03-12 王都周辺
ケン達は王都が見える場所まで到着した。秘密保持のために途中見かけた各国の略奪集団や偵察部隊は殲滅し、誰一人として生かして返さなかった。五か国とも略奪や偵察に向かわせた隊が返ってこないことがおかしいと思いつつも、積極的に他の国に伝えることはしなかった。
各国は王都の南東に向かった隊が戻ってこないので、南東にニバン軍が居る、あるいはどこかの国が裏切っている可能性を疑っていた。しかし奇妙なのは争った形跡があるが、死体や遺留品などが一切見つからなかった。魔物や動物に食べられたとしたら防具くらいは残りそうなものだが、それも見つかっていない。
それぞれの国は偵察を出すものの大軍がいる痕跡は見当たらなかった。倒された兵の数、目撃者(逃げた者)が一人もいない状況から、少なく見積もっても数百の兵士が居ないと一方的に倒されることなど無いと考えていた。
不可解なのは、血痕や水溜まり、細かな石が争ったと思われる場所に残っている事があった。どのような関係性があるのかは分からないが、ただただ気持ちが悪い、薄気味悪いと感じていた。
そんな中、オオキナウエーノの偵察隊が前方から向かって来る騎兵を見つけた。しかし、その騎兵はこちらに気が付くと反転して元の道を戻っていった。
「今の見たか? どこの国だった?」
「うーん、多分ライトだなありゃ」
「確かに。おい念のため警戒しとけ」
偵察部隊のキツツキ系獣人とハヤブサ系獣人が相手を分析した後、警戒しながら前に進む。三十分ほど歩いたところで何かが倒れているのが見えた。
「前方に倒れている者あり! 周囲警戒」
「警戒しろ! 上から確認する」
偵察部隊のキツツキ系獣人とハヤブサ系獣人が上空から周囲を見渡す。街道には特に人影は見えず、森の中は木が邪魔で視界が通らなかった。
「上空異常なし」
キツツキ系獣人は先に地面に降りて地上の仲間に状況を伝える。警戒しながら倒れている者に近づいていく。近づくことで、だんだんとそれがオオキナウエーノ、自軍の兵士であることが分かった。
「おい、ありゃ味方だ! 周囲をよく見ろ! 俺が先行する。他は待機!」
キツツキ系獣人が小走りで倒れている者に近づいた。そして持っていた剣で倒れている者の背中を叩いた。特に反応は無く、生きている感じはしない。死体や周囲の地面が水浸しになっているのは非常に薄気味悪かった。落ちている槍を拾って石突の部分で死体を突いていく、倒れている者は全て死んでいた。また多くの死体は突くまでもなく、首や顔が切断されていた。
刺さっている矢や地面に刺さっている矢を回収して観察していると、上からハヤブサ系獣人が降りてきて、回収している者たちに話しかけた。
「何か分かったか?」
「うーん、これを見てくれ。鏃が細長い、これは貫通力特化の矢だ。うち等の物とは形が若干異なる。どこの国のかは断言出来ないが…一旦戻ろう、首だけ回収してもどろうか」
「でも、こいつら何でこんなに水浸しなんだ。死後数時間、いや十数時間以上経っているか? 何日も経過した感じじゃないな。顔が半分に切れてるやつは放置で良いだろ。首が取れてるのは持ち帰りやすくていいけどさ」
「うわ冷たい! なんだこの死体冷たいぞ! 尋常じゃない!!」
「とにかく手掛かりを得たんだ。これを回収して直ぐに戻るぞ」
オオキナウエーノは、初めて怪しい事象の痕跡をつかんだ。そして王都に戻り首を確認した結果、略奪に向かわせた部隊と判明した。そして矢はライトが使うものに特徴が酷似していることから、五か国連合の会議の場でライト側が糾弾された。
「そんな事は知らん! 言いがかりだ! 我らの兵も帰って来ない部隊も有る! それこそお前らが襲ったのではないのか?」
「ちょっと待ってくれ。我らの兵も戻ってこない者がいる。それもライト国がやったのでないのか」
「こちらも同じだ、戻ってこない隊がいる…」
当初ライト国を糾弾したが、すべての国で王都から南東方向に出撃した兵が戻ってこない事が判明し、明らかに何かがおかしいと五か国が共通認識を持った。
またこれが同盟の絆を崩すための策略だとライト国が激しく主張した。まだ完全にニバンを手中に収めた訳ではなく、現時点で仲たがいするのは好ましくないため、一旦各国はライトへの糾弾は取り下げることになった。
しかし、各国とも完全には信じる事は出来ず、そろそろ裏切って利益を最大化させたいと考えていた。特にライトとレフートは連携取るとしたら互いに兵が揃っているこのタイミングしかないため、いいチャンスが来たら一気に裏切ろうと考えていた。
ライトとレフートは無傷なニバンの兵五万を手に入れたいため、現時点でニバンとは終戦として支配地域を確定させたかった。オオキナウエーノも一旦利益を確定させたかったこと、イーチバンを手に入れれば十分利益が出ることから、早く決着させてイーチバンへの侵攻を実施したかった。
ウエライトとヒダリオークは、オオキナウエーノの交渉によって現在の状態での終戦に合意した。裏ではレフートが兵を手中に収める前にライトとレフートを始末する魂胆であった。
ニバン国王妃は二週間に渡る交渉で、精魂尽き果てていた。援軍の見込みも立たず、物資集積所や砦の守備兵をかき集めるにしても、それを効率的にかつ確実に実施する方法が無い。これ以上戦って無意味な死を増やすべきでは無いと説得され、更に王都の住民の命を奪うと脅されて、実際に数人のメイドの首を刎ねて見せた結果、全面降伏を認めた。
王妃は王都の住民を集めて敗北した旨及び今後はレフート、オオキナウエーノ、ウエライト、ライトの国に分割支配される旨を伝えた。各地に御触れを出し、また主だった砦や物資集積所に投降するよう指示書を発行した。
鳥系獣人は空が飛べます。すげえ! ただ普通の鳥のようにずっとは飛べないようです。
個体差、種族差はあるものの数分~数時間かな。もっと飛べる種族もいるかも。
まあ人の形に進化したため、飛ぶための体形が最適では無くなったんだろうな。




