02-34 商売09
「こんにちわ」
「こんにひあ」
「こんにちわ」
「こんにちあ、こんにちわ」
ソララが先生になって、サラに言葉を教えている。ソララ以外はネイティブではないので、ソララが一番正しい発音が出来る。イーチバンとニバンは共通の言語で発音なども同じである。ニバンより先の国でも、隣接している国ならニバンの言語と似たり寄ったりであるが、更にその先になると違う言葉を使っている人が多くなってくる。例えば帝国と略称で呼ばれているデカーオ帝国は別の言語が主流である。
ソララとマルレが入って若干宿屋の負荷は下がってきた。ケンはもう少し人を雇って、魔道具作りや農作業、ポーション作りに力を入れたかった。作物が育つには時間が掛かるので、畑づくりは人が雇えなくてもそろそろ始めたかった。
サラとマルレとピイーナの三人にフロントで対応してもらい、ケン、アリス、リル、ソララは今後の方針について会話をしていた。
「サラとマルレは当たりだったけど、他の奴隷が当たりとは限らないしやっぱり高すぎる。人は増やしたいけど奴隷は厳しい。大人のホームレスの人を一日雇ったら、仕事内容によもよるが一日大銅貨三枚程度。大人の奴隷が仮に金貨七枚だとして、維持は除外しても六年と五か月以上無給で働かせないと元が取れない」
ケンは奴隷購入には慎重であった。
「確かに。あと子供と女性の比率が高いから雇うなら女性か子供が良いかな」
アリスは大人の男が入ってくることを気にかけていた。特にサラとマルレを守りたいと思っていた。ソララはパンチ一つで相手の命を奪いかねないし、リルもそこそこ力もあるし、魔法があるので対処は可能だと思っている。何かあれば丸焼きにしちゃうだろう。
リルやソララも奴隷ではなく、ホームレスを雇うことを賛成した。
「あとはどうやってまともなホームレスを探すかだな。労働条件も重要だけど」
ケン達は協議を重ね、住み込み、食事付き、日当子供大銅貨二枚、大人大銅貨三枚、最低一ヵ月勤務、
支払いは毎週に先週働いた分をまとめて支払う。勤務態度が良ければ継続契約、悪ければ途中でも解雇などの方針を決めた。食事と寝る場所が提供されて、他の日雇い業務の給与と同額なのはなかなかの好条件であった。デメリットとしては周囲に物を売っている店が無いこと。
「ケン、給与を与えても使う機会がないと意味が無いわ。一ヵ月勤務したらカマータに帰ってもらって良いとか。カマータに家族がいるかも知れないし。ただ復職するなら何日後に戻る予定なのかは申告して貰おう」
アリスの意見を募集要項に追加することにした。会議の場にサラも呼んでくる。スラムに詳しい有識者の意見も聞きたかった。サラからは物乞いしかしていないため、意見は特に出なかった。
「サラ、スラム街の知り合いに、ここで一緒に働いても問題になさそうな人はいる? あるいはこの人は嫌だという人は居る?」
「しんせつにしてくれた人、ガイ、ダル、エド、シュンレイ、ザンギ、とか? 嫌な人…」
サラは父親を思い出して表情が暗くなった。すぐにアリスがサラを優しく抱きかかえて慰めていた。
「サラはスラムに連れて行かない方が良いな。先ほどの人達の特徴や、どこに行けば会えそうか教えてくれるか?」
ケンはサラを気遣った。
「いっしょにいく。みつける」
サラは出来ることを手伝いたくて頑張る決意をした。ケン、アリス、サラは新しい従業員を雇うためにカマータのスラム街に向かうことになった。
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「サラ? サラじゃないか! 心配したぞ! 無事だったのか、ここ数か月どこに行っていたんだ? それは奴隷の腕輪…どうして」
サラ見つけて声を掛けてきたのはガイで鷲系獣人であった。
「ごめん」
「うぉっ! しゃべった! 話せるようになったのか? マルレは無事なのか? あと一緒にいるそいつらは誰だ?」
ガイは矢継ぎ早に質問を続けてくる。そしてサラに酷いことをしたんじゃないかとケン達を睨んできた。
「まって! ケンとアリスはおんじん。父にうられた。どれいしょうに」
サラは身の上に起きたことをガイに伝えた。奴隷になったけど、ケン達がマルレを含めて買ってくれて、食事も寝床も心配ない事、勉強を教えてくれている事、服や靴なども与えてもらい、水も大量に使わせてくれてお風呂にも入れていることなどを伝えた。
「そうか、ケン悪かった。心配だったんだサラやマルレの事が。あのくそ親父に酷い目に合わされていたから。あのくそ親父も同じ時期から見ていないぞ。
噂じゃベガを怒らせたらしい。ベガの手下どもが探していた。ただ、そのベガ達も街から出たみたいだ。久しぶりにホームレス摘発があったんだ。その関係で結構な人が街の外に逃げたぞ。ああ、心配すんなみんなは無事だから」
ガイが最近スラム街で起きていることを説明してくれた。スラム街の住人は税金を払わずに不法滞在しているので、基本的には街の中にいることは許可されていない。徹底的に取り締まると安い賃金で働かせている雇い主たちから文句を言われるので、適当に取り締まりをしている。
衛兵に捕らえられた後、犯罪者として有名な場合は鉱山で強制労働か奴隷として売られてしまう。税金未払い程度であれば、公共事業に従事して安い賃金で働きつつ税金を納めて(税引き後の金額を支払う)市民となるか、手に焼き印を押した後に街を追い出してしまう。焼き印があると街に入れなくなるので、街の外で自給自足するか、自ら奴隷になるか、犯罪者になるか、生きる手段は限られるらしい。
ベガはヤクザの親分のような存在で、何十人もの手下を使い、スラム街での場所代や用心棒代などを巻き上げていた。また弱者から色々な物を奪ったり、賭博で借金を作らせて払えなければ奴隷として売り払ったりと、酷いことをするので周囲からは恐れられていたし、嫌われていた。
ベガ以外にも複数のヤクザの集団がいる。敵対組織と街の有力者が結託した結果ベガ達の集団が街の衛兵に狙われたのではないかと噂になっていた。
一度スラム街に住んだとしても、その後人頭税を払えば、住人としてみとめられる。
そんなに高くないしね。払おうと思えばなんとか払える。
見せしめがあると若干改善されるし、治安が少し良くなる。
ただ外に出されたものは犯罪者になったりするから、うーん。




