03-04 ポーション作り
「珪砂」
ケンが魔法を唱えると大量の砂が工房に山積みとなった。リルは炉を使い一旦ガラスに加工した後、ガラス瓶にする。
「水差し、水」
ケンは水差しを複数作成しそれに魔法水を満たした。ケンとソララは治癒ポーションを作成していく。しかしガラス瓶がボトルネックとなって効率が上がらない。ガラスは複数の炉で一度に大量に作れるが瓶にする際に時間が掛かってしまう。一旦、ケンとアリスもガラス瓶作成を手伝うが形がいびつで、容器として保管や安定性に難があった。
「もうちょっと何とかならないの?」
アリスは自分が作った少し歪な容器を眺めて、思わず口から愚痴がこぼれる。
「師匠、土魔法で石の容器を作るようにガラスで容器つくれないのですか?」
「うーん、今は無理かな。最近珪砂が作成出来るようになったけど。試してみたけど最初からガラスの状態で何かを作れないな」
「リル、ガラス以外、例えば鉄や銅で容器を作る場合はどうやって作るのですか?」
「銅板を筒形に加工して底を溶接でつける。鋳型に流し込んで真ん中は中子というものを使って固まってから中子を取り除くかな。でもガラスだと難しいな。どの辺が難しいかって? うーんガラスだと真ん中の部分をへこませた状態で繋ぎ合わせるのが難しい。
今やっている吹きガラス式の方法だと、外側に型があってもそんなに強く内側からガラスを膨らませないから型を作ってもねえ」
ソララの質問にリルは難しいと答える。
「ん? 強い力が内側から? 送る空気の量を強くしたら? 型にガラスを入れて、そこから強く空気を入れられれば」
ケンは思いついたことを確認するために石の型を作った。熱せられたガラスが付いてる鉄の棒を石の型で挟み込む。鉄の棒は中が空洞になっており、普通はそこから吐いた息で空気を送り込んで膨らませるが、人の肺活量では内側から型に綺麗に張り付けられる程の空気は送れない。
ケンは空気を送り込む側にふいごを取りつけて空気を無理やり送り込んだ。型から外して鉄の棒を縦にしてしばらく冷ましてみる。
「普通に作るより、こっちの方が良くない? ちょっと容器の厚みがデコボコだけど。形としては悪くなさそう」
とりあえず作ってみた割には結構良い感じの容器となった。
「師匠流石です」
ソララはケンを尊敬する気持ちは常に高いが、より一層高まった。ケンは何度か確認した後、不良品が少なそうなので、簡易ゴーレムを複数作成して仕事を割り当てる。
リルとアリスがガラス瓶の素となる溶けたガラスを鉄の棒に適量括り付ける。ガラス瓶の素を受け取ったら型に入れてふいごで空気を送り込むゴーレム、瓶を縦にして焼なまし炉に入れて冷ますためのゴーレム、さらにガラス瓶を切り離して並べるゴーレム、それぞれがベルトコンベアーのようなもので自動で次工程に繋がっている。流れ作業が確立されてガラス瓶の確保にめどがたった。
ガラス瓶は中級のポーションに利用し、低級のポーションは陶器の壺に入れた。陶器の方が劣化が進むが、直ぐに利用されるだろうからそれほど問題にならないはずである。
「調子はどうだね? …なんじゃそりゃ!! 人形が動いてる! 物が勝手に動いてるぞ!」
進捗を確認きたニーヨンロクがゴーレムを見て驚いた。
「ああ。これはゴーレムといって命令した動きに従って動く人形のようなものだ。ガラス瓶の容器作るのに結構時間が掛かってしまったので、効率化のために作りました」
「いや作ったって…」
はぁそうですか等と割り切れないニーヨンロクではあったが、ケンなら何でもありなのかもと思い始めてきていた。
「ああそうだ、ポーションと手紙を早馬で王城に送った、十日程度で到着すると思う。返事は二十二、三日後になる見込みだ。本日作成した分は明日王都へ出立予定の増援部隊に持たせる。それと追加の薬草を入り口に積んでおいた」
「ありがとうございます。ガラス瓶が間に合わないので、低級ポーションはこちらの容器に入れてある。劣化するので早めに使って。あと空き瓶は後で活用するので、出来るだけ回収をして下さい」
ケンはそういって、五十本の中級ポーションと三十壺の低級ポーションを指し示した。
「ええー!? これほどの量を作ったの? 一日で? 凄い、想像以上だ」
「低級ポーションを入れる壺が無くなったので、陶器なら何でもいいので追加で用意して下さい」
「おお分かった! すぐに手配して明日の朝一番に届けることを約束しよう。おい、ポーションの回収と容器の手配をしろ」
ニーヨンロクは部下に指示を出す。
「ところで剣や槍などの武器があるのだが、いくつか買わないか?」
「おお! それは助かる。今は人は多いが武器は少なくてな。幾らでも買うぞ。ただ後払いにして貰えると助かる」
「わかった。じゃあここに出すぞ」
ケンは空間収納から剣を百本、槍の穂(槍の先端刀身部分)を千個ほど出した。
「…」
ニーヨンロクはこれほどの大量の武器が出ると思わず、絶句してしまった。
「全部で大金貨一枚で良いよ」
「助かる…いや、どっから出したの!? んっこれ鉄なのか?」
ニーヨンロクは剣を一本手に取り、いろいろな角度で眺めている。
「これはミスリルというもので、鉄と同じ位の強度がある。もっと手間を掛ければ鉄以上に強くなるけど、数を作ることを優先したから。あと槍の柄の部分は用意してください。おまけで木を付けとくよ」
ケンはそういって、五十mを超える大木を二本地面にドシンと出した。
「何が何だか…、まあー助かった」
ニーヨンロクは再度をお礼を告げた後に自身の仕事をするため執務室に戻っていった。
豪華な夕飯が用意されておりそれを皆で食べる。ピイーナが口いっぱいに頬張り両手には別々の食べ物を持っている、ケンは少しあきれながらピイーナの頭をやさしく撫でた。言葉が通じるようになったので移動中はピイーナの仕事は殆どない、マスコットキャラのような癒しの存在になっている。
食後はケンとソララがガラス瓶を作成する。ガラス瓶作成には熱が伴うので、一日中作成していたリルとアリスは疲労困憊である。工房の中に大きな水風呂を用意してあり、今はそれに浸かっている。作業中も時折水浴びをしていたが部屋の温度が高いので非常につらい作業であった。リルは水温を低くし、水差しを冷たい水で満たしてそれをアリスのコップに注ぐ。
「あついぃー。ソララは無理しちゃだめだよ、毛皮があってより一層暑いんだから」
「無理するな、汗びっしょりじゃないか。無理せず水風呂に入った方が良い。それで最後にしなさい」
アリスとケンは汗をびっしょりかいているソララを気遣って声を掛け、作業を切り上げるように指示を出した。
「承知しました師匠。ふぅ」
ソララはその場で服を脱ぎ、リルはソララのために浴槽から出てソララに譲った。
「ああーー生き返る」
ソララは溶けたアイスのようにだらーとだらしない顔つきになっていた。リルは裸のままソララに冷たい水をコップに注いで渡し、バスケットボールサイズの氷を浴槽に入れた。リルは服を着るよりもソララに水を上げることを優先していた。ケンはガラス瓶作成をしながら、横目で水風呂の方ちらちらと見ていた。
石や土といっても色んな材質がある。
ガラス作りに適している材質の砂も、熟練度みたいな物?に応じて出来るようになる。
理論的には鉄や、ミスリル、金、他の希少な金属もその延長線上にあるが、
希少なものは簡単には出来ない。
簡単に大量に出来たら相場がめちゃくちゃになりそうだから、そういう世界観になった。
でもある程度は出来るようになると思う、珪砂はその一例。
ガラスにはプレスブロー成形というものがあるそうです。
今回は容器として用途を満たせばいいので、瓶の厚さが多少厚い薄い部分があっても
気にしないので、それで良しとしました。
自動化は難しいと思うけど、まあケン達が成功しないとこの話成り立たないから。
物語を円滑に進めるためのご都合主義みたいな…。




