03-17 五か国連合5
五か国連合軍は野営の準備を行う。迂回した森には伏兵が潜んでいる可能性があるため、森から千m程離れた丘の上に布陣した。伏兵からの奇襲に備えて森中には鳴子を複数設置し、見張りも森の近くと森の中に配置、本陣に近づく前には気が付くことが可能になっている。今回は首脳陣が集まり連携しながら万全な体制で臨んでいる。
今までは理解出来ない敵であったため不安が大きかったが、今回は人が相手と思われるため多少は気持ちが持ち直していた。それに相手が森から出て丘に向かって攻めてくれば、戦象やデカサイ、騎兵を使って蹴散らす計画であった。森から出る際に大木でも持ってこないと戦象やデカサイは防げない。ましてや弓兵なら接近してしまえば一方的な虐殺になるはずである。
深夜になりコロンコロンという音が響く、森の中で鳴子が鳴った。夜目がきく見張りが音がした方向を確認すると複数の人影を発見。すぐさま森から出て本陣に向けて鏑矢を打つ。ビイーという音が響き本陣側でも臨戦態勢に移行する。
かがり火が増え、歩兵や弓兵が森に向かって並び、戦象やデカサイ、騎兵は準備を開始する。今回は準備万端整っており今までの雪辱を果たすつもりであった。
見張りについた兵は本陣に向かって走っていく。しばらくすると森の端に複数の兵士が見えてきた。森の奥までは見えないが少なく見積もっても千は居ると思われる。互いに矢が届く距離ではない。敵は森から出てきて陣形を整え始めた。
五か国連合軍は丘の上に布陣しているため弓で攻撃した場合圧倒的に有利になる。現在の場所からは移動せず相手が近づいてくるのを待つ。陣形を整えようがこちら側が有利であり、森から離れて布陣することで、丸太を使った馬防柵のようなものが無いことを確認してから突撃させれば、大ダメージを負わせることが出来る見積もりであった。また、森から遠くなれば森の中に逃げることも難しくなるため、少しでも前進してしてほしかった。
森から出てきた兵の動きが止まった、陣形が完成したのだろう、その数およそ三千、五か国連合軍は九万八千で戦力差は三十三倍である。
「相手少なくないか?」
「ああ、どう考えてもおかしい。森の中に伏兵がまだいるのかも知れない」
夜目が効く兵士は相手の数を見て訝しむ。通常野戦で兵士の質が同じであれば、戦力差が三倍あるなら間違いなく完勝出来るはずだ。
自身の三十倍の敵を前に正面からぶつかるなど自殺行為である。今までおかしなことが起こり続けていたので、また何か起きるのではないかと不安が募ってきている。
「こちらは数的に有利だ! 高台に布陣し矢の届く距離もこちらが有利!」
「敵が迫ってくれば、矢で攻撃すれば良い! 相手が死にに来るのを待つだけだ! 無理に近づく必要はないぞ!」
「声を上げろ! 勝利は間違いないぞ!」
「「「「「おおおお!」」」」
指揮官達は士気をあげるため優位な状況を説明し声を出すことで不安を軽減させる。森の中に更なる伏兵がいるかも知れないため、こちらからは接近させず相手の出方を待っていた。圧倒的な有利な状況であるため、あえて危険を冒す必要は無かった。
「相手の数、とんでもないぞ。こんなの勝てるわけがない」
「もうだめだ、死ぬ」
ニバンとイーチバンの混合軍は大軍が出す大声で戦意が下がり、逃げ出してもおかしくない状況であった。
「大丈夫! 絶対勝てるよ! 即死しなかったら絶対助けるから! ポーションも遠慮なく使ってね!」
「おお! アリス様!」「アリス様万歳!」「そうだ勝てるぞ!」「俺達には奇跡がある!」
「声を出せ! こちらも負けてないぞ!」
「「「「おおおおお」」」」
アリスが兵士を鼓舞し数は少ないながらも負けずと大声を張り上げる。お互いに十分くらい声を出し続ける。互いに戦意は高まり声を出す必要性は無くなった。
「百m前進! 堂々とゆっくり進め!」
アリスの掛け声で隊列を維持したままゆっくりと前に進む。相手の弓の射程までは、まだ十分に余裕がある。
「敵が前進してきます! 森の中からの追加の兵は見当たりません!」
「相手の装備は弓です! 一部盾も見えます」
「丸太など騎兵を妨げる物は見当たりません」
伝令からの報告を確認し五か国連合軍の首脳陣は、有利な状況であることを確信していた。
「敵との距離およそ七百m、止まりました!」
「矢はほぼ届かないな、後四百m近づいてくれれば一方的に攻撃出来るのだが」
「騎兵を突撃させるか?」
「デカサイ、戦象を先頭で突撃させるとして、敵の横から突くとなれば少し大回りで…約二分から三分か。敵が接近に気が付くのに十秒、どうするかを判断するのに五秒、敵が逃げるのに一分半。ちょい足りないな」
「ゆっくりと移動させて、百m程近づければ逃げるよりも早く到達出来るのでは?」
「近づいたら警戒されて逃げられるかも知れない」
「では全体的に動きを見せたら、気が付かれないかも」
方針が定まり、五か国連合軍の陣形に変化が訪れる。丘を少し下り、歩兵の前にある柵を数十m前に出す。全体的に兵が動くため、少し騎兵が移動を開始しても違和感を与えなかった。騎兵の動きを悟られないために弓兵が矢を射るような姿勢を取るなどして視線をそちらに誘導した。
「騎兵突撃!」
大声出して相手がビビッて逃げ出してたら一番楽だから、声だしは基本中の基本らしい。
この世界はそういう世界観だから。




