ」
「仕方ないよ。はぁー。金持ちになれると思ったのになぁ」
アーロとケンは、口に出さずにはいられなかった。まあ一攫千金のチャンスであったのは事実だから仕方が無い。
もう直ぐ道というところで、アーロが何かに気が付いた。馬車の残骸だ。そしてゴブリンに殺されたであろう人間と馬の死体、他にも色々と散乱していた。
「可哀そうにな、ゴブリンにやられたんだろう。とりあえず荷物を調べるか。立派な馬車だな、どこかの商会のものだろうか?」
「不謹慎だけどラッキーだな」
「おい、気をつけろ。ポンポ様申し訳ありません。アーロをお許しください」
ケンとアリスは直ぐに両手を胸の前に組み、神に謝罪を行う。皆それぞれが死者に弔いのお祈りをする。ちなみに街の外で死んだ人間の荷物は見つけた人の物だ。
ケンが馬車から投げ出されたと思われる荷物を開けると、中から光り輝く物が出てきた。そしてケンの周りをクルクルと数回回ったところで、ケンの肩に乗って首に抱き着く。
「コワイヨー。タスケテー」
「え? なに? しゃべれるの?」
「コワイヨー。タスケテー」
「なにそれ? 妖精? 凄くカワイイ! 何か話しているの? 全然聞こえないけど」
妖精は念話と似たような手法でケンの頭に直接語り掛けていた、そのため本人同士以外には伝わっていない。念話の上位魔法である以心伝心に近いと思われる。
ケンは大丈夫、大丈夫と妖精を宥めるが、妖精はケンにしがみついたまま離れなかった。金目の物を回収した後、人の死体を空間収納に収納して砦に戻り砦の守備隊に報告した。
:
:
「頭痛い。二日酔いだな」
ケンは魔法で木製のコップに水を注ぎ飲んだ。砦に帰った翌日、王都に戻り各種清算を行った後、生還祝い及びお別れ飲み会を開いた。皆とても大事な友人ではあるが、新しい生活が始まる。ケンも明日には王都を出立して、海岸沿いの町に移動しなければならない。
陸路組は既に一週間前に移動を開始しており、水路組は明日出発となっている。二日酔いは辛いがお世話になった人に最後の挨拶をして回る。既に大半の人には挨拶が終わっているので、本当に最後に会っておきたい人だけにした。
「お世話になりました。明日旅立ちます。御恩は一生忘れません。シスターイルザ」
「貴方の未来に幸多からん事を。…最後に抱きしめても良いですか? ケン、私の息子よ、元気でね」
「かっかあさん…」
シスターの中でも一番お世話になったイルザ。ケンにとっては母親のような存在であった。こらえていた涙があふれ出て止まらない。一生会えないと思うと抱きしめる力が少しだけ強くなった。
「これどうぞ」
「不要です。開拓村では貨幣が足りません。あちらで使うために大事にしなさい。これを持って行きなさい、何かの足しになるでしょう」
ケンはお金の入った小袋を渡すが突き返される。イルザはお金が入った小袋を渡そうとする。しばらく互いに押し問答をするがどちらも相手からの小袋は受け取らない。
「ではこうしましょう。落ち着いたら手紙を書きますね」
そう言ってケンは小袋を交換した。イルザも仕方が無いですね、と微笑しながら受け取った。
:
:
「何でお前が居るんだよ」
「護衛よ。護衛。ファーム攻略のために人員が割かれたので、新兵がこっちに回されたの」
翌朝、開拓村に向けて移動する人の集合場所にアリスが居た。一生会えないと思ったのにこんなことになるんて。憎まれ口を叩いたが凄く嬉しかった、開拓村に着くまで一緒に行動することになる。
町の外で拾った物は、拾った人の物です。
あらぬ疑いを掛けられないように、報告してます。




