03-10 王都陥落
戦場から逃げ出した者が王都に戻ったことにより、決戦に敗れた事は直ぐに王都内に広まった。住民の不安が募るなか、守備兵が不足に伴い一番外側の壁と二番目の壁の間にいる住民はすべて避難するように告知が出た。
一部の住民は街から逃げ出し、残った住民はほぼ諦めているか、徹底抗戦するかの二択に分かれた。そして退避が完了する前に五か国連合軍が王都の周辺に到達した。守備側の矢の射程ギリギリのところに複数の攻城兵器を設置し、互いに遠距離攻撃を行う。矢は殆どが効果を与えることが出来ず、攻城兵器から放たれる石は着実に壁や門にダメージを与えていた。
数日に渡る投石攻撃により門が破壊され、守備兵は二番目の壁まで撤退。まだ二番目の壁側に避難せずに自宅に隠れ残っていた住民は捕らえられ、最前線に立たされる。味方に攻撃することを躊躇った事、遮蔽物が多く有効な攻撃を加えられない事により、二番目の壁の門も短期間で破壊されてしまった。
住民の多くは逃げ場がなくなり、降伏して支配を受け入れた。国民を見殺しにして統治者だけが生き残っても意味が無く、また援軍が見込めない事から、王城に籠城して徹底抗戦するのは諦め、住民の命を保証することを条件に降伏することを決めた。
王妃や首脳陣は捕らえられた。国の支配権全てを差し出すように迫られていたが王妃は拒否している。
五か国連合の取り決めでは支配権を得た時点の状態で、ニバン国の街、村、砦にいる兵や住民、資産は占領後の支配する国が得ることになっていた。今回ヒーダリの砦には無傷の五万の兵がおり、それがすべてレフートに渡ってしまうのは他の四カ国は避けたかった。
また多くの国民がイーチバン方面に逃げており、このまま戦争が終わってしまうとオオキナウエーノの利益が多くなるため、報酬の再分配の協議が五か国間で行われている。その間にも自分たちの支配地域以外の場所を略奪したり、住民をさらうなどの行為がエスカレートしていた。
王都南東の街アーダチはウエライトの支配地域になる予定だった。しかしライト国の兵により略奪や強姦、奴隷狩りが行われていた。ある程度略奪したところで、今度は別のライト兵とニバン兵の集団が南側の門から到着した。
「くそっ、さっきのとは別の兵士達だ」
「これ以上何を差し出せというのだ…」
住民は絶望していた。誰もが諦め家の中に隠れた。それでも街の代表者の男性は交渉のためにそのライト兵に近づいて話しかける。
「ようこそいらっしゃいました。私がこの街の長ヤマノテです。申し訳ございませんが、先ほど別の兵士の方にお金や食料、人員を提供したため、もうお渡しできるものが無いのです」
「悪い、こんな格好だからライト国の兵士に見えるかも知れないが、実は味方だ。敵を欺くためにこの格好をしている。そちらのニバン兵は本物のオーモリ守備隊だ。これから王都に向かう。この後援軍も来る予定だ」
ケンは正直に自分達の身分を伝えた。ケン達は王女の護衛はお断りし、シュビッツ達と王都に向けて急いで進んでいた。
「なんと! しかし、既に王都は陥落したようです。なので王都に行っても…」
「まあそれはそれ。何事も諦めて始めなければそこで終わりだ。敵が仮に十万居たら十万倒せばいいだけの話。とりあえず、略奪された物資の話をしよう。そいつらはどっちに向かった?」
ケン達は話を聞いて敵が去った方向に向かうことにした。その前に食料を少し分け与えた。その分略奪された物資を取り戻したらそこから補填する腹積もりである。
ライト兵は馬車や荷車に荷物を一杯にして運んでいたため、進軍速度は遅く直ぐに追い付くことが出来た。騎兵が十六、歩兵が百弱、荷馬車が二、人が引く荷車が三、縄で手を繋がれたニバンの住民が二十人。
「ケン、どうする?」
「うーん。まずは捕らえられた人を救出を優先。魔法で壁を作ってとりあえず安全を確保。アリスは閃光で相手の目をつぶして。そしたら魔法と連弩で倒しちゃおう。シュビッツ達は後から来て」
アリスの問いにケンは作戦を伝える。ケンとソララ、アリスとリルが二人乗りで敵の部隊に接近する。ライト兵も気が付いたが、味方だし、百人を超える集団に四人で襲ってくると思わず、特に気にせず前に進んでいた。
ケンとソララは先行して、最後尾にいた二人の兵の横を通り過ぎ、縄で繋がれた住民の横も通り過ぎ、その先にいる十数人の兵士集団に追い付いたところで、ソララは馬から降りる。アリスとリルは最後尾の兵士の横についてゆっくりと馬を進め、リルも馬から降りた。
「お前等あまり見ない種族だな。どこの出身だ? おっ女か、どうだい一発やらないか?」
最後尾の兵士はリルに話しかけ、隣の兵士からは笑い声が漏れる。リルは話しかけた男に向かって歩き出す。男はにやけた顔で近づいてくるリルを見ていたが、リルは素早く剣を振るうと男の首がぼとりと落ちた。それに合わせるようにアリスも馬上から槍でもう一人の兵士の首で突いた。
ほぼ同じタイミングでケンもライト兵に話しかけられていた。
「お前等どこの所属だ? 見かけない顔だが。そっちは虎族か心強いな」
「うん? ああ、ちょっと待ってくれ」
高さが三mくらいの石壁が急に出現した。そしてライト兵とニバン住民の間を遮る。ソララも態とらしく驚く演技をしていた。その間にケンは住民達を石壁の中に閉じ込めた。ケンが以心伝心で後方の二人とタイミングを合わせることで一瞬にして住民を保護することに成功した。
何事も諦めて始めなければそこで終わり。
敵が〇〇人いたら〇〇人倒せば良いだけのこと。
初代国王の伝記やお芝居でも使われているセリフ。
本当に言ったかは不明だが、逆境でも諦めない気持ちを表現している。
それをパクったらしい。




