02-36 商売12
「「「「「うまい!」」」」」
スパイスを多用したスープは味が濃く、豆やジャガイモに良くあった。イノシシ肉は少し薄めにしてフライパンで焼き、ナンと一緒に別の更に置かれている。皆お腹いっぱいになってもあるだけ全部食べてしまった。
「今日はたまたまイノシシ肉が入ったから出したけど、普段は豆とジャガイモとナンが多いから」
ケンはそう補足するが、週に二、三度は何らかの肉を食べている。結構狩りで入手することが可能であった。
四人部屋と二人部屋を用意していたので、サラとマルレとシュンレイが同室となり、ガイとダル、エド、ザンギが同室で過ごすことになった。
翌日五人は作業の説明を逐次受けながら、宿泊部屋の清掃や洗濯、調理などを覚えていく。しばらくは指導者の元で作業を行うことになるが特に問題なく作業は行えていた。またお金の計算や文字や数字の教育が受けれることに感謝していた。
一週間が経過した夕方ケンは五人に給与を支払った。その夜ケンはガイから相談を受けた。
「なあ、スラムの小さな子をここに住まわせてもらえないか。その分俺たちの給与を減らしてくれ。それに何かしら手伝わせるし、絶対にケンが損にならないようにするから。住む場所だって何とか作るし、俺らが外で寝たって良いからさ」
ガイはスラム街の親の居ない小さな子供たちのことを心配していた。スラムを離れる時に面倒見の良い人にお金を預けて子供たちを気にかけるようにお願いをしていた。一ヵ月経過したら、誰かが代表で追加のお金を渡しに行くつもりだった。親のいない子供達がスラムでちゃんと過ごせているか心配であった。
ここが安全であり、快適で、ちゃんと給料も支払われたことから、あんな場所よりも野宿でも良いから、ここに連れてきたかった。
「ちょっと考えさせてくれ」
ケンは即答は避けた。ケンはアリス、リル、ソララに相談する。
「これは孤児院の運営のようなものになる。俺の夢は孤児院の運営だ。十人、二十人位、いやもっと食わせる位のお金は十分にある。あるが稼ぎはみんなの稼ぎでもある。それにずっと好調とも限らない。皆の意見を聞きたい」
「賛成だよ。私も孤児院でお世話になったし、子供がサラやマルレのように酷い環境にいるなら助けたい」
「ケンに任せる。ただ鍛冶を再開したいから鍛冶場を作ってほしいかな。そのお金は残してほしい」
「師匠。良いことだと思います。私もポーション作りを再開したいので、出来ればガラス瓶の用意と宿屋の仕事の頻度を減らして貰えると助かります…人が増えるなら…」
皆賛成だったので五人も集めて具体的な方針を検討することにした。住む場所だが従業員用の部屋が空いているのでそれを活用する。保護したい子供の数は三十人と結構多かったので、小さな子供は一つのベットに二人で寝ることになる。
また五人の給料は日給大銅貨三枚で雇っていたが大銅貨二枚に減額した。子供たちは基本無給で仕事を手伝ってもらうが成果があるようなら大銅貨一枚を支払う。その後大人と同じくらい働けるようになったら大銅貨二枚まで値を上げる。お金が稼げない小さな子供が五人以下になったら、ガイ達の給料を元の金額に戻すことにした。
ケンが必要経費を全て出すことも可能だが、全てを与えてしまうと自立心が芽生えなくなったり、自分の懐が痛まないと出費に無頓着になってしまう可能性があるからだ。ケンは身内に迷惑を掛けないように努力することを期待している。
食料の消費が多くなるので買い付け頻度を増やす必要がある。ケンが行けば大量に買うことは出来るが、ケンに仕事が集中してしまうので他の人で出来ることは他の人にさせることも方針となった。
この辺では野生動物やオークやゴブリンなどと度々遭遇するので、小さい子供が増えると被害にあうかもしれない。自衛出来る環境を整えたかった。幸いにもダル、シュンレイ、ザンギは力が強い獣人であるため、アリスから戦闘訓練を受けることになった。
また森が近すぎると視界が通らないため、危険に気づきにくくなる。農地を増やして自給率をあげつつ、安全を確保することにした。
ガイ達は自室に戻った後、小さな子供達を受け入れてくれることに安堵しケン達に感謝した。
「明日から忙しくなるな、子供たちは受け入れて貰えたけど開拓はどれくらい掛かるんだろう。でもダルとザンギとシュンレイもいるし斧を貸してもらえば何とかなるか。一時間に一本、三人で三本くらい行けるか?」
「わからん。道具や木の固さにもよると思う」
ガイは力持ちの三人なら容易く木を切れるのではと期待したが、ザンギの回答は慎重であった。とはいえ、一旦三万平方メートル(一ヘクタール)の農地を作ると聞かされて、”一旦”ってそういう使い方するんだっけ? と疑問に思ったが、最終的にはそれくらいしたいという事なんだと思うことにした。
ガイは最近覚えた掛け算でどれくらいの期間かかるのかを計算をしようとするが、うまく出来なかった。そこでサラを呼んできて、計算出来るか聞いてみた。
「えーとやどを中心に畑を三つ。一つの畑をそれぞれ一人がやる。十m*十mあたりに木が四本だとしたら、一日四本きったら一日間、その百倍だから百日、切るだけなら百日とか? 木が倍あったら二百日とか?」
サラは計算能力が高くなっていて、自分なりに計算式を考えるようになっていた。
「サラありがと。そんなにか、大変だな。木の根っこを掘り起こすのにも時間が掛かるだろうし、その後畑を耕す必要もあるし厳しいな。一年以上かかるかも知れないな」
ガイ達は長期的な取り組みになるが、子供たちのために頑張ろうと決心した。
一万平方メートル、一ヘクタール、100m*100mだって。
野球場のフィールドがそれくらいだって、ネットに書いてあった。




