03-05 決戦
ミギーナには国連合軍の各国から五百程の兵が駐留した。一か国の兵を集中して駐留した方が指揮命令系統の問題は生じにくいが、各国共に全面的には信じ切っておらず重要な都市にはこのような形で各国の兵隊が同数駐留していた。
王都に向けて進軍した五か国連合軍は十三万。連戦連勝で兵士の数は減っておらず、職業軍人の数では連合国の方が多い。各国の特色は、強力な突進力を持つヒダリオークのデカサイ騎兵隊とライトの戦象隊、ウエライトの重装歩兵隊、レフートは柔軟な機動力を持つ騎兵隊と運用出来る場面は限定されるが平野であれば強力な攻撃を持つチャリオット(馬で引く戦車のようなもの)、オオキナウエーノは普通に騎兵、歩兵、弓兵から成り立つが全員が職業軍人であり個々の戦闘力、部隊としての統率力が高い。
一方ニバン王国側二十万、数こそ多いが既に傭兵や志願兵の多くが戦で倒されており、徴兵で無理やり連れてきた平民が多くを占める。武器や防具もまばらであり、一当たりして戦意をくじけば瓦解すると五か国連合軍は考えていた。
同じことはニバン王国側でも危惧されており、王と第一王子がそれぞれの部隊を率いて戦意を鼓舞していた。負けたら奴隷にされるぞ、妻や娘が犯され、財産は没収され、生き残っても重税が待っている、今こそ戦う時だと繰り返し説明した。そんなこともあり、どうにか逃亡兵もほぼ出さず維持が出来ていた。
ニバン王国軍は王都の北にある平原の手前にある高台に部隊を配置した。五か国連合軍は平原の反対側の端に見え、お互いの距離は約三キロほどである。高台を直接攻めることは出来ず、左右のどちらかに廻って緩やかな坂道を登る必要がある。
高台に設置された天幕の中では、王や重鎮を含めたメンバーで決戦に向けた最終準備をしていた。数だけは多いが、正規兵の割合が少なく細かな運用が出来ない状況なので、まとまって前進などの簡単な命令を出すしかないと割り切ることにしていた。
「報告します! 敵はこちら(南)には向かわず、東に移動を開始しました」
天幕に入ってきた伝令が状況を伝える。
「高台に正面から向かうのは愚策ですから、左右のどちらかに移動して緩やかな坂を上ってくるのは想定の範囲です。左右に分かれて挟撃される心配は無さそうので、精鋭を東に配置します」
軍議に参加している将の一人が意見を述べた。王はそれに対して承諾する旨を告げ、部隊の再配置が開始された。
「報告します! 敵はさらに東に向かい、こちら側にくる気配がありません。戦場を離脱しつつあります」
「なんだと!」
伝令が告げた内容から、将の一人が声を上げて乗り出すように机の上の地図を覗き込む。
「この方向はスモールマウント(地域の名前)? あるいはツムグ(地域の名前)に向かうのか? 王都は無視か」
「後を追いましょう」
「無理だ! 二十万の兵で追いかけても間に合わん、こっちは市民が多く行軍になれておらん。そしてそこまで連れていけるほどの兵站は無い」
「精鋭だけで向かうべきでは」
「それだと数が少ない。スモールマウントやツムグまでは平原や農地が多い、戦象やデカサイが出てきたら、成すすべもなく壊滅する可能性が高い。数は多くないがそれでも危険すぎる」
「(攻撃された先が)籠城すればしばらくは持つはず。兵站を整えた後、再度出兵しましょう」
「高台を放棄し、平原に陣を張ればこちらに向かってくる可能性があるのではないか?」
短い時間だが議論が活発に行われた。最終的に高台の陣を放棄し相手と同じ平原に陣を敷き直すことにした。それでもこちらに向かってこない場合は、再度補給計画を練り直した上で出陣することになる。
高台の陣を払い平原に陣を敷き直そうとしたところで、五か国連合の進軍が止まった。こちらが高台から降りてくるのを待っているのか、あちこちで煙があがり食事休憩をした後、ゆったりと寝転んで休憩をしている姿があちこちで見える。
二時間ほど掛けて、高台から平原に兵を移動したところで、五か国連合軍がニバン王国軍に向かって進軍を開始した。まだ部隊の配置が終わっておらず、乱雑に兵が並んでいるような状況で、編成を少しでも整えるために移動は継続している。高台では馬防柵を用意していたが、布陣し直したことで準備が間にあっておらず、柵の数はかなり少なくなってしまった。
ニバン王国側は良く言えば厚みのある横隊だが、まだ配置が完了していない部隊もあった。左右と中央に精鋭を配置し、騎兵は左右の端に配置した。
五か国連合は全体で統一した陣形にはなっておらず、各国の部隊がそれぞれの国毎に陣形を形成していた。西から東に向かってヒダリオーク、レフート、オオキナウエーノ、ウエライト、ライトの順となっている。
五か国連合軍はこの戦いに負けるとは思っておらず、ニバン王国が滅んだ後のことを考え始めていた。自軍の兵士は減らさず他国の兵士は減らしたい、各国とも同様の考えを持っていた。
五か国連合の合意条件は次のようになっている。ヒダリオークはレフートとオオキナウエーノの領土を一部割譲と奴隷五万人及び今後三年間、各国から年間金十kgを払う事、既に前金で各国から合計金二十kgを入手していた。
レフートとオオキナウエーノ、ウエライト、ライトは四か国でニバン王国を縦に分割する。レフートとライトとウエライトが三割ずつ占領し、オオキナウエーノは王都を含む残りの一割を占領、その代わりにイーチバン共和国の領土は全てオオキナウエーノが占領することになっていた。
しかしながら、ヒダリオークとオオキナウエーノとウエライトは秘密裏に同盟を組んでおり、イーチバンを滅ぼした後、レフートとライトの二国を滅ぼす予定であった。旧レフートの領土は全てヒダリオークが獲得し、またニバン領土の一割も得ることになっていた。その代わりオオキナウエーノからの領土割譲は無しとなる。
ウエライトはライトの領地とニバンの領土の半分を、オキナウエーノはニバン王国の四割とイーチバンの領土を得る約束をしていた。
そのような秘密の同盟が結ばれているとはレフートとライトは知らなかった。同様の考えを持ってはいたが出遅れており、先の三か国とは同盟が結べなかった。結果的に組む先がなく二か国で同盟を組むことになった。ただ距離が離れすぎているため、攻め込まれた際に援軍を送ることも出来ず、情報共有も難しい等の問題がある。
ニバン王国との戦争終了後になると連携を取るのが難しいため、勝利が確定した直後に他の三か国を攻撃する気であった。
戦争に関する話だけど、兵士が十三万人いたとして、全員が戦闘要員じゃないよ。
ざっくり一万弱が補給部隊だと思って。書いてないけど途中前線と拠点を結ぶ経路にも数千の補給部隊がいると思う。
高台に兵が配置されていると高いところから一方的に矢で攻撃してくるので、
相手が高台から降りてくるのを待ってから戦闘を開始した。
高台に残っている状態で攻めたら不利だから。




