02-33 商売07
ケン、アリス、リル、ソララは、新しく来たサラとマルレの扱いについて議論していた。
「衣食住、つまり服、三食、住む場所を与えることは全員合意でいいよね? じゃあ、給与と教育、仕事の内容について決めよう。まず給与から。俺の考えは給与無し、奴隷だからね」
「ケン、無しは無いよ。ある程度支払うべき」
アリスは反対しリルも支払うべきだと同意していた。
「師匠の言う通り。奴隷は物だと聞いてる。奴隷は所有者の物だから、物にお金は払わない」
ソララはケンに同意した。完ぺきではないが奴隷の意味を理解していた。
ケンは少し考えたと後に考えを補足する。
「サラとマルレが役立つか分からない。衣食住を提供するほどの価値のある人間か分からない。もちろん仕事を教えるし教育もしよう。そんな段階からお金を渡すのはダメだ。働くことは大変なんだ、簡単にお金が稼げると思ってはダメだ。衣食住を与えるのは大事だ。ただ与えるだけではダメなんだ。いつか二人が自立出来るように、自分たちの価値を高めてそれに見合うお金を稼げるようにしたい」
「ケンの言い分は分かったけど、それでも給与無は無いと思う。何かしら自分たちに必要な物だって買いたいだろうし」
アリスはまだ納得しきれていなかった。
「今後も奴隷を買うこともあるだろう。その奴隷が役に立たないかも知れない。それにも給与をしはらうのか? あるいは凄く役に立つ大人の奴隷だったとしよう。優秀な奴隷は高いだろう、仮に金貨十数枚で買って、さらに給与をしはらう? 衣食住も提供するのに? そしたら奴隷を買うだけ損じゃないか。それに奴隷ごとに待遇を変えていたら、奴隷のなかで不満を持つ者も出てくるんじゃないか」
その後も議論を重ね、最終的に待遇についての合意が行えた。サラとマルレには給与を支払わない事を伝える、休日は無し、最初の二か月間は仕事を覚える期間で給与は無し、その後働きに応じて裏で日当を貯蓄し、購入金額と衣食住にかかった金額を超えたら独り立ちするときに奴隷解放及び貯蓄分を渡す。
ただ厳密にすると計算が面倒になるので、二人一日大銅貨一枚で計算して一年大銅貨三百六十五枚(大銀貨三枚銀貨六枚大銅貨五枚)、五年で金貨二枚大銀貨一枚銀貨九枚溜まるので六年目からの収入は独り立ちするときに渡すということになった。
翌朝宿泊客の対応が終わった後、フロント対応をソララに任せて他全員で今後の対応について説明の場を設けた。
「サラ、マルレ、今日から二人には、この宿で働いてもらう良いね?」
サラとマルレは頷いた。
「二人は奴隷だから、毎日のご飯や寝る場所、服は俺が提供する。だけど働いてもお金は貰えない。わかる?」
再びサラとマルレは頷いた。
「仕事は沢山あるけど、まずはどんな事をしてるのか二人には見学してもらう。その中で出来そうなものから担当してもらうし、出来なくてもやりながら覚えてもらうから。
今日はどうしようか。アリスはサラとマルレを連れて一号棟。俺は二号棟、リルは洗濯のあと調理を担当して、それぞれ終わったら三、四号棟を手分けしてやろう」
アリスは台車を押しながらサラとマルレを連れて、一号棟安い客室の清掃やシーツ交換に向かった。
「まず部屋に着いたらここで靴を脱ぐ。この靴脱ぎやすくなっているのはそのためなの。靴を脱ぐのは部屋を汚さないようにするため。脱いだ靴は靴箱において。掃いた土や水で靴が汚れたり濡れちゃうから」
アリスは説明しながら自分が行動し、二人にも同じことをさせる。
「次にベットに来て、シーツが汚れていないか見る。これはそんなに汚れてないから交換しなくて良いや。そしたら匂いを嗅いでみる。臭かったらこの消臭液を吹きかける。じゃあ匂いを嗅いでみて」
サラとマルレは匂いを嗅いで、しかめっ面をした。匂いがきつかったのだろう。アリスは消臭液が入った霧吹きをベットに向かって使った。そしてしばらく経った後、再度二人に匂いをかがせるとびっくりした顔をする。
「匂いが消えたでしょ。しかも花の香りがしなかった? これはケンが作った臭いを消して、いい香りを付与するというものなの、凄いよね?」
サラとマルレは激しく頷いていた。
「この部屋は見た感じ大して汚くないから、そういう場合はこのほうきでゴミを集めて、塵取りで回収するの」
アリスは台車に取り付けてあったT字型のほうきを取り出して、部屋の中を何回か往復した。そして集めた埃を塵取りで回収して台車に積んであるゴミ箱に入れた。
「それと照明のチェックね。この照明はこのボタンを押すと光って、再度押すと消えるの。押してみて…」
作業の説明を行い、次の部屋からは実際に手を動かせて指導していく。サラは一通りの作業が出来たが、マルレはまだ小さくて箒の扱いが出来なかったし、必要な道具が入っている台車を押したり、そこから物を取り出すのも厳しかった。仕事を覚えても客室担当は厳しそうだった。
奴隷はそこそこ値段がするので、給与を払っていたら大赤字だよ。
ケン達も休みなく、毎日働いているんだから、休日なんてないよ。
イーチバンは休日がちゃんとあるよ。
ニバンは休日という考えはないよ。みんな毎日働いている。年末年始とお祭りで一部の人が休むくらい?
ケンの故郷の国では、休日という考えがあるよ、初代国王が制定したので。




